2006年(平成18年)12月20日号

No.345

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追悼録(261)

「寒風とサラリと詩人逝きにけり」悠々

 詩人、坂村真民さんの訃報を新聞で知った。(12月11日死去。享年97才)ある時期、「般若心経」の写経にこった。写経よりも「般若心経」(小学館)を解説した阿部慈園さんの文章に惹かれた。(むけいげこ)の解説の中に坂村真民さんの「サラリ」と題する詩が紹介されたあった。
    サラリと/流してゆかん/川の如くに
    サラリと/忘れてゆかん/風の如くに
    サラリと/生きてゆかん/雲の如くに
雷に打たれたような衝撃を受けた。このような心境になるまでには時間が掛かる。それにしても凄い詩である。解説者は「人は毎日の生活の中で、いやなこと、つらいことがあるものだが、作者はそれを『サラリと流してゆかん』と、淡々と歌う。それは”心のわだかまり””とらわれ”から解放される境地であり、まさに『般若心経』が説くところである」という。
(しんむけいげ)には「サラリサラリ」の坂村さんの詩がある。
    すべて/サラリサラリとゆこう/水が流れてゆくように/木の葉が落ちて
    ゆくように/こだわりなく/一切をまかせて/サラリサラリと/生きてゆこう
坂村真民さんは明治42年1月生まれ。仏教の信仰が厚く名誉矢利益を求めない生き方を貫き、作品にも独自の世界を確立、平易な言葉で深い境地を歌っているとある。上記二つの詩は詩集「朴」に収められている。
 警察庁の調べによると昨今街頭での暴行事件が増えている。今年の件数(1月から11月まで)は1万7271件で昨年同期比16.2パーセント増加している。「些細なことでキレやすい人間が増えたのだろうか」といっている。坂村さんが歌うようにサラリと流す訳にはいかないのである。ともかく「般若心経」でもそらんじるまで読ませてはどうか。

(柳 路夫)

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