2001年(平成13年)8月10日号

No.152

銀座一丁目新聞

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花ある風景(66)

 並木 徹

 古希を過ぎて思うのは、体力の衰えと何事にもものぐさくなることである。
 ゴルフをしてみるとよくわかる。ドライバーの飛距離が確実に落ちる。一、二箇所で大たたきする。従って100を切れなくなる。まことに面白くない。健康のために良いといいながら、ゴルフ場に足が進まない。それでも8月はゴルフの予定は4回もある。
 外出するのがなんとなく億劫になる。家でゴロゴロすることになる。粗大ゴミ扱いされるのも当然である。暇だということは、やりきれないもので、気持ちがおのずとイライラしてくる。「老人はわがままでガンコ」ということになるのがよくわかる。本でも読めばいいというが、集中力がない。すぐ飽きる。仕方なく二、三冊の本を同時に読み始めることになる。いまは渡辺淳一の『秘すれば花』、牟田口義郎の『物語 中東の歴史』、チャーチルの『第2次大戦回顧録』を読んでいる。できるだけ、映画をみたり、講演を聴いたりするようにしているものの気に入らなければ、出かけたくなくなってしまう。
 そこでいつのまにか「あわてない」「ゆっくり」「のんびり」をモットーにして物事に対処することになった。これはかなり有効である。たとえば、発車まぎわの電車には乗らない。駆け足して乗っても息をきらすだけである。悠然として歩めば、おのずと大人の風格がでる。
 つぎに、判断することがあれば、大局からする。あとは自然の流れにまかせ、けして無理をしない。
 趣味は多いほどよいと思う。音楽、映画、俳句、書く事、いずれも楽しい。あと絵を書きたいが、まだ果たせない。

  恋多き千々と乱れる夏の星   悠々

 昨今、電車で、若者に席を譲られる事が多くなった。まことに嬉しい。一面さびしい。若いときには、どんな時にも座るな、暑い時でも日陰に入るな、やせ我慢をせよと教えられた。それをかたくなに通してきたつもりである。

 介護に効く薬は「やさしさ」といった人がいるが、介護だけでなくすべてに「やさしさ」がほしい。人と人の潤滑油になる。世の中が明るくなる。

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