道場主今月の一言

よき友人を得る唯一の方法は、まず自分が人のよき友人になることである」
ラルフ・ワルド・エマーソン  
( アメリカの詩人・思想家 )
 

銀座俳句道場 道場試合第80回決着!!  

11月の兼題は 「山茶花」、他、自由でした

 今年も後半月になりました。年々、何と一年の早いことかと思います。
「俳句」をしていると、優雅に折々の季節の変化を楽しめそうなのに、
早いと感じるのは、逆にその刻々を貪欲に吸収しているからでしょうか…などと、思ってみたり致します。
 今年は、凄まじい酷暑、自民党惨敗、首相の所信演説後の退陣、様々な分野、殊に「食」の場での「偽」騒動、銃による事件…など、呆れ果てるようなことが続々でした。それでも、一ヶ月近くの遅れはあっても、紅葉も銀杏も色付き、
冷房が暖房に変わり…。と安心してはいけませんね。自分で出来ることで、と
「着膨れ」実践の方からのお便りもありました。
 何はともあれ、しっかりと頑張りましょう!
 よきお年をお迎え下さいませ。        (谷子)

  濃く懐かしむ為の法要が、遠ざかっていくことの確認に繋がる寂しさ。
  さみしい景と言えば言えますが、凛として。寝室にまで書籍、紙類の氾濫、侵食の中に居る筆者としては、死後の景だけでも、斯く在りたきものと、ふいに思ったりもして…。
  白という色の美しさと厳しさ。「一途」という言葉も又。「その」が、読者を掴まえて白山茶花の散り敷く世界へ誘います。

【入 選】

焼芋買へば古新聞に地震のこと     のぼる

「古新聞」というのは、何かしら懐かしくあたたかい感覚を与えます。熱心に読んだりして。このような素材の句は多いのですが、この句は、「地震」によって、すぐに古びるニュース、「新聞」という「新」の言葉などに思いが広がっていきます。

しぐるるや塩大福の塩かげん       萬坊

「塩大福」って、なかなかの発明(塩餡がそもそも発明ですが)、と思っていますが、「時雨」に似合いますね。

金髪のやうな枯れ萩かかへ刈る   内藤吐詩朗 

「金髪」という萩の花とはかけ離れた一語が、よき日和の中の萩の黄葉を存分に想像させます。「かかへ刈る」という設定も「金髪」を受けて巧みでした。大事に愛でている萩であろうと思わせてくれます。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

冬枯れに水琴窟の遠き音         美原子
 廃屋の蔦からましお茶の花
   <廃屋の蔦を絡ませ>でしょうか。「蔦」「茶の花」と植物二つを同時に使わない方がよろしいです。
   尚、「お茶の花」と使用している句がありますが(歳時記例句でも、有名俳人でも)、賛成出来ません。

屋根葺きの脚軽やかに木の葉散る               ほむら

 冬もみじ 火群 思はせ 根来寺               あゆ  
    「思はせ」が一句を弱くしています。
敗荷や 居丈高なるまゝ 折れて 

秋の声李白吟じぬ黄鶴楼                    紫微
    <秋声や>と。
爽やかに長城に立ち八十路なり
    結構でした。私ももう一度「長城」、というより中国に、と願っています。
 飽かず見る五百羅漢に秋日射す

山茶花の白さ残して暮れにけり                  正巳
 大根やど根性の子沢山
    <ど根性の子沢山なり大根引き>
大根引き生駒山にも雲はなし

 山茶花の紅白庵の屋根を越え                  方江
秋祭りひよこの軽さあたたかさ
   やさしい一句です。
 お多福もひょっとこもいて石榴の実

老いらくのままごとしたや返り花                   有楽
 高台寺木枯らしゆくや京灯
   一昨日京都から戻りました。「京灯」は「祇園」でしょう。一寸、京都案内になりました。固有名詞は難しいですね。
車窓ゆくこころ枯れたる国の色
    この「枯れ」は季語としては微妙ですが…。
  
 しみじみと色即是空夜半の空                    高風
 洋食の箸休めとて菊膾
     洋食も箸が付くご時勢。「箸休め」も変ではないのかもしれませんが…。
童謡の山茶花孫と家路かな
     多分「たきび」の歌でしょうか。繋いだ小さな手のぬくもりと小春日和のあたたかさが伝わります。

