花ある風景(15)
並木 徹
一緒に仕事をしている芹沢和子さんから聞いたほのぼとした話。「縁はまことに異なものよ」と芹沢さんはいささか興奮気味である。
新郎 39歳 公務員。 新婦 38歳 元劇団制作部員。この二人の結婚披露宴がこのほど、水戸市であった。仲人はなく、友人、知人が150人ほど集まった。
会は新婦の叔母の「祝い酒」で始まった。玄人はだしのその歌に座はたちまちなごやかになった。
二人の出会いはEメール。何ヶ月かのメール交換の末、一度会おうということになり、初対面が昨年の10月。それから五ヶ月足らずで結ばれたのだからスピード結婚といってよい。会った瞬間、二人ともこの人だときめたという。
新郎は仕事が出来てやさしそうな人、これが新婦が選んだ一番の理由。気さくで、一緒にいて疲れないというのが新郎が選んだ理由である。新婦は芹沢さんと劇団で一緒だったこともあって、時折銀座の事務所をたずねてきたが、礼儀正しく明るい女性という印象であった。
いとこが面白いエピソードを披露した。「新婦は甥や姪からB(ビ−)という愛称で呼ばれている。それは親以上に彼らの面倒をよく見たので、本当の母親が母Aで新婦が母Bというわけです」また新聞社に勤める人が「芝居の制作に携わっていてもなかなか一筋縄でいかない裏方や役者の面倒見が良く、長期にわたる地方巡業なども安心してまかせられる貴重な存在だった」と挨拶した。両家の母親たちはお客さんたちに挨拶してまわりながら「うちの子はわがままだから・・・」と心配そうであった。39歳と38歳のカップルも母親からみればいつまでたっても子供である。二人の前途に祝福あれと祈るばかりである。