1999年(平成11年)12月10日号

No.93

銀座一丁目新聞

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花ある風景(8)

並木 徹

 良い言葉、いい文句に出会うと、体がぞくぞくする。最近、ひさしぶりに胸に響く言葉にあえた。

 陶芸家の河井寛次郎さん(故人)はすばらしい言葉を残している。「鳥が選んだ枝、枝が待っていた鳥」である。ジャーナリストの私はすぐに「読者が選んだ新聞 新聞が待っていた読者」が思いつく。枝ぶりがよくなければ、鳥はこない。新聞の内容が良くなければ、読者は読まない。言いえて妙である。

 良い枝にいい鳥がとまりにくる。いい新聞は良質な読者がつく。鳥と枝,新聞と読者、お互いに切磋琢磨してよい関係を形ずくり、成長していく。

 11月末,劇団「ふるさときやらばん」の会員制のくらぶ「ふるきやら」で、知り合ったオンステージ代表取締役,大歳昌彦さんは、旅行ばかりしているためか、「客が選んだ宿 宿がまっていた客」という。いい宿は、ルームサービスに電話しても、返事にお客の名前をいう。「はい、大歳様ルームサービスです」ベットの上には従業員の手ずくりの折り鶴と「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」のメッセージがそえてある。こうなると、お客の行儀は良くなる。「うちのお客のレベルは低いから」といっている宿は宿のレベルが低いのだ。

 すべてに人間がにじみでてくる。木に,新聞に、宿に、経営する人、お客の人柄がでる。「お客が選んだ花 花が待っていたお客」花ひとつ買うにもその人の心ねがあらわれる。細心の心くばりがいる。「花がまっていたお客]になりたい。

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