山茶花の散り敷く朝の通学路                    照子
暖炉焚き落着く場所の決まりけり
冬紅葉せかるる如く散りてをり
     三句共しっかり書けています。身辺の小さな事をしっかりと見て、観て、視てゆきましょう。 

山茶花の絨毯の赤まばゆかり                竹風 
       <山茶花の赤の絨毯まぶしめり>
リズミカル大空群れて鳥渡る
尾花揺れ空の広さよ雲流る
    <尾花揺れ空の広きを雲流る>

 山茶花や薄暮に浮きし坂の道                    薫子
紅葉して鞍馬の茶屋のきな粉
    「きな粉餅」かと、勝手に補いましたが…。
ジーパンの客乗せ初冬の人力車         

 山茶花の香りや街道沿いの家                   山野いぶき
暮早しさっさと風呂に入りたり
     何やら気合充分。さて「長き夜」を…。

秋灯やお詫び映像長長と                             亀山龍子
     何だかひどい年でした。大臣、老舗、名産…次々と。
コスモスの色の分れ目別れ道

山茶花や和紙ひたひたと漉きし音                萬坊
     「漉きし」ではなく、「漉く」の現在形を再考して下さい。
折れ曲がりの一世のごとく枯はちす  (いっせ)

山茶花の咲き次ぐ日より続きかな                二穂
        「日和続きかな」と。
  色どりに庭いちめんの柿落葉
          「彩りや」でしょうか。
 小春日やフェルメール展人のおび
     <小春日やフェルメール展に人並び>
  
 ひと逝きて山茶花のぼる朝の道                             みどり
      「山茶花の道〜坂」を上るのでしょうか山茶花が上っているようになります。
 蔦からみ竜昇るごと冬紅葉
       <竜昇るごと蔦のからみし冬紅葉>
寝付かれず「深夜便」聞く冬の朝

教へらるまま山茶花の角曲がる                              弘子
吾亦紅実直という宝物
母恋ひにうづくまる娘や石蕗の花
    切ない一句でした。

さざんかや手話の手の先やわらかき           明法
 きらめきて風にからみて七五三
     <七五三きらめく風のからまりて>  
 声高に武勇伝なり榾赤し
     <声高な武勇伝なり榾赤し>

山茶花の濃き紅あふる丘の午後           のぼる
招運の御みくじ吉と一の酉

 一輛の銚子電鉄山茶花の白                                意久子
     <一輛の銚子電鉄白山茶花>
事務室の初ストーブや人を待つ
冬初め捜し物して一日終え

 茶花を薔薇と見紛う宴終わる              さかもとひろし
    「山茶花」
 山茶花の散りそめし道狆の行く
  人の背越え黄落銀杏風に舞う 
     「風に舞う」がありますから、「黄落」は必要ありません。

 山茶花やすこしの米と母の絹           章司
    「すこしの米」と「母の絹」が交換された、という記憶でしょうか。
    <山茶花や米に替りし母の絹>

山茶花や左右に猫のわかれたる
    面白い一句。山茶花日和の下での一景。
硝子戸の外のさざんくわ漱石忌 

山茶花や何時も掃いてる翁あり       瞳夢
一夜明け元の木阿弥落ち葉降る
     誠に誠に。
観光の冬日に速し人力車 

山茶花や未だ半袖小学生                     満子
    時々見掛けます。元気でよい、と思っていたら、身体に負担が掛かりすぎる、と   
   いう医師の見解もありました。(閑話休題)きっと元気な男の子ですね。

 豆腐屋のラッパの音の愁思かな
   「秋思」でしょうか。
 啄むは鳥実紫まる坊主
    <今日もまた鳥来ておりぬ実紫>

山茶花のぱらぱら零れいと寂し             内藤吐詩朗
   <山茶花のはらはら零れいて寂し>
クリスマス蝦蛄サボテンの紅きよし


山茶花に明日を問われて黙りこむ          悠々
    「黙す」という言葉があります。
    <山茶花に明日を問われて黙しいる>   

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