1999年(平成11年)10月1日号

No.86

銀座一丁目新聞

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追悼録1

人の長所をみてつきあえ

 

 原文兵衛さんがなくなった。享年86歳。(9月7日)。

 記者クラブの連中は、はらぶんと呼んで、豪快で笑顔をたやさない原さん(元警視総監)を尊敬していた。

 警視総監時代(昭和36年〜同39年)、私は毎日新聞の警視庁クラブのキャップであった。ある日、はらぶんさんと総監室で雑談しているとき、こういった。

「あなたは人の好き嫌いがはげしいようだが、人には長所もあれば短所もある。その人の長所をみてつきあえば、好き嫌いがなくなりますよ」

 何か、私のことが耳に入ったのであろう。この忠告を有難く受け入れた。新聞社の先輩でもこんなことを言ってくれた人はいなかった。

 私が円満になりはじめる第一歩は、はらぶんさんがつくってくれた。その後、参議院議員となり、環境庁長官、参議院議長を努め、国政のために尽くされた。

 この間、会う機会がなく、“人生の師”にお礼を言う機会を失ってしまったが、東京・青山葬儀所で開かれた告別式(9月11日)で焼香しながら、はじめて感謝の意をのべた。

 「人と接する時、怒らず、温情をもってする」を私の信条のひとつとしている。もとをただせば、原さんの忠告からきている。

 有難うございました、はらぶんさん。(柳 路夫)

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