2001年(平成13年)4月10日号

No.140

銀座一丁目新聞

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茶説

デフレよいではないか

牧念人 悠々

 100円ショプが繁盛している。ゴルフ場も1万2、3000円の料金のところは混雑している。昼時の待ち時間も1時間をこえ、バブル時さながらである。
 アメリカはニューヨークで10年以上も暮らしていた友人の話である。
 アメリカで生活していると、いまでも1ドル400円ぐらいの感覚がするという。日本で2000万円の年収の人の暮らしはアメリカでは年収500万円の人とそう変わらない。アメリカの方が生活物価も土地も住宅の値段も安いからだと説明する。アメリカで住む日本人にとって円はドルに対してかなり円安なのである。
 今日本はデフレと騒いでいる。3月30日、発表された消費者物価は2000年平均は前年度にくらべて0.8%減と最大の下落幅で、前年度に続き、2年続きの下落、政府のいう「デフレ」(持続的な物価下落)の状況が改めて鮮明になったと新聞は伝える。
庶民感覚でいえば、デフレ大歓迎である。物価が下がっていいではないか。日本の物価は高すぎる。日本を訪れた外国人客がホテル代の高いのに嘆いているではないか。電話料金も高い。パソコンの普及が遅いのもこのためである。
 広辞苑はデフレーションを次のように説明する。
 「通貨がその需要に比して過度に縮小すること。通貨価値が高くなり、物価は下落するが、企業の倒産、失業の増大などの社会不安を伴う」
 これまで日本は不況で内需拡大、消費増大が声高に言われていた。庶民は通貨価値が高くなったと感じていない。1万円銀行に預金して1年後の利子がたった1円と聞いてお金の価値が高くなったとは夢にも思わない。
 物価の下落は賛成である。倒産は好ましくないが、それもバブルの後遺症と思えば諦めもつく。2月の失業率は4.7%で1953年以降最悪だった前月にくらべ0.2ポイント低下し6ヶ月ぶりに改善している。
 デフレといわれてピーンとこないのは、日本の経済力にある。1999年末の日本の対外資産高は8300億ドルで世界最大の債権国である。国民の貯蓄高1400兆円、GDP(国内総生産)規模が513.7兆円、一人当たりに換算すると3万5715ドル、OECD加盟国中第三位である。
 日本は確かに豊かになった。それでも経済力と生活実感の間にギャップがある。そのギャップをうめるための価格破壊がデフレという形で起きたとすれば良いことだと思う。今の消費者は新鮮な商品やサービスを「より速く、より良く、より安く」もとめているのではないか(ニューズウイーク 日本語版4月11日号50ページより)。毎日新聞の「経済観測」(3月27日)で三連星氏が「デフレ征伐の名を借りてまた公的資金がでるようでは」と指摘しているが、案外的を射ているかもしれない。今回にかぎり、あわてずにしばらくの間様子を見守った方がよさそうな気がする。

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