花ある風景(402)
並木 徹
防衛大学開校記念祭に思う
防衛大学の校長、五百旗頭真さんが開校記念日に四つの大隊から選ばれた各150人がぶつかり合う「棒倒し」の試合の模様と統一テーマとして学生たちが選んだ『矜持』について新聞に書いていた(11月28日、毎日新聞)。陸士59期生のわしたちもよく中隊対抗の「棒倒し」をよくやった。当時の同期生の日記にはこうある。「12月1日(水曜日)15時より東校庭で第23中隊と棒倒しをやる。第1回目は敗北したが第2回戦は勝つ。団結の力なり。予科の棒倒しは太くて長い丸太を前方に2本、あと中央に1本立て、その3本の丸太は各々2,30人の生徒が何重にもとり囲んで守る。一方、守る数とほぼ同数の攻撃軍は、勇気凛凛、ラッパ一声、または空砲一発を合図に敵陣に殺到し、前の2本のうちいずれか一方を倒して本塁に殺到し最後の丸太の頂を地に着ければ「勝ち」である。この間、相手をナグルコト、蹴ルコト一切自由。2年生に対してもお構いなしである」。五百旗頭校長は『若者のエネルギーがさく裂する』と表現する。在校中から「士官候補生の矜持を堅持すべし」と教えられた。いかなる時でも武人としての誇りを忘れるなと言うことである。五百旗頭校長は観閲式の式辞の中で「矜持というテーマは諸君の高い志と覚悟を物語るものに違いない。国と国民を守る誇りを正面から掲げた諸君に敬意を表する」と語った。
戦後65年、現在は経済不況と言われるが、一応経済大国となった。だが日本人はもっと大事な国への誇りと自らの魂を失ってしまった。大国にはへつらい、言うべきことも言わず、事なかれで済ましてしまう。国民は自己中心的な自由を謳歌する。子殺し、いじめが横行する。精神復興をせねばならない。今回の開校記念日での防大生の在り方に少しは救われた思いがする。戦後、時代が忘れた日本人の美しい精神を思い起こさせるのも私たちの仕事であり、責任でもある。
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