2003年(平成15年)3月10日号

No.209

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(8)

−新しい季節− 

 新年度の始まりは4月で、学校の入学式や企業の入社式なども、大体が4月1日。4月は新しい季節の始まりである。だが、一足早く3月にスタートする世界がある。競馬である。競馬は3月1日がスタートだ。なぜ、競馬の世界がそうなのか。詳しいことは知らない。多分、競馬の先進国であるイギリスが3月で、それに倣ったのだろう。
 それはともかく3月1日には、2月に競馬学校を卒業したばかりの新人も、先輩騎手に混じってデビューする。中央競馬騎手課程19期生は9人。いずれも18歳〜19歳の少年。とはいえ、厳しいプロの第一歩だ。
 ところで、「19期生は9人」と書いたが、騎手免許試験に合格したのは10人である。1人多い。その10人目の少年とは、実は去年の卒業生。去年は騎手免許試験に合格せず、2度目の挑戦で合格の夢を果たしたものだった。つまり1浪である。他の社会では1浪など珍しくもない。だが、騎手の世界では珍しい。よくぞ1年間、頑張ったものだ。その鈴木慶太くん(19)が言う。「去年の悔しい思いをバネにして頑張った。今年デビューの中では一番多く勝ちたい」と。
 騎手を目指す少年は、中学卒業とともに競馬学校に入学。3年間の厳しい教育(寄宿舎生活)を受ける。学課の勉強はもちろんだが、特に厳しいのは、体重制限のための節制のようだ。育ち盛りだから食べたいだろうが、体重計とニラメッコの毎日というから、今の普通の少年には、とてもついていけまい。厳しいということでいえば、早朝からの馬の世話や騎乗技術の訓練はもちろん、社会人としての常識(規律、礼儀作法などまで)も躾られる。その教育の様子は、今の普通の学校の生徒にも大いに参考になると思われる。
 さて、新人騎手のデビューだが、長谷川浩太騎手(栗東・中村均厩舎)が、3月1日の2レース、マイネサマンサに騎乗して、デビュー戦初勝利を達成した。他の新人騎手は勝てず、プロの厳しさを味わった。ところで、勝った長谷川騎手の場合だが、新人騎手の初騎乗初勝利は5年ぶり。久々の快挙といっていい。今後に期待を抱かせる。
新しい季節の始まりに、期待を予感させるものとして、他に何があるだろうか。今の政治や経済の状況を見渡しても、人は期待を見出せずにいる。今の閉塞状況の世の中では、特に若者の活躍に期待したいものがある。ともかく、新しい季節の始まりである。

(戸明 英一)

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