道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第104回決着!!  

12月の兼題は 「おでん」、他、自由でした。



 新年のお祝いを飛ばして、寒中お見舞いを申し上げることになりました。
 「暖冬予報」だったのにと、気象予報士の話を聞いていましたら、トータルすると やはり「暖冬」なのだそうです。この寒さが過ぎると来週は春のような陽気だとか。 あれもこれも極端なようです。
 気を引き締めて、よくよく眺め、よくよく思案が必要な年になりそうです。
 ご自愛を切に。

                        谷子
 

 

なによりも夫を大事に敬老日           龍子
 【評】助監督、スタッフ、衣装のままの脇役やエキストラ…。
口の重い主人…。「撮影所前の」で、客の会話まで想像させます。
御見事でした。

 
なに可笑し少女三人ラ・フランス         あゆ
 【評】「蛸の足」が誠に結構。

 
戸袋に狼の護符敬老日             章司
 【評】御慰めの言葉もありません。北風から守るようにしっかりと抱く遺影。
いつしか抱き合い、母に守られている思いでしょうか。
見送られたことは最大の孝行。どうか、お辛さを力とされますように。
 


【秀 逸】

関取の横に座りておでん酒               韶一

 【評】 十両以上がお関取。コップ酒に「まあ一杯」と差したら、「ごっつあんです」と言ったでしょうか。

おでん一つ眺めて待ちおり来る年を     さかもとひろし

 【評】静かな年越し。こういう年越しもなかなかに味があります。

石蕗咲くや日向岬の桂状岩           満子

 【評】しっかりと書かれています。石蕗の花の配し方お上手でした。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


  湯気の中親子でつつくおでんかな            明法
○夕日浴び一人ぽつちが群れる鴨
○まなうらも焔たつかな冬入日

○命まであたためられるおでんかな            方江
  湯たんぽを自由自在に抱きしめて
   確かに人間を抱くよりも自由自在でしょうが、あの湯たんぽの感覚と自由自在はいま一つ伝わり難いです。
  こころ秘め逢えぬ想いの冬苺
   「逢えぬ想い」だけで、上五は必要なし。

○おでん鍋湯気にとけこむ話かな             高風
  おでん鍋仕分けよろしき鍋奉行
   おでんは長く煮るので、鍋奉行の出番は少ない感じがします。
○手袋に残るあの日の握手かな    

○ちゃん付けで呼び合ふ初老おでん鍋           照子
○がんばらないと云いつつ老の師走かな 
   今年は…と言いつつ、ついつい何もかも。まだまだお元気!
○息災に動きし手足冬至風呂
   しみじみとイイですね。自愛の姿。

  憂国の弁舌今もちゃんちゃんこ            あゆ
○参道の弁慶像も煤払

○振り返る母の病舎や冬の星               美沙
○冬晴れや母の真白き骨を拾う
   「を」を削ってください。

○身の丈に合わす贅沢おでん鍋              竹風
  首すくめ師走の屋台コップ酒
○噛み合わぬ会話も楽し年忘れ

○丸イスの腰の痛みとおでん酒              韶一
  靴紐を結び給うや雪の朝

  先ず課長控えし部下やおでん鍋             瞳夢
  恋文をおきわすれたりや冬の蝶
   〈恋文を置き忘れしや冬の蝶〉
  雪模みのむし隠遁決めにけり
   「雪模様」「雪催」でしょうか?

○見通しの立たぬ就活おでん酒             亀山龍子
  湯婆を抱え湯治場長廊下
○ハンター邸固く閉ざして落葉かな

○おでん酒温まってより論深し            さかもとひろし
  おでん囲む輪にきらめく眼異国人

○永らえて 携える手の 温かく             河彦
○銀杏の葉 掃き清められ 朝の道
○鍋いっぱい おでん貰った 居酒屋いずこ 
   学生時代の思い出の居酒屋でしょうか。

○三日目のおでん大根父の味               みどり
  ふたしかな夜はフウフウ生姜酒
   面白い味がありますが、「ふたしかな夜」がいささか言葉が浮遊します。
  願わくは日々おだやかな実千両
   〈願わくは日々おだやかに〉でしょう。

  杯重ねお多福顔のおでん鍋               弘子
○初校出る残る暦は一枚に
   この「やれやれ」「さてと」の気分、誠によく解ります。
  空動く富士山頂に冬夕日

○おでん煮え 柱時計が九時を打つ            美原子
   帰りの遅い家人…でしょうか。
  行き過ぎて ふりかえり見る 帰り花
○金柑の届かぬ先は鳥の分

○三世代で囲む夕餉のおでんかな             満子
○急かす親児は山茶花を拾ひ行く

○コンビにのおでんと決めて留守番を           有楽
  北吹けば甲州街道の寺の鐘
○一筋の雲に伴して枯野ゆく
   「供して」がいいですね。

○帰り待つおでん大鍋ぐつぐつと             意久子
  すれちがう男性(ひと)の会釈や師走入り
○人生のプラスアルファ落花生食う
   何やら居直ったような、楽しんでいるような。その姿が魅力的です。

○炭窯の煙の青き真昼どき                二穂
○仕事終う顔を並べておでん酒
   「終えし」でしょう。
○湯豆腐のありてひと日のありがたし

○エキストラ三三五五やおでん酒             章司
○ころの色ころの歯ざはりおでん酒

  おでん酒友と語るは逝きし友              紫微
   〈逝きし友のこと語りおりおでん酒〉
  集ひたる弊衣破帽の年忘
○八十路越え来て今日の初山河
   〈八十路坂越え来て今日の初山河〉

○おでんやに同じ顔あり昨日今日             のぼる
○おでんやの湯気の白かり喜寿祝
  おでん酒デフレの世間ぼやきをり
   〈デフレの話しており熱きおでん酒〉

○おでん煮る以心伝心旅近し               悠々