2004年(平成16年)11月10日号

No.269

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お耳を拝借(113)

「音読」

芹澤 かずこ

 黙読するよりも、音読する方がより右脳を刺激して脳を鍛え若返らせると聞いて、家で新聞や本を読む時に声を出すようにしてみた。ところが、ふと気が付くといつの間にか黙読になってしまっている。何回試みても同じ結果になる。
 音読の最初の記憶としては小学生の頃、両手をいっぱいに伸ばして本を広げ、声を揃えて読んだ国語の教科書。中高生になっても授業中に先生に名指しされたり、順番に席を立って古文や英文の音読をしたし、その後は子供や孫が小さい時に、よく絵本や童話を読み聞かせていた。
 声を出して文章を読むのは別にそう難しいことではないのに、相手が存在しないと何故か声が続かない。例え途中まででもと、なるべく声を出すように努めてはいるが、片道一時間弱の通勤の車中での読書はそうはいかない。毎日の日課のようなこの読書タイムがすっかり黙読の習慣になってしまっている。
 そこで書店で見つけた「脳を鍛える大人の音読ドリル」なる本を買ってきた。名作の音読と漢字の書き取りが60日間できるようになっている。ページを繰ってみてハハンと思った。名作には違いないが、その冒頭の部分の十数行のみである。2回繰り返して読んでも二分とかからない。要するに毎日少しでも声を出して読む習慣をつける、ということなのだろう。それなら何もドリルでなくても本の続きでもいい訳だけれど、例え冒頭だけでも日々違う文章に触れるのも悪くない。それに漢字の書き取りなんて何年、否、何十年振りだろう。なんだか、夏休みの宿題みたいで楽しくなって来た。



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