2008年(平成20年)12月10日号

No.416

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茶説

国を護ることと
クラスター爆弾禁止条約署名の愚
 

牧念人 悠々

 ノルウェーのオスロで開かれた「クラスター爆弾禁止条約」の署名式の記事を読んで日本という国は「国を護る」ことを念頭に置かないとつくづく感じいった。戦後63年、他国と戦ったことのない日本は米国が護ってくれるものと思いこんでいるようだ。裏返せば北朝鮮、中国、ロシア、韓国から侮られていると言うことだ。それに気がついていない新聞、政治家が多すぎる。
 12月2日の本紙ブログ「銀座展望台」で次のように書いた。
 『インド・ムンバイで起きたテロ事件で死者180人以上(その後171名と判明)、負傷者300余名を出した。テログループはわずか10名。使った兵器は自動小銃AK47と手投げ弾である。
 日本の新聞も政治家もクラスター爆弾は「非人道的兵器」というならば、自動小銃AK47も手投げ弾も「非人道的兵器」ではないか。それとも「人道的兵器」とでも言うつもりか。 クラスター爆弾禁止条約署名式が3日オスロで開かれる。日本は署名する。日本は専守防衛を旨とする。こちらからは攻撃しない。日本がクラスター爆弾を必要とするのは長い海岸線を持ち少ない兵力で効率よく防御するためである。日本が積極的に クラスター爆弾を使うことはない。この条約には米国もロシアも中国も署名しない。兵器はみな「非人道的兵器」であることを知っているからである。
 情緒を愛する日本人は「人道的」「非人道的」という言葉に弱い。もう少し理性的になってもよいのではないか。「非人道的」という言葉に騙されて何でも賛成するのは国を誤ることになる。
 条約に署名する以上、クラスター爆弾に代わる兵器を防御用として補てんする必要がある。国を守ることは一刻も猶予を許さない』
 クラスター爆弾は不発弾となった子爆弾で死傷する民間人が後を絶たず戦後復興を困難にするケースが多いという。自動小銃AK47、手投げ弾は持ち運び便利で、小回りがきき、どこでも使える。テログループには格好の兵器である。無差別に何の罪もない民間人を殺傷する。このような「非人道的兵器」はない。 クラスター爆弾よりその使用頻度は多い。とすれば「自動小銃AK47・手投げ弾禁止条約」を早急に成立する必要があるのではないか。兵器はもともと殺傷を目的とするもので「人道的」「非人道的」の区別はない。
 それを区別するのは愚かというほかない。
 日本は誠に気前がよい。クラスター爆弾の被害国に総額6億5000万円の支援をする。米国、ロシア、中国。北朝鮮、韓国、イスラエルなどは参加しない。日本の近隣諸国は皆 クラスター爆弾を保持する。一人日本だけは「非人道的兵器」という理由だけで賛成署名する。フィンランドは条約案に賛成したが「クラスター爆弾は国境を護るため不可欠」という理由で署名を見送った。「長い海岸線・兵力過小・専守防衛」の日本も反対すればよいものを「非人道的兵器」に弱い。この爆弾を廃棄するのに200億から300億のお金がかかる。代わりの兵器を用意すればさらに費用がかさむ。これは税金の無駄遣いである。
 米国務省は「クラスター爆弾の製造・保管・使用を包括的に禁止する条約は米国や同盟国の兵士の生命を危険にさらす」として改め不参加の方針を表明した(産経新聞)。この方針はオバマ新政権になっても変わらないであろう。日本政府は「兵士や国民の生命を危険にさらす」のを何とも思っていないのである。キャンペーンを張った新聞また同じである。「非人道的兵器」という言葉に酔いしれるのは早くやめた方が良い。