2007年(平成19年)9月20日号

No.372

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安全地帯(191)

信濃 太郎

携帯小説の映画化「天使 がくれたもの」

 携帯小説を読んだことがない。もちろん携帯は持っている。電話と万歩計に利用しているだけである。映画「天使 がくれたもの」は原作者、CHACOの実体験。原作本が115万部も売れた。CHACOのメッセージは「素直になる。後悔しない」これが中高生に受けたらしい。
その映画が監督・中田信一郎で9月29日から全国でロードショーされる。
主人公日向舞(清水由紀)は進学校に落ち、郊外の高校に進む。そこで美衣子(徳永えり)と知り合い、親友となる。一時疎遠になるが親友として折に触れて的確な忠告をする。美衣子に連れられて若者たちがあつまるマンションの一室に案内される。そこで寝ているカグこと香久山聖(鍵本輝)をあやまって足で蹴っ飛ばしてしまう。最悪な初対面の印象であった。二人は会えば喧嘩ばかりする。カグが時折見せる優しさに舞はいつしか惹かれてゆく。カグは父親の借金を返済するため和歌山の白浜の旅館の雑役に行く。その間カグは電話一つしない。理由は「声を聞けば会いたくなる」からであった。舞はそうとは知らず自分が嫌いになったと思い込む。2人とも自分の気持ちを素直に伝えることができずに疎遠になってゆく。舞は同じ母子家庭の若者に惹かれ体を許す仲になる。やがてその若者とも別れる。
恋人が過ちを犯して妊娠しても若者は「好きなお前の子供じゃないか」と一緒になって育ててゆくことを勧める場面もあって、描かれる青春群像はそれなりに懸命に生きる若者たちである。
最後に舞はカグとよりを戻そうとして会う約束をする。カグはバイクで事故を起こしあっけなく死んでしまう。舞は叫ぶ「伝えたい気持ちが言えなくて、めちゃ公開した。だから、みんなには素直になってほしい」
男と女の気持は昔と現代と一向に変わらない。渡辺淳一さんの言葉を思い出だした。「源氏物語の時代から男と女は同心円の周りをまわっているだけだ」。科学は日進月歩で進んで行くが男と女の気持ちは1000年たっても変わらず、遅遅とし深化しない。「失楽園」「愛の流刑地」が売れ、「天使がくれたもの」がもてはやされるゆえんである。

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