1998年(平成10年)8月10日(旬刊)

No.48

銀座一丁目新聞

 

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スーパーウオッチング(1)

麻根琴美

 マネキンって御存知ですか?デパ^トの洋服売場にある人形のことではありません。スーパーやデパートなどで、食品や飲物の試食、試飲を実施する試食販売士のこと。

 法律にも明記されており、「専門的な商品知識及び宣伝技能を有し、店頭・展示会等において、相対する顧客の購買意欲をそそり、販売の促進に資する為に、各種商品の説明・実演等の宣伝業務(この業務に付随した販売の業務を含む)を行う者。」(職業安定法より)

 要するに、以頼されたメーカーの商品を、「どうぞ御味見して下さい」と声をかけつつ、試食台に食欲をそそるような盛りつけをし、試食してもらう。その結果、お客様に商品を知ってもらい、購入していただき、売上げを伸ばすよう働きかけることが仕事。

 スーパーでウィンナーなどの試食を実施しているのを見たことがありますよね。実はこの商売、人間の本能の一つである「食欲」を満たす所が職場。人間の本性というのがよく見える。ドラマチックで、さしずめ四角いジャングルといったとこる。

 景気が悪いと言われる今、家庭でまず削るのは食費。マスコミよりリアルに実感。親の躾がなってないというのは、親子連れのお客様を見れば、一目瞭然。問題点は何なのかも冷静に分析が可能。あくまでもマネキンの仕事を通してみる社会の姿ではあるが、今時の日本人像がくっきりと浮かびあがるハズ。

 ところで二つのお願いがある。私たちマネキンのことを「オバサン」と呼ぶお客様。この業界ではどんなに年配の人でも「おねえさん」と呼び合うのがしきたり。お客様だから「オバサン」と呼ばれても、ニッコリ対応しているが腹の中では「アンタのおばさんじゃないわよ!!」そう思ってますあしからず。呼びにくければ、販売しているメーカー名で呼んで下さると幸い。例えば、〇×ハムさん、〇×乳業さんとか。ささいなことですが、ほんのちょっとした事で気持ち良く仕事、買い物が出来ますよ。

 そしてもう一つは、商品やお客様用トイレの場所を聞くお客様。マネキンは二日単位で店を移動し、勤務する。二日間しか店にいないので内部に関してはほとんど無知。牛乳、卵、トイレの位置など分かるはずもなく、分かるのは販売している商品に関するのみ。忙しそうにしている店員は怖そうだし、悪い気がして聞きづらい。ニコニコしているマネキンさんには聞きやすいその気持はよーく分かる。ですが、場所は分からないし、試食場を勝手に離れると担当者の怒りが飛ぶ。気分はもうロミオとジュリエット。「ああ、お客様を取るべきか、担当者を取るべきか」

 探してくれないとお怒りの方、どうぞこの事情を察して下さい。

 「聞いてくれるなお客さん、あたしゃ指示書一通で来た旅ガラス。持ち場所離れりゃ、迷子になって戻れやしません」

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