道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第87回決着!!  

月の兼題は 「さくらんぼ」、他、自由でした



 長い長いお休み、唯々申し訳なくお詫び致します。
 7月7日(七夕)の日に、8時間の肺癌手術より無事退院した主人を迎え、やれやれとその数日前から痛んでいた腰痛対策に通っておりましたら、なにやらどうも、気づけば右下腹部からぐるりと凄まじい帯状疱疹発症。
 水泡が潰れる最中に、呻きつつBS「俳句王国」へ松山行き。戻ってより二週間のブロック注射通い…。痛みの為に食べられず、6キロ減りました。
 母の初盆、一周忌、全句集出版と済ませ、ようやく9月半ばに、又、「俳句王国」へ。なんと2ヶ月大半を横臥して過ごしました。
  何しろ長く腰かけたり立っていたり、重いものが持てないという状態が続き、パソコンの前に座ることが出来なかったので、この選句(深夜二、三日掛かります)が何より気に掛かりつつ、断念せざるを得ませんでした。本当に申し訳ないことです。
  まだ折々ぴりぴりと痛みが走ったり、一寸長く歩いたり階段を上ったりするとひどく痛んで横になっております。痛み止めを飲みつつ、今年いっぱいは…と思っております。それでもようやく、昨日は栗ご飯を作りました。台所での立仕事がこんなに響くとは思っていませんでした。主婦業のハードさを改めて自覚したことです。
  今年は「帯状疱疹」の当たり年のようで…とは、掛った内科と皮膚科のドクターの
 弁。先日は「ためしてガッテン」で、帯状疱疹特集があって、私は再放送を見ましたが、 あのケロイド状の三〇倍位の部位でしたから、入院せずに二ヶ月ならばマシな方かなどとおもったりしました。
  世に帯状疱疹体験者がこんなにおられるとは…というくらい、お手紙やらお電話やら頂きました。
  二度とはならない、という派と、何度もなる、という派があって、何にしても無理は禁物!なのでしょう。
  また、頑張り過ぎないように、頑張りましょう!!

 

 六月の作品、「さくらんぼ」という兼題に、愛らしい句が多く出ました。
小さい子を見て、つい微笑みを誘われるように、「さくらんぼ」も、作り手の
やさしさを誘うようです。
 章二さん、美原子さん、萬坊さんの「さくらんぼ」も結構でした。        (谷子)

 

    多分女の子。囀りに似て、何時までもおしゃべり…。かわいいですね。
    当り前の掛け算が、何かしら数え唄のようで、楽しい句です。
   どのような手紙か、誰からの手紙か、詮索するのは野暮ですが、「恋」とも言えぬような初々しさが思われるのは「さくらんぼ」の働きです。

【秀 逸】

生駒山近くに見えて青田風         正巳

誠に気持ちのいい風が吹くようです。

不如帰 何も言はずに 逝きし人       あゆ

切ない一句です。

郭公やまんずまんずの里言葉         弘子

楽しい一句です。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

  贈りての返事嬉しやさくらんぼ                  有楽
  バス停のひとに並んで立葵
    川床の夕灯想ひて橋渡る
      「ユカノユウベ、アカリオモイテ」と読むのでしょうか?

    レース編み指の先にはサクランボ                 意久子
  今日もまた雨かしらとて梅雨に入る
  梅雨晴れやコーヒーを淹れ紅をひく
     よき一日が始まりそうです。

    色満ちて朝日に競う桜桃                                 竹雄
  降る雨に卯の花白く匂いけり
    水彩の彩決めかねて額の花
         「水彩」「彩」と同じ字を重ねないようにしましょう。

    甘さうな 雫に朝の さくらんぼ                    あゆ
    まひまひや 浄水場に 輪をいくつ   

    さくらんぼ今年も実らず青い鉢                            正巳
      鉢植えのサクランボなのですね。
  水やれば頬をひと撫であまがえる 
       雨蛙も、結構色々な仕草を見せてくれます。

  待つことも幸せなりきさくらんぼ                   方江
    紫陽花の胸の高さに少女来る
         「紫陽花の」の「の」が意味不明にしています。
  その事は何もふれずに新茶くむ

  ナイターの白球糸引く右中間                             高風
       弟の死を悼み
  五月雨も三途の川も涙かな    
         逆縁の辛さは、親と子だけでなく、兄弟姉妹でも。お悔やみ申し上げます。
    さくらんぼ口に含みて遊びけり   

