道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第83回決着!!  

2月の兼題は 「雪」、他、自由でした

  「春の雪」でしたが、今年は九州にも沢山「雪」が降りました。
「今日降る雪のいやしけ佳(よ)事」の古歌を思います。
とは言え、今日はすでに大陸からの黄砂襲来。黄砂ならぬ「黒砂」になって、
雨が降りしきりました。花粉も例年以上とか、ご自愛下さい。    (谷子)

 

    写経用紙に引かれた線。雪に降り込められた中の鋭敏な感覚。
  「薄き線」としましょう。
      早春の光の中の命が、静かに書き止められています。
       福寿草の輝きが、幸せな時間を伝えます。

【入 選】

ポストまで行きてかへりの春の雪     萬坊

萬坊さんの句は、ふいに降り始めた春の雪をしっかりと言い止めてあります。

降る雪や合格番号指させり        亀山龍子

龍子さんの句は、「指させり」に喜びが籠められています。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

雪降れば 会いましょうの約束す            美原子
花束を胸に守りて春一番
       卒業、退職等花束を抱えた姿を見かけます。差し上げる花束かも知れませんね。
 あれはて主なき家の紅紅梅
      薄紅梅でしょうか?

紀にも降り 日本列島 雪景色            あゆ
 大入試 延期の知らせ 門の雪   

 春寒料峭添削の文字赤し             天花
   春寒・料峭重なります。
 針供養物差しに印す肩の幅

 喧騒の街を鎮めて雪の降る               瞳夢
 ケアハウス静まる壁に梅一輪
    <梅一輪差して静かなケアハウス> 
ささ鳴きを告げたき人の今は亡し

 この雪の向こうに何が?七曲がり          正巳
暮れなずむ南部の里や梅白し
 隣への 路遠くなり蕗の薹 
    疎遠になった、の意でしょうか?「蕗の薹」だと何かしら懐かしい感じの方が強いのですが。

迫り来る雪の知らせや歯牙疼く         吐詩朗
 屋根の雪しづる響きに気圧(けお)さるる
     「気圧さるる」を推敲して下さい。
雪しづる窓辺の木々や歯科の椅子

シベリアはもう雪だなと亡父言う           竹雄
     毎年このように言われていたのでしょう。
         そして亡き今もその声をお聞きになる思いを抱かれているのでしょう。
         もしかすると、シベリア抑留の…などと思いました。

 雪晴れの空に悠々とんび舞う
 寒風を避けて小雀軒の下

ロートレックの 残像抱え 雪に向かう          河彦
ハッサクの 故郷の香り 箱に満ち
如月や 父は九十三歳の 誕生日 
    <如月や父九十三の誕生日>

 春の雪 羽後は堅雪 とおせんぼ              姥懐
    <春なれや羽後は堅雪通せんぼ>
 日めくりや 脂身落とし 二月尽  
 春寒の 水なお口の 重くせし
    <春寒の水飲んで口重くせり>

鴻毛の命うつくし今朝の雪              有楽
三宅坂雪踏む列の軍靴の音
 神人になりたまひける春の雪

 小米雪休耕田に舞い踊る               方江
雪しぐれ予備校は灯を煌々と
母の忌の川ほそりいる二月かな

 雪だより孫の電話の新任地                  意久子
    <新任地より孫の電話の雪便り>
 春風に髪まかせゆく歯科医院

ひたすらにただ林間に雪を漕ぐ            二穂
  しんしんとすべてを包む夜の雪
  深雪晴れダイヤモンドダストの朝

雪の朝首都警世の銃の音                紫微
 白菜を切る手さばきを音に知る
訪ね来し小さき靴に春の泥

手のひらの溶けて香をかぐ六つの花         萬坊
友と酒これはこれはとふきのたう
    幸せな時ですね。

東京の碧落に顕つ雪の富士        満子
降る雪やわれを昭和へつれ戻す
寒波くる身の置きどころなかりけり       

繭玉のごとし梢に残る雪          のぼる
 宿坊の庭を明るめしだれ梅
小流れに日差しやはらか蕗の薹

 許し合う兄弟会や雪の果            みどり
早春や米を研ぐ音迷いなし
   <早春の米研ぐ音の迷いなく>
 山椒の芽ぶく気配に土踊る

終電の滲むライトや春の雪          弘子
 松越しに早春の月芝居跳ね
   いささか丁寧に書き過ぎました。
 黄昏に泡立つ川面桜の芽

合格を告げ来し少年息白し          亀山龍子
 冬すみれ父母の遺骨分け納め

 センチの雪に驚きはしゃぎたり         山野いぶき
 リビングに差し込む光春めきぬ
春淡し犬は散歩を待っており

かぎろいて北斎の富士生るるかな            明法
 春一番抜き手を切って進みけり
斑雪山の鼓動の聞こえきし

発つ前に小川華やぐ鴨の恋          さかもと ひろし
冬帽子目深にカラスの気分かな
       一寸面白い感覚です。
  肌露耐えて次待つ冬薔薇

 下駄履きの音を偲ぶ今朝の雪                  高風
寒ぼたん大輪ゆえの崩れかな
 立春の色香を添えし加賀料理
   <立春の色と香を添え加賀料理>

 斑雪野や日はきらきらと風痛し                 照子
寒林の力を秘めて静もれり
 紅梅の里塀を背にほころびぬ

 若き芽の高らかな音や春を待つ                 悠々     
   「若き芽」「春を待つ」は重なり過ぎます。
  又、「音」にする場合は、例えば(音大卒業公演)等という注があると解りますが…。
 

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp