2011年(平成23年)7月1日号

No.508

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花ある風景(423)

 

ごん兵衛

 

グランド・キャニオン

 
 満85歳と3ケ月になった。独り参加の旅も愈々終りに近い今年は、アメリカ西部回遊のツアーを申し込んだ。主な狙いはグランド・キャニオンにある。予て雄大な景色との評判を確かめたいと念願していたからである。ヨセミテ国立公園の滝とハーフドームを観て,サンフランシスコから空路フェニックスに入り、其処からパスで4時問をかけてのグランド・キャニオン入りであった。何しろカリフォルニア州ですら日本の1.1倍の広さがあるだけに観光の時間以上に.移動には時間がかかる。

 グランド・キャニオンは、カリフォルニア州に隣接するアリゾナ州の北辺に在って、コロラド高原がコロラド川の侵食に依って削りだされた峡谷である。其処は数億万年前から海底にあって、厚さ16000m程の堆積物が層を成していたものが、凡そ7000万年前に地殻変動により隆起し、4000万年前から始まるコロラド川の侵食作用により500万年前にその姿を現したものと言われている。延長約440q、東京から琵琶湖までの距雌を幅6〜29qにわたり.平均深さ1200mに刻み込まれた峻谷は、まさに地球生成の歴史と共に創られた.大自然に依る一大オブジェと言えるだろう。

 我々は此処に連泊し、普段の姿の他に夕陽を浴びるキャニオンと、旭日に映えるキャニオンをゆっくり観賞することが出来た。百開は一見に如かずの格言通り、グランド・キャニオンは予想を遥かに超える圧巻であり眺望であった。感激するまえに呆然として立ち尽くし、雄大・壮大なる言葉を持ってしても表現できない感動を味わった。標高2000m級大地の果てしないコロラドの高原を、大きく深く切り裂いてきたコロラド川はさぞ牙をむく怒涛の流れだったのだろうが、今は曲折した深い谷底に青みがかった緑色の細い帯状になって横たわって居る。全くの静寂の世界である。見た限りでは一木一草とて無い無機質の岩肌・絶壁の連続に過ぎない。

 だが最深1600mと云う階段状の絶壁は、各層毎に色合いが整然と異なり一様ではない。特にタ陽・旭日に照らされると岩肌は生き返ったように輝き、時問により場所によって様ざまに、異なる顔を覗かせてくれるのが嬉しい。人問の知られざる奥深い歴史を無言の内に秘めた姿に.ただ夢中でシャッターを切ったものだった。単にコロラド川沿いだけでなく、横方向にも似たような裂け目が大きく延びて、台形・尖塔状の奇岩が取り残されたように望見できる。水平線遥か彼方までも見渡した積りた'がそれでも我々が観る範囲はほんの1〜2%にすぎないらしい。

 全容を確かめるには矢張り、ヘリコプターの助けを借りなければならない。この地帯では一日の中に四季があると言われ、日の出観賞には冬の服装で出かけ春夏秋に合わせて軽装に替えて行くだが.湿度は10〜20%と低く清々しい。青空の見える絶好の好天気にも恵まれて生涯の思い出を得て大満足することが出来た。
グランド・キャニオンに最も近い都市ラスベガスにも、バスで6時間を要する。砂漠の中の人工都市ラスペガスだがその喧騒と、静寂の世界グランド・キャニオンとの落差は、見て来た絶壁以上のものがある。観るものの巨大さと、なんとも不思鍛なコントラストを体験したツアーであった。

「キヤニオンよ 鳴呼キヤニオンよ キヤニオンよ」(ごん兵衛)