道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第93回決着!!  

1月の兼題は 仕事始め」、他、自由でした



 「仕事始め」の作品は、楽しいものが目に付きました。
100年に一度という「未曾有」の不況ですが、元気な1年に致しましょう。


                         寺井 谷子
 

 

 

熱燗にしようと母の眼が迎え        有楽
 いいですねー。老い母と息子の幸せの図。

 
老いさぶや冬日に針の穴探す               瞳夢
 老いを感じるのは、このような日常の瑣事から。「老いさぶ」が絶妙です。

 
とにかくも今朝となりにけり門の松     正巳
 〈ともかくも今朝となりけり門の松〉として、戴きました。今日が明日になるだけなのに、何やらバタバタと。でも御蔭で一年の線を引いて、新たな思いで日々と向き合うことが出来るのですね。

 


【秀 逸】

制服の仕事始めか奈々子さん        意久子

  「奈々子さん」がどのような女性かは知らず、きっと制服の似合う気働きの利く、明るい美人!と思わせます。

 

工煙の真つ直ぐ仕事始めかな        あゆ

 気分のよき一句です。

 

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

気がつけば足向いており恵方道                    有楽
  雷雲が東京タワー襲いくる

  参拝の神田明神初仕事                         満子
   「初仕事」は?
まず母に寿ぎの初電話かな
寄り添ひてそぼ降る雨の浮き寝鳥

  八十路経てニュータイ・シャツに初仕事                紫微
去年逝きし師の賀状着く朝かな
   このようなこと、現実にあるのですよね。
   私の知ってる俳人も、枕もとに書き終えた賀状を積んでおられたということがありました。

初富士や親子三人の京参り

地下足袋の似合う青年初仕事                     天花
   きっとイナセな青年。初仕事の内容が想像出来ます。
レシートに抽選番号四温かな
   何となくおまけが付いたような幸せな感じ。
春隣里山にあるアスレチックス

  ポケットの拳骨堅く事務始                        萬坊
   何か耐えねばならぬことがあるのでしょうか?
  大手町群れて昼飯初仕事
初夢や七福神の舵を取る
   どこへ舵を切って…。「七福人拉致事件」ですね。

身ごもれる子と初戌や日燦燦                      章司
   生まれる前から、このように「孫俳句」を書きとめて下さい。
   何よりの贈り物になりましょう。
辞を低く融資頼めり初仕事
  パソコンのウィルス退治も初仕事

初仕事今朝くっきりと近江富士                      方江
冬晴れの畑に返す野菜屑
うすら日に桜冬芽の確とあり

  賀状手に廻る遠き日喜寿迎え                      意久子
レシビおきひねもすのたり春炬燵
   「レシピ」でしょうか。

  凛と一輪 仕事始めに 黄水仙                      河彦
  みゃーみゃーと 猫も帰省に 新幹線
   本来「帰省」は夏の季語です。これは歳末風景ですね。
   〈籠に猫鳴く歳晩の「のぞみ」車中〉

  挨拶もそこそこ仕事始めかな                       二穂
汗まみれ工場の仕事始めかな
一斉に紅梅咲けり坂の上

  双の手に顔にも力仕事初め                        明法
   〈双手(もろて)にも顔にも力仕事初め〉
花時計針はゆっくりと水ぬるむ
   〈花時計の針ゆっくりと水ぬるむ〉
  すいせん花トランペット群今起てり

  漢吊り女が捌く鮟鱇かな                          あゆ
若菜野の向こうを青い電車来る 

  引売りの道決り来て仕事始め                      亀山龍子
地震の冬棺を運ぶ体育館
   「体育館」に並ぶ棺の無惨さ。
湯気美しく七種粥の上出来に

きりきりと仕事始めや懐かしき                       瞳夢
  初みそら二つに分けた飛行雲

ことさらに初仕事なき八十路かな                     高風
丑年やスローライフをモットーに
  老人の集い鶴亀初謡

人寄せの後片付けや初仕事                        照子
   本当に!大変なんです。でも幸せな疲労感。
去年今年昭和もすでに遠き日に
  役者絵の初暦かけ華やげる
   曽我物でしょうか?「華やげる」は余分です。
   〈緋の色の濃き役者絵の初暦〉   

  パソコンの埃を払う初仕事                         走酔
越年の仕事始めとなりにけり
   我が家はいつもこの状態。
朝礼を省きし仕事始めかな
   いささか慌ただしい気配が…。

甲斐がいし仕事初めの朝の街                      竹風
   蕪雑な街も、この日ばかりは何かしら新鮮です。
平成の己丑の初明り
星と星結びて語る冬星座

  派遣切り仕事始めもなかろうに                      正己
春場所や新大関の不甲斐なさ 
   全く!でも安馬(ハルマフジの名前に慣れなくて)は本当に期待出来ます。
   きっとデッカクなるでしょう。

三代が集ひて祝ぎぬ雑煮膳                       のぼる
一礼し声を限りの寒稽古
  鄙の駅ひと一人居ず冬の星
   〈冬の星誰も居ない鄙の駅〉 

初仕事好きなセーター繕えり                       みどり
  白菜を割り陽に干しし日がかな
   下五?「日永」では季語が重なるし…。
  訃音きく万両ゆれてうつむきぬ

神妙に仕事始めの机拭く                          弘子
大鷹の獲物つかみし羽の音
寒菫丸腰ほどの武器はなし
   〈丸腰ほど強い武器なし寒菫〉  

熱燗や三年ぶりの時ほどく                        美原子
   何やらドラマチィックですね。
  古民家猫車押す異邦人
ミシン台冷たきに触れ仕事始め
   〈仕事始め触れて冷たきミシン台〉

  恥ずかしや席を譲り仕事始め                        悠々