道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第88回決着!!  

7月の兼題は 「雷」、他、自由でした



  遠雷に現身(うつしみ)細る隠し部屋    谷子

 

 昨夜の「三浦和義ロスにて自殺」のニュースには驚きました。それにしても長い時間が経っているのですね。そして今朝の「アメリカ、北朝鮮テロ支援国家封鎖解除」には、やはりと思いつつ、拉致被害者とその家族の方々にとって、もっと長い長い時間が…と思います。
 夕暮れが早くなりました。今パソコンを打っている部屋から、鱗雲が様々なピンク色に染まって、絞りの着物を見ているようです。昼前から座っての時間が終わろうとしています。と打っている内に、ピンク色が消えて、濃い灰色の鱗雲になりました。
 「時間」「時」…よき方向への時の重なりをと、祈っております。       (谷子)

 

銭湯の高き天井大西日           天花
   「大西日」によって、夕刻の混みあわない時間の銭湯の様子がありありと想像出来、がらんとした銭湯の天井に桶や湯の音が響きます。
 
遠雷や蕎麦切る手元見てをりぬ       亀山龍子
    何ということを言っている訳ではありませんが、手打ち蕎麦の仕上がりを見つつ在る時間が、遠雷とどこかで響き合って、静かに豊かな一句です。
 
ミサイルのニュース光れり雷雨の夜      有楽
   「ミサイル」という禍々しいニュース。電光ニュースであろうと、すぐ想定出来ます。激しい雷雨の夜の闇を流れる電光ニュースが、緊迫感を伝えます。



【秀 逸】

 厨辺のものの影浮く夏の月          満子

 

 一閃のあと三秒で落雷す          のぼる

 

 雷や宅配寿司を夫と食む         山野いぶき

 

 丑の日や 割った卵に 黄身二つ        あゆ

 

 雷雨過ぐ漁網いっそう匂ひけり        萬坊

 

     
 ※あゆさんの一句、「丑の日」でベストかどうか、あれこれと
   季語を入れ替えて見て下さい。もっとぴったりなものが
    見つかるかもしれません。
 

 

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

    雷鳴の轟きスパーク雨の来る                   竹風
           蝉しぐれ聴き入るエコのシンフォニー
                 蝉しぐれがエコ、ということでしょか。
   残されて生きる一人盆用意 
                 一人で用意する盆用意程切ないものはないでしょう。でも「生きる」の
              一語に、力を感じます。

   
    いかずちの閃光一瞬街現れる                   瞳夢
                 瞬時の景色、よく解ります。ただ、小説でも、詩でもよく描かれる景色と表現です。
           灯を恋て網戸に蝉のひと舞台
                 「ひと舞台」は感心出来ません。
   もの炊いて厨にひとり花火きく

    遠雷や棚経僧の未だ来ず                     意久子
           道のべの木槿の白や一夜明け
   梅雨晴間住宅展示場幟旗
                 「住宅展示の幟旗」でよろしいかと。

           遠雷に河原の水着消えにけり                   正巳
                 注意おさおさ怠りなく。
   夾竹桃校門閉まる音がして
                 〈校門閉まる音のして〉
   打ち水や身軽く塀に飛ぶ子猫

           夢失せし汗と涙の二十才(ハタチ)かな              高風
           遠雷をリズムと聞きし夢の中    
                 〈遠雷を夢に聞きいて目覚めしや〉
   雷鳴に思はず言葉失へり     


    一山を洗ひ浄めて雷雨去る                     照子
   人の世を怒り給ふやはたた神   
   青簾夜風やさしき円居かな 
                 一句一句、よき空気が感じられます。

    ひまわりの揃って右向く道を行く                  方江
           鮎の宿二階まで来る調理の香
                 「調理の香」を推敲。
   雷鳴や旅終る夜の空港に

    さようなら納骨の済み雷遠く                     みどり
                 「さようなら納骨の夜の遠き雷」
           願うより感謝あらたに夏の山
                 中七まで、いささか冗漫。
           闇見つめ祈りつつ待つ揚げ花火

           雷神は星雲の果て夜にしじま                    弘子
   大夕焼鳥居目指して入港す
   炎天やツアラツーストかく語りき

           万緑を逆さに映しヨガポーズ                    美原子
                 「映し」は目に映すのでしょうが、「見たる」でよいかと。
           蜘蛛の囲に花弁数片空中花
                 「空中花」を削りましょう。中七までで、宙に在る(蜘蛛の巣に懸っている)のは解ります。
                 「何処よりの何の花弁か蜘蛛の囲に」で。
   大雷雨小さき靴の落としもの

    大雷雨大興安の彼方より                      有楽
   雷鳴の木曽路をひとり急ぎけり
                 しっかりと句が揃っていました。

           雨上がり睡蓮開く一斉に                       二穂
   雷光の一瞬走り沈む街
           大夕焼け東に丸い虹ふた重
                 この通りの景色だったのでしょう。しかし、「大夕焼け」「丸い虹=円虹」それも
              二重虹と詰め込まれすぎて、感動が薄れます。

    雷鳴るや送迎バスの時刻表                     天花
           遠はたた男の料理講習会
                 「遠はたた」の語呂がいま一つです。

    どどんどん花道踏むや霹靂神                    明法
                 この霹靂神、どのような隈取りかと…。
   かの世から寄せくる波か流灯会
           底紅の咲くや吹ききし風のあり
                 悪くない句ですが、「咲くや・吹ききし」の間の気息がいささか詰まって感じられます。
                 「底紅の咲くやと風の吹ききたる」

    いかづちに幼な真顔になりにけり                   満子
           下校の児待つや団地の若葉風


           山越えの行く手遮る夏の霧                      のぼる
   夏草の繁るにまかせ旧家病む

    ふるさとの 虫に素肌は 愛されて                  河彦
   雷を 避けて長居の 酒の店
   美人が降りる 祇園山鉾 京都駅
                 本来「祇園山鉾」が上五でしょうか。
   
           蹴るボール跳ぬる飛沫や大雷雨                   章司
   横つ飛びにゴールキーパー雷雨中
   いかづちや眠れる猫の耳微動

    雷の後の静けさ猫戻る                         山野いぶき
   冷奴夫婦喧嘩は終わりにす

   神鳴や 何処に落つる 一喝か                     あゆ
   凌霄花 いつまで盛る 夕明かり   

           沙羅散りてかすかなる音仏の間                    亀山龍子
   トロ箱の蛸の目動く極暑かな
                 「酷暑・極暑・暑さ」で「かな」となると、どこか類想感が纏わります。

    病む人の瞳穏やか雷遠く                        さかもとひろし
   病室の窓閉めて聞く筑後の雷
                 二句共に静かな思いが伝わってきました。
           由布岳に遠雷東に太平洋      
 
    海に向く松みな緑たける夏                       よし子
                 このままで結構です。

           遠雷や網つくろふ手赤銅                        萬坊
                 句材はよろしいので「遠雷や網を繕う太き指」でも、あかがね色の大きな手、太い  
              指は想像出来ましょう。
    夜の雷上総下総安房統べる  (かづさしもふさあは)
                 なかなか勇壮広大な一句ですね。

           雷鳴の不気味さを増す鉄砲水                     悠々