道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第86回決着!!  

5月の兼題は 「母の日」、他、自由でした



 

    切なさ限りない一句でした。
    政治家、国家公務員にこの一句を!
   なかなかにシビア!

【入 選】

母の日や良寛詞華集リボン掛け       章司

贈られる母上の佇まい、贈る子供の理解の深さが伝わります。

湯の宿に母と在りけり母の日は       満子

静かな母と娘のよき一日。両者のおだやかな年齢も伝わります。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

母の日や宅配便の大多忙               竹風
  野鳥啼く生演奏の茶摘かな
幾千の盃で乾杯鬱金香 
   
  故郷はいずれの邦か夏燕                高風
老の背をかすめ一閃夏燕    
母の日の母なる娘より愛の花  

母の日や朝採りの薔薇届きけり            照子
大欅ゆさゆさとゆれ夏来る     
朝一番すれ違ひしは夏つばめ 
    素直で元気な句が揃いました。いい空気の句。

甕の小さな揺らぎ目高浮く                瞳夢
  房総の海かぎろひて神眠る

親子して眠たくなりぬ母の日               方江
    下五は「母の日は」と。
こでまりや残る命を此処に住む
  毛筆の便りは太字五月尽

  母の日や好みのカバーの豆絞り          亀山龍子
    何のカバーなのか?
短夜や鼾ごうごう猫老いぬ
    犬も猫も結構鼾をかくのですね。我が家19歳から8歳の猫四匹。よく解ります。
    「短夜」が人間めいて面白い一句。
赤ん坊手足ばたばた夏来る

母の日もうつろな姉や何を観る             正巳
    切ない一句。
  せんまいを畑で作ると胸を張り
  換気扇野蒜の匂い吸い上げて

母の日や子らそれぞれに家を成し            紫微
    充足の母の日と言えましょう。
  猩猩の波の上舞ふ富貴草
  水澄みて白帆居並ぶ水芭蕉

母の日を 過ぎて介護の 母は逝き           河彦
    何とも申し上げる言葉も無く。毎年お辛い「母の日」でしょうが、
   「母の日」を過ぎてのご逝去なれば、その年まで感謝の言葉を
   贈れたとも…。
  母の日の 時間はずっと そのままに 

母の日に母誘ふ娘の旅の地図             のぼる
    いささかの疎外感とやさしく見守る眼差しと。
  空青し妻の手欲しき実梅もぎ
青年と往くや銀座の街薄暑

  母の日や野口英世の描く母                章司
  切通し星と散りたきははかかな
        

母の日や米とぐ音のしゃしゃしゃしゃしゃ         萬坊
  母の日や母の母よりぬか漬けを
たいやきの吐息ふくろに梅雨晴間 
    少し湿ったたい焼きの袋なれば、晴間より「走り梅雨」などと。

峡を翔び何を告げるやほととぎす             明法
  母の日の縄電車にて帰りたや
さざなみの伝えきし風明け易し

母の日や吾にメル友の嫁二人               あゆ
    お嫁さんお二人を「メル友」と呼べるお幸せ。
 「飛雪」なる滝の飛沫に青熊野    
    「滝の飛沫や」と。
水光り早苗田そろふ輪中かな 

母の日や父にすまなげに子らは来る           有楽
    誠に誠に。でもすぐ「父の日」です。
松蝉の案内するなり志士の墓
  紫陽花を厭えし女のありにけり

母の日や母の好みの茶粥炊く              みどり
友くれし糠床青き梅のあり
    心栄えの見事なお友達。
五月晴れ予科練誇る兄の逝く
    戦争を賛美するのではなく、予科練という厳しくも輝かしい場は、紛れも無く
   兄上やその友人にとって、「青春」そのものでありましょう。

  母の日や実直という宝物                  弘子
  文机の小さき水鉢桐落花
恋語り合ふ人の背若葉風
    〈若葉風恋語り合ふ人の背に〉でしょうか。
 
  薫風の佐賀平野ロマン吉野ヶ里          さかもと ひろし
薔薇育て歌詠む後期高齢者
    「高貴高齢者」と自称しましょう!

卯の花や母の家まで百三歩                よし子
    私の句に「母の家まで六百五十歩春の雨」があります。
    百三歩…頭の中で測っております。スープは熱いままですね。
花嫁を送り出す家山法師 

  片栗の咲いて棚田の土の                  二穂
十薬の花白々と雨の中
  母の日や物買えぬ日の遠くなる
    「遠くなる」とは?

母の日の新任地よりありがとう               意久子
    「母の日や」とするとスッキリと解ります。
  待ち合わせサンシキスミレの黄色のゆれて
    「待ち合わせ三色菫の黄のゆれて」と。
  五月雨土砂流となり人をのむ

速達で母の日カード送りたり              山野いぶき
青葉風応援練習スタートす
野良猫のふらりと来たり山青葉
    作品揃っています。

母の日や落雁包む薄き和紙                 天花
    「母の日の」とすると、一句がやわらかくなります。
梅雨きざす菓子の袋に成分表
    なんにでも刷ってある成分表。いささかの鬱陶しさ。
実桜や川辺に並ぶ陶の椅子

菜の花やここにマンション建つとかや            満子
  湖からの風を孕みて鯉幟
    類想句多々。

  水蓮や水鳥休む杭の上                   美原子
  母の日や揚げてたてまるのアナゴ天
図書館に春風めぐりページ繰る
    これは春風が頁を繰る、と直接に言ってますが、
   「春風のめぐる図書館ページ繰る」でもよろしいですね。

新緑や見る人なしに比丘尼塚                悠々