花ある風景(61)
並木 徹
書をよくする友人が四人展を開くというので足をはこんだ。場所は東京・新宿センタービル51階、朝日生命ギャラリーB室(6月15日−19日)。78歳になる友人はもともと石屋の家にうまれたので、書には興味があり、若いときから石碑を書かされていたという。会社がおかしくなった時、繰り上げ定年でやめた。54歳であった。それから、先生につき、本格的に書道をはじめた。
書を見る時は、まずバランスがとれているかどうか、筆の流れ、勢いなどを注意すると良いと専門家に教えられた。その通りかもしれないが、私は書はその人の性格を端的に表わすと思う。「守樸」(樸を守る)の文字をみるかぎり、真面目で、かたくなで、てこでも動かないという友人の性格をそのまま形にしている。もちろん書はうまい。私など足元にもおよばない。
「養其神」(その神を養う)はややくだけた文字である。このときは気分がよく、心が柔和であったのであろう。この他杜甫詩など4点を出展していた。
組合運動に熱心すぎて、ほされたさいにも、くさらずに時間の許す限り、書に励んだという。其の趣味がいまや老後の生活をうるおすまでになっている。生徒が25人もおり、日々の生活が楽しくてしょうがないそうだ。
他の3人とは世田谷平和美術展で知り合った。所属会派も師承も書暦も書風もちがうのに、21世紀に何か記念になるものをと考えて企画したものである。
年齢は88歳と66歳と64歳。4人の年の平均は74歳である。その4人組が気楽に書いて、大いに書を楽しみたいと思ったというから、頭がさがる。
友人の名前は小峰雲骨という。雲骨は蘇軾の句からとった。「弧根滔天にきつく雲骨巌を砕く有り」。まだまだ巌をくだくつもりで頑張るらしい。 |