道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第97回決着!!  

5月の兼題は 「五月晴れ」、他、自由で した。



 五月には詩歌文学館賞贈賞と、選考評の為北上市に。山藤と桐の花の薄紫を堪能しました。帰って山口県長門市でのみすゞ顕彰俳句大会に。美祢線に乗って、ここでも樗の花の薄紫に感嘆の声を挙げました。気忙しい中、締切をすっかり遅らせた仕事もあって、毎日三時間か、細切れの一時間半睡眠が続いています。今日も目下4時47分、鴉が飛び交い始めました。「明け易し」を実感します。「季語」を実感するために起きているのではないのですが…。この時間帯、九月になると、「かなかな」が聞こえます。「ひぐらし」とは言い難いので頭をひねります。
今朝は少し温度が下がっていますが、日中は暑くなる予報。
 北九州は、入梅以後たいした雨も無く、いささか案じられます。
列島各地によって、それぞれの荒れ模様の様子、ご自愛下さい。
 

                         寺井 谷子
 

 

緑風にあてて原爆死者名簿                章司
  原爆死者名簿は、風を入れると同時に、毎年新たな死者の名が書き加えられます。これまで刻された名、そして書き加えられる名…。

 

五月晴れ伝説のロックじゃかじゃかじゃん         亀山龍子
  今回の龍子さんの作品は、何やら殻を破った感。最後の「じゃん」が、ロックの強さを伝えます。

 

ふと見れば土筆宇宙に向いており             有楽
  「土筆」とはよくも付けた名前。その形が指す先、見上げる先は宇宙を向いているというのは、遥かにも巨大なものと微細なものとの取り合わせとしても楽しい一句です。


 


【秀 逸】

杜若歳経て腰の据わりたる           二穂

苑樹みな手入れよろしき五月晴れ         のぼる

青春は齢にあらず柿若葉            照子 

パラッパパ農小屋よりジャズ西日さす     萬坊

二穂さんの句は、しっかりと花を付けた杜若が思われます。
のぼるさんの句は、苑の五月の広やかさが気分よく伝わります。
照子さんの句は、「柿若葉」で確定かどうかとも思いますが、あのかがやきと柔らかさは捨て難いと思います。
萬坊さんの句は、龍子さんのロックとの競演になりました。この句もオノマトペの妙。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


若やいで竹下通り梅雨晴れ間              二穂
朝靄に湯気纏いたる鹿生まれ

  朝日差す真紅のポピー風さやか             のぼる
庇借る無人の駅舎つばめの子

五月尽ザトウクジラの迷い込む              亀山龍子
噴水の終りを合図の別れかな

  窓窓にカーテンゆるる五月晴               あゆ
  街灯を青色に換へ夏に入る
椎咲くや里山一つ色変へて

コーヒーを淹れて一人の五月晴              意久子
  公園を進みゆきたり初夏の風
蕗煮付温かきまま頂戴す
    〈まだ温き蕗の煮付けを頂戴す〉

ジーンズの破れ堂々更衣                 高風
  山の端も川面も空も五月晴
三世代ガーデンパーティ五月晴

五月晴気球の上がる河川敷                照子
捨てかねて又仕舞ふ性更衣

  割りきって庭の植木と五月晴れ              有楽
    何をどう「割り切った」のか?
  雁渡る太湖ジャンクも連なりて


子どもらの逆上がりする五月晴れ            竹風
摩訶不思議堅き幹より新芽出づ
    誠に、誠に。
葉桜の風に吹かれてマタ二ティー
    「マタニティー」は「マタニティードレス」の略。ふわふわとした裾の拡がり。

  光る田の忽ち現れし五月晴れ               瞳夢
  婚荷出す筍飯のレシピ添え
    「婚荷」というのはどうも。「婚の荷」と。
    〈婚の荷に筍飯のレシピ添え〉
吊り橋の途絶える先や緑立つ

  五月晴れ雑草も咲かせゆったりと             方江
たんぽぽのような楽天家でいよう
    久々に「方江」流の一句でした。
追憶の「母の日」もあり乱反射
    いささか、苦い追憶でしょうか。
  
  のれん掛く細きかひなや五月晴れ             萬坊
風はらみゆるり寝かされ鯉のぼり
     
地鎮祭祝詞高らか五月晴                  紫微
白牡丹衰へつつも雨に耐へ
    下五を推敲、「切れ」の力を使って下されば、もっと強い一句になりましょう。
書淫後の机上二輪の山法師
    斯くあれば理想!と思いつつ、ひき散らかした机上を眺めております。

  さつき晴れ塗り替えてをり太鼓橋              天花
  のこぎりの湿りて梅雨の近きかな
  十薬や箒の跡は波模様

  はやり風邪払拭するかに五月晴れ             満子
醜草をしこしこ抜くや若葉寒
    草、若葉(寒)と植物重なりは避けてみましょう。
緑陰に幼の声の弾けをり

  五月晴れ今日の気持映すごと              さかもとひろし
    「気持ちを」と。
  葉桜に詩の行間辿りおる
    何の詩の行間なのか、たゆたう思いがもう一つ響いてきません。
  ジャガイモの花連なりて平安へ
    この「平安」は「平安朝」の方か、心や政治の「平安」か?

一枚の空めくるごと五月晴れ                 明法
    〈空一枚めくりたるごと五月晴れ〉
白日傘スプーンほどの欠伸して
    大口開けてのものでなく…。なかなかに床しい女性像。
泰山木咲けり大きな眼なり
    「眼なり」は、泰山木の花の姿でしょうか。そういわれると、そのようで。

  五月晴産児の指に朱のさせる                章司
    「産児」は出産のことなのか、生まれたばかりの子のことか?
    〈生れし嬰の指に朱の差す五月晴〉
五月晴意中の古書を手にしたり

  指先より憂きことの消え五月晴れ               みどり
清貧の師の庭おおう雪の下
鳴き交わす声ハイトーン夏ひばり

五月晴れ父と双子のベビーカー                弘子
  鎮まりし実梅の林雨きざす
核実験ダチュラの花崩ほれぬ

ペンキ屋のブルーのタオル五月晴れ             美原子
  ガラス拭きピカピカなりたてモンチロチョウ
    「ピカピカなりたて」は上五にも下五にもかかるのでしょうが…。
    〈ピカピカのガラスなりたてのモンシロチョウ〉の方が面白くなりましょう。
  初夏や太極拳をジジと孫

五月晴れ友のもてなし温かき                  悠々