2009年(平成21年)4月1日号

No.427

銀座一丁目新聞

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花ある風景(342)

並木 徹

「男と女どちらが強い?」

 日本アイスランド協会の総会のイベントとして作家渡辺淳一さんの講演を聞いた(3月28日。東京・品川プリンスホテル)。演題は「男と女はどちらが強い?」であった。
 渡辺さんは80人の会員に質問した。「男が強い」に手を挙げた人は2名だけで他の人たちは「女が強い」に手を挙げた。渡辺さんも体力的には男が強いが性格的には圧倒的に女が強いという。まず具体的な実例を挙げる。北海道時代、病院で当直医をしていた時の話である。血だらけになった妊婦が救急車で運び込まれてきた。状況から見て帝王切開しかない。やったことがない。すると老練な看護婦さんが私の言う通りにしてくださいという。覚悟をきめて手術をした。輸血をしながらしたのだが妊婦は顔面蒼白で、意識がなかった。赤ん坊は無事に生まれた。夫には「奥さんはだめでしょう」とあらかじめ言った。人間は3分の1の血液が亡くなると死ぬといわれる。女性はすでに3分の1以上の血がなくなっている。ところが、何と女性は意識を取り戻した。後で先輩の医師に話しすると、「男は3分の1の血液が亡くなると確実に死ぬが女にはそれが適用されないのだ」といわれた。
 70歳台の老夫婦の話。ヨーロッパ旅行から帰国して奥さんがブリブリ怒っている。理由を聞くと、パリでのこと亭主と古城でも行こうと誘うと「おれはホテルの周りを散歩したい」という。夕食はレストランでフランス料理でも食べたいと誘うと「おれはラーメンを食べたい」という。話にならない。70歳も過ぎると男は弱くなっている。そこへ行くと女はますます強くなってゆく。私もこの奥さんのご亭主とほとんど同じである。万事に物臭になる。だから私は女房とは旅行に行かない。
 渡辺さんは奥さんとの朝の挨拶「おはよう」を勧める。私の先輩の後藤四郎さんもそういっていたが渡辺さんはさらにその上に「今日はきれいですね」を付けくわえろという。簡単にいう秘訣は「心を入れない」ことであると説く。気軽に言える「コツ」だそうだ。
 渡辺さんが今年2月に幻冬舎から出した「欲情の作法」がベストセラーになっている。それだけ女に「心を入れている」男性が多いということであろう。大正生まれの男は万事に「心を入れる」ことをしつけられた。いまさら「心を入れない」ことを説かれてもすぐにその癖が直るわけではない。最後に渡辺さんがいった。男性はあきらめてはいけない。今老人ホームでは三角関係が起きている。一人の男に二人の女の関係である。若い時とは違って今、老いて男はもてている。では老人ホームへ入るとするか・・・