今年の世界情勢をみる上で注目される選挙が二つある。一つはすでに行われた台湾の総統選挙。も一つが11月のアメリカの大統領選挙である。5月20日に独立派の民進党,陳水扁が台湾総統に就任する。世界は中台関係はどうなると、固唾を飲んで注視する。
今回の選挙では陳総統は若い有権者の圧倒的な支持得た。この若者たちは、対中関係よりも半世紀にわたる国民党政権下の腐敗,犯罪に対する怒りから一票を投じたようである。もちろん内政も大事だが,最大の課題は対中関係である。「絶対台湾の独立を認めない。あくまで中国との統一だ」といっている中国とどう向き合うかである。今回の台湾の住民の民意は民主化の推進であり,中国との距離を更に広げたともとれる。しかし,中国の本心はあくまでも平和裡に統一を果たそうと考えているであろう。
古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは「対立は調和をもたらす」といった。とすれば,独立派の総統とは対立が明確なだけに所期の目標に向けて何らかの調和を図れることできる相手といっていいだろう。
中曽根康弘元首相がアジア調査会(1月27日)での講演で示唆に富む発言をしている。「中国は台湾については武力行使というようなことはいわない。平和統一に徹する。そいう一貫した態度をはっきり堅持してだしたらどうか。台湾の人心を得なくして統合などできるわけがない。
台湾側も国連加盟とか独立するとかそういう北京を刺激,挑発するようなことは慎む。「両岸政治」で両国の関係を打開することを継続して誠意をもってやっていく。中国でも言っている「三通政策」を台湾は受け入れたらどうか。通信、通商、通航これを受けたらどうか。両岸政治で話し合っているうちに中身を決めればいいのです。
陳総統は貧農の生まれで,投獄の経験もあり、台北市長もやっており、49歳の若さとはいえ、それなりの辛酸をなめている。世界の平和のために中国との関係を緊張緩和の方向へ持っていくのは間違いあるまい。ここ当分,表面上は中台関係は波だつことが起きるであろうが本質的には統一に向けて歩みは遅くとも前進していくものとみる。
陳総統の登場は,新たな緊張をもたらすよりもむしろ好転すると見るほうが理にかなっていると思う。