道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第102回決着!!  

10月の兼題は 「渡り鳥」、他、自由でした。



 先回の「敬老の日」は皆さん苦労されたようでした。
今回の「渡り鳥」も、イメージが固定するので、難しかったようですね。「渡り鳥」とするか、「鳥渡る」とするかで、随分とイメージが違ってきます。そこらを学んで下さい。
                        谷子
 

 

鉦叩真昼の黙を打ちにけり           満子
 【評】秋の深さが伝わります。「真昼の黙を打ちにけり」お上手!

 
渡り鳥ものをわするることおほし        章司
 【評】忘れずに渡ってくる鳥たち。見上げる人間。何やら身につまされます。
 
しかるべく胸におさめて秋の蜘蛛        みどり
 【評】どのようなことを胸に収めたのか。
 あくが強くなり過ぎなかったのは「秋の蜘蛛」だからです。
 


【秀 逸】

婚の日の空高々と鳥渡る                 満子

奉納の酒樽紅葉かつ散りぬ           天花

 【評】満子句は伸びやかな祝句。
    天花句は神社の静かな佇まいとよき空気が伝わります。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


○登り来し城址は秋の風ばかり          満子
   三句共大変結構でした。

○かのひとの遙かになりぬ鳥渡る          二穂
   年々歳々…の思い。でも、渡り鳥を見上げる季節になると、浮かぶ思い。
  絹雲の流れゆくそら旅の空
   中七も「空」と漢字で。
○柿熟れて小鳥あつまるきのう今日
   小鳥の賑わいが聞こえるようです。

○退院す九十九島に鳥渡る            さかもと ひろし
   〈退院す九十九島に鳥渡り〉と。
○軍艦の往きし佐世保湾鳥雲に
   軍艦・往きし、とありますから、「湾」は削ってよろしいです。
  禁漁区を楽園と化して鳥渡る

○旅芝居のぼりはたはた渡り鳥          萬坊
   「旅芝居の幟」と。上五に執し過ぎるよりも、中七での「切れ」を考えた方がよろしいです。
  切符のむ自動改札渡り鳥
○黙りの原爆ドーム小鳥来る

○お母さんママ母おふくろ秋ともし         韶一
  友逝きてその朝ふいに小鳥来る
   「ふいに」を、別の表現で。
○喪服着る機会のふえて秋深し

  好漢となる長城を鳥渡る             紫微
   「好漢となる」で切れるのでしょうか?
○烏群るる時雨心地の京都御所
   「烏群る」でよろしいです。
  燈火親し汗牛充棟老いの身に
   誠に誠に。〈老いの身の汗牛充棟燈火親し〉

○鳥わたる湯加減のよき野天風呂        のぼる
   幸せを伝える句です。
○大花火ひらきて息をとめてをり
  暦繰り旅程書き込む今日の秋

○甲高くまた来るよねと渡り鳥           竹風
   〈子の声の「また来るよね」と鳥雲に〉では?
○蟷螂の落武者に似てよろよろと
○降る雨に惜しむ今宵の十三夜

  敵将をこぞり胴上げ鳥渡る            章司
○朝釣りの真鶴岬鵯渡る

○会えたら何から語ろう渡り鳥           意久子
   〈会えたなら〉と。
  百舌鳥鳴いて豆腐屋さん旅立てり
○精一パイいきたらよろし天高し
   その通りです!

  猫の秋 帰らぬ主 待って鳴く          河彦
○流鏑馬の 少年もいつか 恋をして
  渡り鳥 裕ちゃんも旭も 遠くなり

○ひょろひょろと波の如くに渡り鳥          瞳夢
  菊の酒長寿を祝いて集いけり
○秋深し一人もおらぬ山の寺
   〈誰(だあ)れもおらぬ〉。

○路線図に新しき駅渡り鳥             方江
  休耕田守って白いそば花
○ころころとどんぐり秋の真中に

  ネガティブもポジティブもいて渡り鳥       亀山龍子
○鳥渡る目指すは核の無き国か
○秋深し母の残り香黄楊の櫛

○万葉の島撮るレンズ鳥渡る            あゆ
○子別れの烏の声に一日暮る
○城趾の吾も過客か秋の蝉
   〈吾も過客よ〉でしょうか。

○夕日受け一羽後れて鳥渡る            高風
  鳥渡る北の便りを聞かまほし
  女衆法被鉢巻秋祭

  鳥渡る人間世界知らぬげに             照子
○灯火親し半世紀経し手紙かな 
  女神輿意気盛なる秋祭

○凛とした闇よりの声鶴渡る              明法
   〈凛々と闇よりの声〉。夜渡ってくるかどうか。雁は夜渡りますが。
○犬吠の光一すじ鳥渡る
  小春日の余りのごとき月上がる

○裸婦像に小鳥来ている浦の風           天花
○街川に魚跳ねてをり七五三

  雁渡る津軽海峡風白し                有楽
○ななかまど朱のかなしきや五稜郭
   〈ななかまどの朱のかなしけれ五稜郭〉
  マニフエストやがて列島吹雪くる
   その気配濃厚で…。

  ばらばらに行く先もめる渡り鳥            みどり
  白菜を切れば白さにこころ晴れ

  鳥渡る朝もやをわけ打瀬舟              弘子
  献杯や小体の店の秋灯
○喪服脱ぐぼんやりかすむ十三夜

○昇る陽にまがん五万羽ねぐら立つ           悠々
   壮大な一句です。