道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第103回決着!!  

11月の兼題は 「枯葉」、他、自由でした。



 年頭から遅延のお詫びをせねばなりません。ただただ御許しを。
 今日は(1月13日)福岡はすっぽりと雪景色でした。おかげで、講座休講。ようやくパソコンの前に座っています(胃痙攣と右背筋痛ながら)。
秋から冬のお作品に、怠惰を責められる思いです。

                        谷子
 

 

鉦叩真昼の黙を打ちにけり           満子
 【評】「枯葉」で「枯葉剤」が出てきたことに驚きつつ、うなりました。
「兵器の一つ」と書きながら、眼前(今、作者が居る景色の中で)枯葉が舞っています。
舞い散る枯葉が、この悪魔の兵器の無惨さをよく伝えてきます。

 
渡り鳥ものをわするることおほし        章司
 【評】常夏の国ハワイ。なればこその一句の面白さです。シェルの形のチョコレートでしょうか。
味のある句でした。

 
しかるべく胸におさめて秋の蜘蛛        みどり
 【評】「枯葉に」が少し気になりますが、多分昼の歌舞伎町を抜けて行くのでしょう。
寒々とした景色と切ない気持が重なります。

 


【秀 逸】

甚兵衛鮫ゆっくり向き変へ冬初め            龍子

 【評】楽しく、且つしっかりと「冬初め」の感覚を掴まえています。

出勤の寒さを残しバス発てる              明法

 【評】バスが発った後の寒さが身に沁みます。

枯葉舞うハローワークへ通う日々            竹風

 【評】舞う「枯葉」が、頼りない思いを更に濃くします。

一枚の枯葉しおりに京の旅               萬坊

 【評】何処で拾った枯葉でしょうか。冬の京都もなかなかよきものです。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


○歌舞伎町十一月の混沌に                   萬坊
  ポインセチア白き門のダルメシアン

○鐘楼は銀杏明りの中にかな                  天花
  風遊ぶ社に真っ赤な冬落葉

  枯葉散る越路吹雪のメロデイが                明法

○枯葉散るかの世現し世飛び超えて

  駄馬なるもゆめなるまじき濡落葉                紫微
○壷中の天夢見つひとり温め酒
○初春や老いに厳しき候に入る

○公園の見上ぐる枯葉雲のゆく                  意久子
  掌をあわすことの接点初時雨
   「ことの接点」が解り難いです。
○郵便の届かぬ日のあり冬初め


○枯葉積みて幾千年や神の山                   二穂
○花八つ手うかびてみゆる夜の雨
   〈夜の雨うかびて見ゆる花八つ手〉
○猿のごと梢を渡り枝を打つ
   活き活きとした枝打の名人芸。

○或る朝は落ち葉掃かれおり伊井の墓(世田谷豪徳寺)   有楽
   〈或る朝は落葉掃かれし井伊の墓〉
  冬近しシベリアの風波止場鳴る
   〈シベリアの風に波止鳴る冬はじめ〉
○ななかまど朱かなしきや五稜郭
   〈ななかまどの朱かなしきや五稜郭〉

  枯葉散る這うもののあり胸のうち                みどり
   「這うもの」がいささか生しい感じがします。
  どこからか枯葉流れて友の背に
○公園のベンチに二人枯葉積む

○野良猫の威風堂々枯葉径                    弘子
   「威風堂々」の曲がきこえそうですね。
  胡桃割る烏シートン動物記
○SPの音のゆらめき薪暖炉
   湯布院の亀の井別荘で、主人の中谷氏が薔薇のレコード針で
SPを聞かせてくださったことがあります。


○路地奥へ花運ぶ人銀座秋                    美原子
○病む母の髪とかし冬の山
   〈病む母の髪解いており冬の山〉

○枯葉ふむ母子揃いのシャツを着て               方江
○枯葉踏み音を楽しむ影ふたつ
  枯葉降る傾斜ゆるき滑り台
   〈傾斜の〉

  ひらひらと舞ひて舗道の枯葉かな                のぼる
○小春日や会話の弾む喜寿の宴
○喜寿祝防寒シャツを贈らるる
   おめでとう存じます。

  蟷螂の落武者に似てよろよろと                 竹風
○生き残り懸けて刷り屋の夜なべかな

○枯葉舞い 時と時間が すれ違う                  河彦
  小面に 枯葉散らして 燗の酒
○枯葉踏む 踏まれし跡に 従いて
   黙ってついて行く静かな時間。

○靴音や枯葉の走る石畳                      満子
  刈田道三三五五と下校の児
○鉄橋の一両電車天高し
   すっきりとした一句です。

○雀発つ金の枯葉をつと銜へ                    章司
○大學の空をす走る枯葉かな

  枯葉踏む夜回りしたのは昔のこと                 詔一
   この「夜回り」は、記者としての仕事ですね。
○木枯しや夕餉の音を耳に留め
  冬めくや膝抱けるほどのダイエツト

  兄ちゃんの影追ひかけて枯野道                 龍子
  秋風や赤き膝掛け人力車


○枯葉散る閉ぢしホテルの時計台                 あゆ

  無人駅通過電車に 舞う枯れ葉                 瞳夢
○秋麗ら月の沙漠の忘れ貝(御宿吟行のときの句です)
○いざ酌まん久闊を叙す新走り

  落葉焚き失せて残るや童歌                    高風
○一枚の枯葉に偲ぶシャンゼリゼ   
○マジシャンのカードの如く散る落葉 

○枯葉踏むしんと静まる空の色                   照子
  無造作に音なく散るや寺紅葉    
○単線の路肩に光る芒かな 

  マスク顔 忙しげに 枯葉踏む                   悠々