2008年(平成20年)11月1日号

No.412

銀座一丁目新聞

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花ある風景(327)

並木 徹

ロンドンの友人夫妻が見た東京・日本人

 友人の広瀬秀雄君からメールが送られてきた(10月17日)。広瀬君の友達がロンドンに住む友人夫妻ブルーノさん(イタリア人)と妻の佳子さんをさる日、東京見物に連れ出した。その夫妻の「東京見物感想記」である。夫妻の話がとても面白い。佳子さんは高校卒業後フルブライト交換生でロンドンへ行きそのままロンドンで生活(大和ロンドンで勤務)・・・30年を超えた。立派なテラスも買った。定年まであと数年という。ご主人は60歳を超えて定年、近所の葡萄園などを手伝ったり…老後生活を送る。
 この日、先ず昼食は銀座6丁目の「牛庵」でとる。ここのハンバーグは一日30食しか作らない。しかも安くておいしい。開店を並んで待ってハンバーグをいただく。ブルーノさんはなれない箸を使って米粒を最後の一粒まで拾って食べる。このような日本人を都会ではまず見かけなくなった。ロンドンではオリンピック税がかけられて諸物価・・特に食費が高いそうだ。佳子さんの実家などの食生活を見てブルーノさんが驚くのは、日本人が食べ物を余らして捨てている。もったいないと思う。イギリスの方がもっと食べ物を大切にする。余らして捨てるなら最初から買わなければよいし売る方ももっと量を減らしたら・・とブルーノさんは思う。「イギリスも若者はひどいが、全体としては日本が食べ物を粗末に扱っている」と佳子さんもいう。暖衣飽食の日本、いつかしっぺ返しが来るだろう。
 地下鉄に乗る。年配の婦人が乗ってきた。ブルーノさんは立ち上がった。白髪の外国人を見てその婦人は驚いて断るが、ブルーノさんは手を取って座らせた。多くの日本の若者に見せたい風景である。ロンドンでも同じことだそうだ。私も時には席を譲られるが、電車のシルバーシートさえ若者が座り、禁じられているケイタイを操作して平気な顔をしている。老人に席を譲るなど考えもしないといった顔をしている。「老人を大切にする」という当たり前のことを日本は敗戦でどこか忘れてしまった。
 ブルーノさんは佳子さんに重い荷物を持たせない。「力仕事は男がする」・・・精神に徹している。日本は外国人にとって住みづらい国のようだ。「英語が使えない」。「一般的にはやさしい人が多いが状況によっては平気で豹変する」。「その人個人の考えで決めるのではなく、仲間同士の意見が優先される」などなど・・暮らすとなると文化の差が重荷になってくる。私などは日本が一番だ。よその国では住む気がしない。
 この日夫妻は牛庵をスタートして新丸ビル、丸ビル界隈を巡回バスで一周、浜離宮を散策後水上バスで浅草という東京見物であった。広瀬君の友人の感想はブルーノ夫妻は何かといえばすぐくっついてはなれず仲の良いところを見せ付けた。優しいブルーノさん、強い佳子さんという印象であった。日本でも「かかあ天下は家庭円満の秘訣」という。いいではないか。