1998年(平成10年)4月20日(旬刊)

No.37

銀座一丁目新聞

 

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ゴン太の日記帳 (3)

目黒 ゴン太

  「車内での携帯電話の御使用は、他のお客様の迷惑となりますので、ご遠慮下さい。」電車に乗っていると、必ずと言ってうよい程、耳にするアナウンスである。これを聞いて、ちゃんと守って使わない人、全く気にせず使う人、様々にいるが、それ程までに携帯電話を所持している人が多いということは事実としてある。少し前までは、ほんの一部の人々の物だったのに、驚くべき普及の速さである。

 当初、別に必要ないだろうと高をくくっていたのだが、周りの友人が持ち始めるにつれて、いつの間にか流されて、自分も購入してしまって、やはり、使ってみると相当便利な代物である。その内に、いつも肌身離さずに持ち歩くようになった。

 しかし、先日、その愛用していた携帯を、どこかに落としてしまった。そして、それは想像していた以上に、自分にとって大変な出来事となってしまった。買ったものをなくしてしまったという当たり前のショックだけでは済まなかったのである。例えば、外出していて、どこかを一人で歩いているなど、どこか寂しさを感じたりする。携帯を持っていた時は、なぜか一人でいても、一人と感じていなかったのかもしれない。それは、いつでも電話をすれば、相手が向こうにいて、その相手は、自分を知っているから、他愛もない会話がすぐできる。そんな風に思って安心していた様に思えてきたのだ。要するに自分は、知らずのうち携帯を、孤独をまぎらわすための道具として使っていたのだ。

 何とも馬鹿馬鹿しいことだが、携帯は外出前の一種の「装備」の一つになっていた気がする。所持する前に有った、一人で歩きながら、様々なものに思考をめぐらす余裕を失ってしまっていた様にも思えるし、もうすこし自分と携帯の距離を置くべきだったと思った。

 

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