2003年(平成15年)8月10日号

No.224

銀座一丁目新聞

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花ある風景(138)

並木 徹

天狗語の歌で元気になろう

  作・演出、石塚克彦、演出助手・脚本協力、天城美枝・音楽・寺本建雄、ミュージカル「天狗のかくれ里」を見る(7月26日・東京・北とぴあ さくらホール)。
一番面白かったのは、天狗語の歌「元気と力の湧く歌」であった。何のまじないを言っているのかよくわからなかった。歌の文句をよく見て納得した。天狗の里に迷い込んだ東京・墨田区に住む小学5年生のマコト(五十嵐裕)と田舎のおばあちゃんの家のいとこ、ミカ(北沢装子)にカラス天狗(増山美保)がこの歌を教える。
 ヤオラモニッタ ツカタマエッカ(親にもらった 頭使え)/ロエガンカ セロカラヒメ(考えろ ひらめかせろ)/ヤオラモニッタ セカゴウオッテ(親にもらった 手を動かせ)/ナシデイチャクオオ エカツルグルグ(横着しないで ぐるぐる使え)/ヤオラモニッタ ロエタキオシア(親にもらった足を 鍛えろ)/モデトコマイルケ レナニシア(どこまでも行ける 足になれ)/ヤオラモニッタ トシアトテ(親にもらった 手と足と)/バレアガマタア ルデキモデンナ(頭があれば なんでもできる)
ミカが言うようにこの歌を歌うと元気が出そうである。案外、夏休み中に子供達の間ではやるかも知れない。天狗のかくれ里には外国から修業に来ている少年達もいるにはおどろきである。アメリカからきた天狗シカゴ(アリソン・フレイザー・8月末に帰国)は彩りを添えていい。
 天狗の大木が出てくる。この大木の根元で一夜を明かしながら、御礼を言わずに去ろうとするミカとマコトに天狗モルチン(五城目大五郎)が説明する。葉は太陽の光を受け止め光合成によって酸素をうみだす。この酸素で人も動物も生きていける。木の幹には樹液が流れている。樹液は虫たちの大好きなスープである。虫を目指して鳥たちがやってくる。小鳥は虫が大好きである。木の枝は小鳥たちのレストラン・・・
 立派な社会科の勉強である。しかもわかりやすい。森林伐採がいかに環境を破壊しているか理解できる。その意味では大人たちも見に来なくてはいけないお芝居である。
 「それは出来ない」といつもだだをこねていたマコトガミカと天狗にはげまされて「声をこだまにのせて遠くへ運ぶ」術を会得した。ミカは木や動物の声を聞き対話できる術を学んだ。ミカの踊りや歌は抜群にうまい。将来が楽しみだ。
 天狗らしい声を出し指図している大天狗は誰だろうかと思っていたら天城さんであった。帰り道に思った。ふるさとキャラバンは長野あたりに「天狗塾」をひらいてはどうか。「天狗語と音楽」は寺本建雄さん。「天狗の生態と天狗踊り」は天城美枝さん。「天狗のエピソード」は石塚克彦さん。「精神訓話」は大内義信さん。面白ろいものになりそうな気がする。

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