銀座一丁目新聞

花ある風景(581)

並木 徹

毎日新聞社会部旧友会開かれる

2年ぶりに開かれた毎日新聞社会部旧友会に出席した(12月10日・東京神田・如水会館)。新聞記者のスタートが社会部の察回りだから古巣の事はいつまでも気にかかる。参加者は現役・OBを含めて93名。まずこの2年間に亡くなった同人17名に黙祷する。大坪信剛社会部長の話によればこの一年連載企画「日米安保の現場』、戦時を振り返る「千の証言」に取り組んできた。9月に熊谷で起きた6人殺害事件では容疑者確保時の記事とスクープ写真撮影に成功するなど大いに活躍しているという。

乾杯の音頭は一番年長と言うことで私がした。その前にハプニングが起きた。大坪社会部長が今年卒寿を迎えた私に「ちゃんちゃんこ」をプレゼントしてくれた。久しぶりなので少し挨拶した。『最近死んだ漫画家の水木しげるの「七つの幸福の条件」がスポニチに載っていた。第一条に「成功や栄誉や勝ち負けを目的に事を行ってはいけない」とある。私はこれには反対。特ダネは大いにとるもの。これからの新聞の生き残る道の一つは特ダネを連発することだ。勝負の世界に生きる男の心意気だと思う。第5条に「才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ」とある。上司は自分が思うより高くは評価しない。社会部員の時、ある社会部長が私に下した評価は「直情径行・頑固。他との協調性なし」であった。お蔭で苦労した。確かに才能と収入は別である。私は才能があるのにお金が入ってこなかった。会社から借金ばかりして退職金はほとんどなかった。第7条に「目に見えない世界を信じなさい」とある。年を取るとわかる。目に見えない世界が見えてくる。すると人間は謙虚と感謝するようになる』

会場には懐かしい顔がいくつかあった。産経新聞へ移り、ワシントン・中国特派員として活躍した古森義久君今は日本とアメリカでの半々の生活。アメリカ人で弁護士の夫人も同じようなものだという。テレビに広告によく出ている鳥越俊太郎君は流行語大賞の審査委員長を務めた。「五郎丸ポーズは大賞に選ばれると思ったのだが・・」と言うと「選んだのですが本人が五郎丸は固有名詞です」と断ってきたという。天野勝文君は本紙の愛読者で最近号の「人生の七条件」(12月10日号「花ある風景」)のコピーを見せてくれた。堤哲君も同じような話をしていた。牧太郎君とも会った。彼の感想を彼のブログから引用する。

『例の「ロッキードの毎日」を指揮した牧内元社会部長が乾杯の挨拶。矍鑠として、90歳とは見えない。普段「120歳まで生きる」と豪語していたが、今回は「東京オリンピックまで見れば良い」と大人しかった(笑) 例の「遅れた原節子死亡記事」を叱ったり……「独断と偏見の牧内」は健在! 二年先輩の板垣さんが「来年はロッキード事件から40年」と話していたが、時はあっという間に「過去」になる』

珍しくアトラクションがあった。大坪社会部長の知り合いによる「三人の長唄三味線演奏」。ロッキード事件については来年が事件後40年で、何か企画を考えたいと山本修司編集委員が言っていた。中島健一郎君が「あの時毎日はいち早く事件を『構造汚職』と捉え報道した。今の政治のありようも当時とあまり変わりがないよ」と言葉を添えた。話は尽きず午後8時過ぎ会場を後にした。

この会館の受付嬢は親切でコートのチャックをはめかねているのを見かねて手伝ってくれた。良い気持ちで帰途に就いた。