2013年(平成25年)3月1日号

No.566

銀座一丁目新聞

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花ある風景(484)

 

並木 徹

 

同人雑誌「ゆうLUCKペン」のメッセージ
 

 毎日新聞のOBの同人雑誌「ゆうLUCKペン」が第35集を発刊、そのパーティが開かれた(2月22日・竹橋・アラスカ)。今回のテーマは「愉快な日本語・不愉快な日本語」。もちろんテーマにとらわれず自由に書いても良いことになっている。執筆者32人、この日の参加者は28人。長野市から参加したものもいる。いずれも力作ぞろいで実に面白い。昔、会社ではあんなこともあったのかと初めて知ることも少なくない。編集幹事を務める私は「毎日新聞の『記者の目』に掲載してもおかしくないものもある。みなさんが現役のころ今のようにのびのびとこのような原稿を書いていたら毎日新聞はもっと部数を伸ばしたでしょう。」と挨拶した。松崎仁紀さんは「日本語の最前線から校正おそるべし」−校閲記者の”胸騒ぎ“と”おえつ“―と題して毎日新聞校閲グループが出している『校閲月報』を引用しながら現場取材記者の日本語が乱れている実態を記す。一部を紹介すると【圧倒的】前回の対戦で圧倒的な敗北を喫し雪辱に燃えている。【一番乗り】ロッテはパ・リーグ30敗一番乗り。【断トツ】断トツの最下位に沈む横浜。三つとも優れた意味を含む言葉にあまり芳しくない言葉が同居する表現である。正しい日本語の使い方ではない。「あえて不調ぶりを印象づけたり皮肉を込めたりする手法である」と現場は言い訳する。語彙が貧弱というほかない。不勉強というほかない。「言葉の乱れは国の乱れ」木鐸を任ずる新聞がこの体たらくでは困る。

 山埜井乙彦さんは名文家であった福湯豊さんの「文章のコツ」を書く。「@センテンスを短くA体言止めを使えB形容詞を使うな」。私は福湯さんから名文家になろうと思ったら映画、展覧会、音楽会などに足を運べと教えられた。神倉力さんの原稿の中に盛岡少年少女合唱隊の指揮者の珠玉のような言葉がある。「優等生は教師になっていけない」というのだ。その理由は「出来の悪い子の気持ちがわからないからだ。なるほどと思う。

 長野市から来たのは倉嶋康さん。55年前の大スクープ「諏訪メモ」の全容を明らかにしている。この特ダネで松川事件の被告たちのアリバイが成立して全員無罪になった。被告から倉嶋さんは「神様」と思われている。このような記者は少ない。ところがこの特ダネが福島版に掲載されため見過ごしされ、会社から表彰されなかった。このことに気付いた会社が遅まきながら昨年6月29日、主筆・岸井成格さんの「主筆感謝状」を出した。会社のOB会の集まりである「毎友会」総会の席上で感謝状をいただいた倉嶋さんは「こんな温かい思いやりが他社にあるでしょうか」と感激の挨拶をした。大住広人さんが「職務分類制度」を取り上げ「たゆたふ古文書風景」を書く。堅い話をよくまとめ上げている。書く材料は私たちの目の前にいくらでも転がっているということであろう。「ゆうLUCKペン」の同人は多士済々。来年もどんなものが出てくるか楽しみである。