2005年(平成17年)3月10日号

No.281

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(125)

「遺失物」

芹澤 かずこ

 最近、気に入っていた黄色い財布を無くした。落したとは思えないし、掏られたという状況も考え難い。混雑した電車に二駅乗ったので、掏られた可能性も無くは無いが、柄の長いバックを下げて持っていたので、バックの口はひざの辺り。余ほどの手長猿か、座っている人でなければバックの口に手は届かないし、故意に引っ張られた覚えもない。
 であるから、二駅目で乗り換えた時に財布が無いことに気が付いたが、てっきり職場に忘れて来たとしか思わなかった。しかしながら、翌朝に丹念に探したけれど見つからない。
 前日、お昼に店屋物を取って、その代金を支払ったところまでは財布の在り処がハッキリしているが、その先のことが定かではない。バックに戻したつもりで、その辺りに置いたままだったのか、机の下に棚を作ってバックを乗せているので、戻した時に入らずに下へ落ちたのか。いずれにしても職場説を唱えれば、人を疑うことになってしまう。
 帰る時にバックの中味を点検しなかったのは、なにより自分の落ち度ではあるし、大した金額ではないので諦めるのは吝かではないが、心配なのは診察券と一緒に入れてあったカード式の健康保険証。悪用される恐れもあると聞いていたので、早速に遺失物届を最寄りの交番に出しに行った。10年以上も前、渋谷駅で肩にかけていたショルダーバックから財布を掏られたことがあったが、その時は金目のものはすっかり抜かれていたが財布だけは2,3日で戻ってきた。けれど今回はもう2週間になるが何の音沙汰も無い。



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