道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第105回決着!!  

1月の兼題は 「初夢」、他、自由でした。

 

子の行きし地にもありしか春夕焼          明法
 【評】「ありしか」が何とも切ない。「春夕焼」で、読者も救われます。


 
新年会グラスの底のこの孤独            韶一
 【評】語っても何かしら伝わらない思い。「グラスの底」がなかなか見事。


 
刻々と未来が攻め来る初日の出          竹風
 【評】「刻々と未来攻め来る初日の出」


 


【秀 逸】

初夢のにらいかないの儒艮かな          章司

 【評】ジュゴンは結構コワイ顔ですが、この初夢では人魚姫のようだったでしょうか?

知らされていたより元気小春空          方江

 【評】「小春空」でほっとした思いと共に、それまで案じていた深さが伝わってきます。

冬の虹はつかを吉と滝詣で            あゆ

 【評】雨後の寒さの中での滝詣で。凛とした一句です。

独り言いいつつくらし春朧           意久子

 【評】何かしら寂しさの漂う中七までを、「春朧」でふんわりと、現在の在り様を肯う一句とされました。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


  初夢や舞扇だけ見えてをり               明法
  蔵の町日差しのこぼれに梅の花

  初夢やしおり挟みし文庫本               天花
  石像の苔の乾きや寒さ中
○春隣り川に向かいて少女像
     「春隣」で、まだ幼さを残した活き活きとした少女像が想像されます。

○初夢や遠き昭和の大家族                満子
○凍空や月をかかげて浅間顕つ
  藩校や花柊のほろと散る
     いい句材ですが、こういう句の場合、「ほろと散る」と書いてしまわずに、「花柊」だけで我慢をして、後は想像させるように。季語の場合、あまり修飾、解説せずにその力(想像させる力)を信じて使うことです。

  廃屋を被いかくすや蔦もみじ              美原子
○人波に逆行するや寒の入
     〈人波に逆らいてゆく寒の入〉でしょうか。
○初夢に算盤はいて坂すべる
     楽しい一句でした。

  目覚むれば初夢のなく子らの声            みどり
○眼裏に遠き日浮かぶ賀状あり
  梅咲けど内なる不安消えやらず
     「けど」は、多く語る言葉です。この句のような場合、「けど」を読むと、結びが安易に予想されます。逆に書くことも試してみてください。
     〈何やらに内なる不安梅咲けど〉


○貧困も戦争もなし初夢譚                 弘子
     現実であったらどんなにか…。
  初場所や肩で息せる勝名乗り
○寒垢離巫女の乳房の顕わるる
     〈寒垢離や〉と。

○三が日どの夜の夢も国憂う               有楽
○凍風や有樂町の昔今
     「有楽町の今昔」と。
  乱世や北は吹雪で南地震(なゐ)

○初夢やパティ・ペイジの嘘は罪             亀山龍子
     昔、この歌で英語の勉強をしたことがあります。「嘘は罪」と囲みましょう。
  冬晴や九十歳のスクワット
○春隣赤子に長き生命線

○寶舟母に聴力もどる夢                  章司
     作者の優しさが伝わります。
  初恋の人とペア碁や初夢に
     いささか「初」並び。

  初夢や兄とかけつこたんぼ道              紫微
○疎開中の姉訪ふ温海(あつみ)雪しまき
     温海は山形県の日本海に面した町。雪の白さ激しさに、戦時の厳しさと不安が重なります。いつまでも忘れられない景でしょう。
○薺粥昭和の御代も終りたり
     私も〈七草の粥の緑も昭和忌ぞ〉と。

  初夢は真白き庭に鳥の跡                 瞳夢
  防空壕車庫に変身冬の旅
     この通りだったのでしょうが、「冬の旅」を推敲してみて下さい。
○山茶花の何時もどこかが散っている
     「どこかが」が巧みでした。

  初夢の遙かにつづく絹の道                二穂
  日脚伸ぶ池に黒鳥飛来して
○今は昔プリントゴッコの年賀状
     そういえば、ありましたね。本当に「今は昔」です。

○初夢の定かなりしも吉とせり               意久子
     出来れば「定かなりしを」と。
○冬晴れや天寿全う義姉(あね)逝きぬ
     見事!の心。
       
○初夢や母のひざ借る耳掃除               のぼる
  誰れそれの安否気になる年賀状
○明星を抱きて三日月寒の夜
     蒼深い夜空の美しい景。

○バス停で娘待つ母雪催い                  韶一
  初夢の句読点なき文届く

○初夢や亡き父兄と地酒くむ                 方江
○一夜では語り尽くせぬぼたん鍋

  初夢に枕敲きし日の遠く                   あゆ
     何か「枕を敲く」という風習があるのでしょうか?
  師の句碑や岬の風に懐手
     師の句碑が懐手をしているようなのか?でなければ、師の句碑に会うのに懐手はいささか不精。
 
  初夢や目覚めに大吉つかみかね              高風
     「掴みそこね」た、と書く方が楽しい。「目覚め」は必要なし。
     〈初夢や大吉掴みそこねたり〉と。

○初夢や青春の日々浮かび消え
○成人の孫改まる初電話

○去年今年鐘つく人も聞く人も                 照子
○おだやかな初日の中に生かされて
     〈おだやかや〉と。
○初夢に逢ひたる母の若かりし

○初夢や富士山頂を制しけり                  竹風
     「や」「けり」を重ねぬように。「たり」でしょうか。
○小正月君少し酔い饒舌に 



○初夢や42・195キロ走りけり                 悠々