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「兵隊さんよ有難う」の意義
牧念人 悠々
戦前の流行歌に「兵隊さんよありがとう」という歌があった(昭和14年・作、橋本善三郎、曲、佐々木すぐる)。歌詞は「肩を並べて兄さんと/今日も学校に行けるのは/兵隊さんのおかげです/お国のために/お国のために戦った/兵隊さんのおかげです」(1番)という。軍国主義推進の歌というなかれ。朝日新聞の企画募集で『皇軍将兵に感謝の歌』として児童向けに作られたもの。作詞した橋本善三郎さんは印刷所の工員であった。国を守るのは国民の勤め。お国に尽くす兵隊に感謝するのは当然であった。これは戦後平和になっても変わらないはずである。唱歌が歌われなくなって65年、いまや日本国民に自衛隊や日本を守る米軍軍人に対する敬意がなくなった。さらに言えば、大東亜戦争で国のために立派に戦った将兵の顕彰をすべきであるのを日本は怠っている。世界にはこのような国はない。
普天間基地移設問題で開かれた沖縄県民大会で「基地の県外・国外移転」を叫んで9万人(主催者調べ)が集まった。女子高校生まで登壇した。戦前と違ってなんでもものが言える国になった。民主主義を謳歌するのはそれで結構である。その反面、国を守る意識が希薄になった。総理大臣までが「県民の意思を尊重して県外・国外に基地を移します」という始末である。「兵隊さんよありがとう」の歌を知らない総理は沖縄が持つ「戦略的要地」の認識がない。たとえ住民の意思に反しても基地を作らなければならない場合がある。国益がその反対の意思より優先されるからである。日本はアメリカの核の傘の中にあり、しかも自衛的な軍備しかないのにかかわらず「対等な日米同盟」を求めると主張する。「最後までやり通せるのか」とオバマ大統領ならずとも、いいたくなる。まことに“おろかな”首相である。
3番の歌詞にいう。「淋しいけれどお母様と/今日もまどかに眠るのも/兵隊さんのおかげです/お国のために/お国のために戦死した/兵隊さんのおかげです」
戦後65年、戦死した日本人は一人もいない。危険だといわれたイラクのサモワでも派遣された自衛隊員は無事であった。インド洋上での海上自衛隊の護衛艦の給油作戦でも犠牲者は出なかった。自衛隊は国際協力の実を果たし、国際貢献を立派に果たした。世界から感謝された。鳩山首相はそれに対して感謝の意を十分に表したのだろうか。
国民の生命・財産を守るのが首相に課せられた最も重要な責務である。その一つが国防である。それを鳩山首相はおろそかにしている。これほど「大局」を忘れた首相の存在を私は知らない。
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