花ある風景(60)
並木 徹
毎日新聞のOBでユニークで面白い男がいる。名を諸岡 達一と言う。年齢は65歳。昨年2月「野球文化学会」を友人とともに設立、事務局代表におさまっている。その機関雑誌「ベースボーロジー」第2号が4月に出た。
諸岡さんは、入社時から変っていた。誰もが望まない整理部を希望、整理一筋に頑張り、名整理記者となった。「記事を注文し、大事件を自由自在に扱う醍醐味は忘れられない」とその著書に書いている。
筆者はほとんど社会部だったから社会部記者こそ記者の中の記者だといまでも思っている。整理の面白さを知らない。それでも、5月23日、日本記者クラブの総会で久しぶりに彼と合った。その近況を聞いて励まされた。
「ベースボーロジー」2号は読み応えする。あとがきにかえて現代「球界養生訓」がある。「野球文化学会」の会員たちの志が感じられる。
野球は豊かにして永久に繁栄する球戯なり
野球は人類共有の無形財産なり
プロ野球のオーナーもコミショナーもプロ野球関係者は心してこの「球界養生訓」を読むのをお進めする。
諸岡君が昭和24年に来日したサンフランシスコ・シールスについて書いている。この中で、シールスの投手にたいして全く打てなかった川上哲治(巨人)が「打撃でジャーナリストにもてはやされ、つい有頂天になっていい気になってしまった。いかに日本野球が浅いものであるかと言う事を知りました」と大反省している。この年3割6分1厘を打ち首位打者になった小鶴誠(大映)も同じようなことをいっている。誠に興味深い。それから50余年、いまイチロー、新庄がアメリカの大リーグで活躍し3割以上あるいはそれに近い打率を残している。日本選手の打撃技術が向上したのであろうか。川上選手は「打撃の神様」といわれたし、小鶴選手も好打者として知られている。イチロー、新庄両選手におとるとは思えない。今と違って昔は野球の交流が少なかったからであろう。戦後はじめての対戦で、アメリカ野球に馴れていなかったというほかないような気がする。
また「球界養生訓」にふれる。いろいろ刺激的なことが書いてある。
内野スタンドの金網ネットは不要なり
外人枠は不要なり
全員外人チームも球界の滋養とならん
セ・パ交流試合は先刻行わるべし
プロ野球は最終的には47都道府県1つあるべし
球界活性化のために刺激が必要であろう。日本の野球文化はこれからだ。アメリカ大リーグともっと交流を重ね、プロもアマもオリンピック野球にどしどし出場して腕を磨かねばダメだ。 |