2000年(平成12年)9月20日号

No.120

銀座一丁目新聞

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花ある風景(35)

 並木 徹

 槇坪 多鶴子監督の映画「老親ろうしん」の試写をみた(10月14日から岩波ホールで上映)。悪戦苦闘して自宅で11年間母親の介護をした岩波ホール総支配人高野 悦子さんはこの映画を推奨する。
 私はいささか複雑である。120歳まで生きるつもりの私にとっても介護の問題は関心はある。「老いは理想を失った時にくる」と思っているからどしどし勉強はしたいし、いろいろな体験もしたい。どんどん成長していくつもりである。体が動かなくなったら、老人ホームに入りたいと思っている。120歳まで生きるのだから二人の子供はあてにできず、さりとて孫が世話してくれるとも思えない。ホームにしかゆくところはあるまい。
 私の父親は89歳でなくなった。リウマチで7年半寝たきっリで三男の兄嫁が面倒をみた。兄嫁は文句一つ言わなかった。
 映画は門野 晴子さんの「寝たきり婆あ猛語録」(講談社刊)を原作にし、その体験にもとずく老人介護の生活を描く。ユーモアーもあり、人間的共感もあり興味深かった。
門野さん自身9年間も実母の介護をしており、自分の人生の主人公になりたくて離婚。「私の時間をかえせ」と誰に向かって吠えていいのかと嘆いている。酷くな言い方だが、私に言わせれば、そんな男を夫にした不運と諦めるほかないと思う。
理解ある、やさしい男性と結婚しておればまた別の人生が送れたはずである。
 舅の世話に疲れ怒り、殺意すら抱く主人公成子(万田 久子)に娘(岡本 綾)が言う。「ママ、おじいちゃんはゆっくり成長するタイプなの」
 この言葉に成子は救われるのだが、こんな男ばかりでないことを知ってほしい。私自身、自分のことは自分で始末するようにしている。8月で75歳になった私はそれなりに備えている。あと45年も生きねばならないからだ。
 「女が歯を食いしばって介護する国なんて男も幸せであるはずない」門野さんの言う通りである。老人介護は個人がみるには限界があり、国が十分手当てしなければいけない。国民はそういう政治家を選らねばいけないとつくずく思う。

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