安全地帯(49)
−対米追従か拒否か−
−信濃太郎−
なき大宅壮一は新聞社からある問題について賛否を求められたら「賛成意見か。反対意見か」と聞いた。賛成意見も反対意見も理論整然と答えたという。つまり世の中で起きるさまざな問題は見方や立場が違えば、賛成論も反対論も成り立つと言うことである。もっとも、数々の造語を生み出した鬼才にして初めてなしえたことである。
リンカーンはすべての問題を1、どうでもよい問題 2,中等の重要な問題 3,絶対に大切な問題の三段階に分けた。大した問題でないことは最初からしゃべらない、すっかり人に任せてしまう。中くらいの問題の時には他人の意見もきく,そしてどちらでもよいときは必ず自分が譲る。3のごく大切な問題については最後まで徹底的に論争する。絶対に譲らない。これがリンカーンの処生方針であった(山梨勝之進著「戦史に見るリーダーシップの条件」下)
アメリカから中止の要請があった日本企業連合によるイランのアザデガン油田開発開発計画についてあなたはどんな態度を表明されるか。
アメリカの言い分は「イランの核開発疑惑が高まる中イランに利益をもたらすような投資は不適切である」(米国務省バウチャー報道官)「イランの現政権は邪悪な政権である」(ライス大統領補佐官)さらにアメリカには「イラン・リビア制裁強化法」(1996年8月に成立)がある。イランの資源開発に投資した企業(年間4000ドル以上)を大統領権限で米市場から閉め出すことが出来る。
となれば、アザデガン油田開発を中止せざるをえまい。
このプロジェクトは2000年ハタミ大統領の来日以来、両国で進めてきたもので、國と國との国際信義を簡単にほごするわけにはいかない。中止すれば、日本は中東全体で信用されなくなる。またエネルギー安全保障の観点からも油田開発は必要である。となれば、断固として中止要請は拒否するほかない。
リンカーンの三段階問題処理方法に従えば、3に属する問題である。首相のリーダーシップが求められる。日本政府の態度は「契約を当面棚上げする一方。米国の理解を得るよう努力する」方針だという。これでよいのか。私なら國との信義を重く見て断固拒否して、別個にイランに対して核開発の疑惑を晴らす措置を執るよう求める。どちらにも顔がむいているような態度は宜しくない。 |