    すぃと吸うさくらんぼ食む赤き口                          照子
       悪くないのですが、「吸う」と「食む」を一句の中に一緒に使わないように、工夫してください。
      「吸う」だけで、可愛いさは伝わりましょう。
      〈赤き口すいと吸うてはさくらんぼ〉でも解ります。

  孫達の目に等分にさくらんぼ    
  点滴の何時終わるとも梅雨深し
      まだ、点滴に通ってますが、誠に気が急く時は長く感じます。「梅雨深し」が思いを伝えてきます。


  梅雨晴れや親子に賜る年金便                  瞳夢
  冥福を祈る花束梅雨深し
      事故現場の景かと。

    逢う宵は美味美幾重にさくらんぼ                            さかもとひろし
  白薔薇をマイセン焼きに傘寿の賀
    ジューンブライド花嫁の父の背の淋しき 
      「花嫁の父の背」だけで、勝負!を。「淋しき」は削って下さい。

  麦秋や嫁ぎ行く子を見送りぬ                             よし子

  実桜や城山にあるけもの道                    天花
  雨蛙バスを待つ間のストレッチ
      雨蛙に見られつつ…。蛙の目も、ストレッチと一緒に動いたりして。

    さくらんぼ口にふくんで嫁ばなし                           萬坊
    さくらんぼもろ手に受けて頬張りぬ
  銀皿のにいしいむうやさくらんぼ
      偶数で数えてあるところが、さくらんぼの二つくっついた感じを上手く現わしました。

    烏兎怱怱母在りし日のさくらんぼ                 紫微
  松島に比すや象潟梅雨に入る
      いささか理で書き過ぎの感あり。
    荒梅雨に行事取り止め車椅子

    さくらんぼ光の粒の儀仗兵                     のぼる
      頑張りすぎて、勇み足。「儀仗兵」とまで必要かどうか。
  老鶯の法華経と鳴く鄙の宿
  夕涼し出湯めぐりの手籠下げ

  ターシャ逝く  桜桃忌と日を 前後して              河彦
    桜桃忌  スーチーさんに 励まされ
      次の一句で、何故「桜桃忌」なのかが解りますが、この一句だけでは
      作者の中で結び付いた「桜桃忌」と「スーチーさん」が、読者の中では
      ??です。

  桜桃忌 はや六十三歳の 誕生日 

  さくらんぼ幼なじみはどうしてる                   山野いぶき
  今日もまた夫は残業遠蛙
  青梅雨や変哲も無い日曜日
      「息をするように」書かれていて、結構でした。

  湯の町のシャッター通り夏燕                    亀山 龍子
    供花を切る蜘蛛の囲に腰屈めをり

    かの佐藤錦も凡や狭庭なる                                             章司
      庭に佐藤錦を植えておられるのでしょうか。その佐藤錦も、狭庭に植えると
      凡な味になる…、というのか、わが庭の取れたてのさくらんぼの美味さは、佐
      藤錦も凡に思われる…というのか?

  さくらんぼおほかた鳥のほしいまま
  連弾の姉妹リボンやさくらんぼ
     愛らしさが溢れるような一句です。中七がいささかもたつきます。
     〈連弾のリボンの姉妹さくらんぼ〉

  奔放に玻璃の皿なるさくらんぼ                   満子
    神の白宿す泰山木の花
  白き腹見せて宙きる夏つばめ

  仲直りできるといいなさくらんぼ                   美原子
    名札書く青年の背に菖蒲咲く
  菖蒲園木札に墨の古風な名

    靖国のさくらんぼとやこのソース                   みどり
  臥す床の思いは海へ梅雨ゆうべ
    蝸牛このごろ見ぬとやな予感

    セピア色の記憶おめざめのさくらんぼ                弘子
    琵琶の実や廃屋覆わんばかりなり
      これは変換ミスかと。「枇杷」

  ころころと光こぼれてさくらんぼ                    二穂
  白き尾を垂れたるごとし半夏生
      「垂るるがごとく」
  いっせいに睡蓮開く雨上がり

  少年の直ぐな視線やさくらんぼう                   明法
      「さくらんぼ」でよろしいでしょう。
    背の鰭の光輝き夏木立
      〈人間に背鰭のありて夏木立〉ならば、逆に解る感じなのですが…。
  今海は光膨れて朱夏なるか

    さくらんぼあの初々しさ忘れじ候                    悠々
      〈あの初々しさ忘れまじく候(そろ)さくらんぼ〉