道場主今月の一言

よき友人を得る唯一の方法は、まず自分が人のよき友人になることである」
ラルフ・ワルド・エマーソン  
( アメリカの詩人・思想家 )
 

銀座俳句道場 道場試合第81回決着!!  

11月の兼題は 「山茶花」、他、自由でした

 年初のご挨拶はひかえさせて戴きました。
良き一年になりますように。そのためにも、元気に頑張ってまいりましょう。        (谷子)

    十八番の手品。皆から言われぬ先にもうすでにその心算。
  シビアな観察眼です。
  周辺の冬ざれた景色まで見えるようでした。
       「老人」となっていましたが、「老い」の方が。
   「老人」ならば<笑い上戸の老人二人年忘れ>です。
   元気な老人になりましょう!

【入 選】

きしみきし地球歯車去年今年        明法

「きしみきし」の「きし」によって、不安感がひたひたと。

後ろより蜜柑の届くバス旅行        祥子

バス旅行の楽しさがよく伝わります。「蜜柑」(季語)の使い方結構でした。

金髪のやうな枯れ萩かかへ刈る   内藤吐詩朗 

「金髪」という萩の花とはかけ離れた一語が、よき日和の中の萩の黄葉を存分に想像させます。「かかへ刈る」という設定も「金髪」を受けて巧みでした。大事に愛でている萩であろうと思わせてくれます。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

飲干しのジョッキの輪っか年忘れ           萬坊
  手袋の十指のつかむ囲炉裏かな
 
 電車にて同じく眠る年忘れ           明法
    「同じく」は乗客たちの姿でしょうが、
   <年忘れ果てし電車に眠りおり>でしょうか。

 万光の海に沈めて冬夕日
   「万光」の持つ色彩に、「冬夕日」の紅さ。重なり過ぎます。
 忘年の音楽会出で月まぶし               みどり
十二月白湯を好むは祖母に似て
病得し友の繰り言枯茨

 年わすれ内なる不安消えやらず             弘子
夕日抱く奏楽堂の冬紅葉
寒灯に微笑はなほ百済仏

苦々しきことおおき世や年忘               二穂
水鳥やばさと水面に立ちあがり
       <水鳥のばさと水面に立ち上がる>
    俳句は瞬時を書け、と言います。

冬鏡まなこ惚けし父に似る
   「まなこ」に焦点を当てたほうがよいかどうか。

年忘れ 景虎をしばし 友として               河彦
   2007年の大河ドラマは何だったか、この一句で思い出せましょう。
新しき 顔も交えて 年忘れ
年忘れ 望年会と 案内状 
    これだと、忘年会と新年会を兼ねられますね。「」で括ってもいいでしょう。
 
 着ぶくれて柔らの受け身で転びをり             亀山龍子
    多分、ご無事だったと…。
 秋日傘畳み葬送の列送る
   葬送、送ると重なります。<秋日傘畳み葬りの列送る>
不揃ひの電子音鳴る年の暮

哀楽の いささかなれば 年守る                姥懐
    「なれば」が、少々構えすぎです。
 道しるべ 顎の教へる 懐手
   <問う先を顎に教へる懐手>「道しるべ」は不用。
 揉手して 大樹の影や 年忘れ
   大手でしょうか、などとつい。

主婦たちの年忘なりスパゲティ             山野いぶき
   グルメな主婦達の流行、とはいえ、大半はつつましくこの様な風景。
木の葉散る空の青さを振り切って
幼子の道でけんけん寒雀                       
   二句共に、結構です。

憲法九条も良き肴なれ年忘                      章司
   「肴」では…。
初山河狂える気象鎖をなせど
   「鎖なす」でしょうか。

 死地脱し忘るるを得ず年忘れ                  紫微
     お大変な一年だったかと。ご自愛の程。
久闊の帰宅に冬至南瓜かな
     「我が家」との久闊。戻り来た!の思いしみじみと。
神仏の加護あり今日の除夜の鐘

吾こそは鍋奉行とて年忘れ                のぼる
湯豆腐を掬ひては酌むひとり酒
     「湯豆腐の煮え過ぎておりひとり酒」
点り初む聖樹や街の賑はへる

  除夜祭の花火の音や異国の夜                  満子
        「夜」の重なりを注意。
ランドセルの赤走り出す刈田道
嫋やかに寄りくる鯉や石蕗の花

とっておきの純米吟醸年忘れ                意久子
 落葉踏みプレゼント手に療養所
がんばりやの我にごほうび餡みつ豆
    私自身へのごほうび。幸せそうな一句。
    ただし、夏の一句になりますよ。<年忘れ我にごほうび餡みつ豆>でしょうか。


話好きまた一人来て年忘れ              方江
 紅葉や切り絵を空にはりつける

 甲非性の無いままいつか年の暮           有楽
 あかい葉が年越えてゆく世の変り
日の丸が初詣でまつ九段坂
      「で」は削りましょう。

一人減り一人増えたり年暮るる           祥子                                
 我が心師走の空にみすかされ
  
喋るやつふと黙るやつ年忘れ     吐詩朗
 橋たもと被爆痕もつ牡蠣割女
   よき一句。「橋たもと」をご一考願います。
しほざゐや生牡蠣つるりのんど過ぐ

年忘れ 昔さぞやの ひょっとこ面            あゆ
     さぞや「遊び人」の
 荒れ畑に いつまで燃ゆる 鶏頭花  
椎の実ひろふ 少年の 眼差しに   
     少し句調がゆるいです。

病後には声も掛からぬ年忘れ             正巳
     助かるような、寂しいような。
 山門や爪先上りの冬木立
     「山門や」での切れ、ご一考を。
蔓枯れて紅い実一つ残りけり

余生尚夢を語りし年忘れ                 高風
 神仏もシッチャカメッチャカ年忘れ
江戸前の羽子板市の気分かな
    「江戸前の…気分」なのです。
     
年忘れ終りは郷土の味自慢               照子
息災に暮れて羽子板おごりけり
    一回り大きいのを買ったりして…。
神のなき電飾ばかり暮れの街

 愚直遠く偽はびこる年忘れ             悠々
     「偽」の一年。何だか情けない一年でした。
    「篤実」と言う語を、近年とみに思います。  

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp