2007年(平成19年)5月20号

No.360

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自省抄
(-最終回-)

池上三重子さん、衷心からご冥福をお祈り申し上げます。

 5月2日、「自省抄」ご執筆の池上三重子さんご逝去の報を拝受しました。

  謹啓 叔母池上三重子儀
 去る三月二十七日未明永眠いたしましたことをお知らせ申し上げますとともに、生前に賜りました格別のご厚情に心より御礼申し上げます。お蔭様でよき晩年を送り、安らかな永眠を迎えることができました。
 故人の意向もあり、葬儀はごく内輪の者だけにより執り行いました。皆様へのお知らせも初命日後とさせていただきましたこと、宜しくご諒承の程お願いいたします。
 略儀にて大変失礼には存じますが、寸書をもってお知らせと御礼とさせていただきます。
     敬具
    平成十九年四月三十日

             池 上 隆 昭

 隆昭さんは池上さんの兄上のご長男、終生、愛してやまなかった甥御さんです。
 池上さんは昨秋、乳癌の剔出手術を受けられました。残念なことに「豆粒ほどのものがのこっている」と告げられ、予後の苦痛はもとより医師への不信感とこころの葛藤を抱えながら、読書に、思索にといつも通り見事な日常を送っておられました。

   薬壷右掌にささげ薬師仏 瓏と立ちます蓮華座踏みて
 百重なる蓮華座に坐し仏眼仏母 ああさながらや顔(かんばせ)の慈悲
   かんばせゆ薫り滾るるみ仏の 拝跪させたまふ母御前とぞ
   「もうしさん」と母がともなひ詣でしは 文殊菩薩か母恋ひやまず
   隣村の田中の小さき祠なりき 文殊菩薩にふたたびもかな
   常ならぬ世を常としていのちなり かかる己れを愛しまざらめや
   奥深く孤りごころの歓ぶを みつむれば母ぞ顕ちます
   目覚めつつ暁闇今日も見たりけり わが臥床より消えゆく母を
   わが呼べば必ず来ます母なれば 何を慨かむやすらひい寝む

  母上よ、夢見に傍にきっと添い寝してくださいますよね。人が聞いたら、ああ気味悪 とおもうかも、しかし母と娘の絆……

 そして、自省抄にこう綴り続けながら池上さんは旅立ってゆかれました。
 池上さん、ありがとうございました。衷心からご冥福をお祈り申し上げます。



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