道場主今月の一言

よき友人を得る唯一の方法は、まず自分が人のよき友人になることである」
ラルフ・ワルド・エマーソン  
( アメリカの詩人・思想家 )
 

銀座俳句道場 道場試合第77回決着!!  

月の兼題は 「炎天」、他、自由でした

  母横山房子の死去により、葬儀後も「お別れの会」などで何かと落ち着かず、選句が遅れたことをお詫び致します。
 9月10日の「追悼録」で、心添えて追悼戴いたこと感謝申し上げます。8月最後の土、日曜から火曜日に掛けて、東京での研修句会―秋田日帰り講演ー東京句会・国民文化祭俳句大会最終選考会と終えて小倉に戻り傍に居れたことが慰めになりました。92歳、大往生と言えましょうか。見事という言葉しか今は思いつきません。息子が葬儀で「大正4年生まれ、2・26事件前夜が初めての句会参加…というと、僕らにとっては教科書で習う歴史」と申しました。誠に長い生涯を貫かせた芯としての「俳句の力」を改めて思っております。
 凄まじい暑さも峠を越えたようです。お疲れの出ぬようご自愛下さい。         (谷子)

   冷房の効いた水族館でしょうか。「炎天」と「深海魚」との
   取り合わせ、というよりも「炎天」から「深海魚」への飛躍が
   見事でした。
 
   パフォーマンスなのか、盛り上げるためのイベントなのか。
   「炎暑」の中、あまり人出も無いような感じが伝わります。
   苦味の効いた一句です。道化師の汗が見えるようです。
     こういわれると、確かに筆順に関わり無く点っていくようですね。
    今年は、NHKのテレビで、五山の送り火のあれこれを堪能させて
    貰いました。私は、カメラマンの苦労をしみじみと思いました。重た  
    いカメラを担いであの状景を撮るのは大変な力と決断力が必要だった
    でしょう。
 

【入 選】

炎天のビルより垂るる命綱     あゆ

こんな地に父祖の血筋や泡立草   姥懐

立秋や乗り継ぐだけの風の駅    弘子
新涼や兄から届く家伝薬      天花
あゆさんの句=「炎天」「ビル」「命綱」と厳しい素材感が
   都会の更なる暑さを伝えます。姥懐さんの句=「泡立草」が「こんな地」を伝えつつ、「血筋」の末の感を実感させます。弘子さんの句=秋を感じさせる風のよろしさ。小さな駅、よき空気。天花さんの句=兄の住む故郷の佇まいまで伝わります。それと共に、兄の妹への変わらぬ思いも…。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 路線バス降りて通勤炎天下    竹雄
御母堂の逝きて主宰の晩夏かな
        ご挨拶痛み入ります。「主宰の晩夏かな」には、相手への想いが篭められていて心に響きました。
 馬鹿殿をじっと見つめる夏の月
   この「馬鹿殿」はアノ、アベさんでしょうねー。まさか「志村けん」では無いと…。「殿御乱心」というよりも、何だか落城につき我が首を差し出せばどうにかなると思ったのかと、時代錯誤振りに愕然としました。
   句としては…ですが、平成19年のこの騒動と共に忘れられない一句に
   なりそうです。


アスファルト白くどこまでも炎天下    意久子
   今年の(というよりこれからの)猛暑、「暑さ寒さも彼岸まで」というのは過去形になりそうです。うんざりを取り越して呆然の感がよく伝わります。10月に入っても30度予報が並んでいます。
   それでも、ようやく風は心地よくなりました。

  棚経の僧に自家製ウーロン茶
 長梅雨や骨密度云々河野先生

  水かぶりかぶり応援炎天下       方江
送り火が父の寝像に見えてくる  
 
 炎帝の統ぶる町筋音もなし       満子
ふるさとに母とふたりや夜の蝉
   「夜の蝉」が静けさを更に深めました。
 参議院選終わり雷鳴とどろきぬ
   この「雷鳴」は、選挙結果を伝えます。

初嵐去年は病に伏しいたり       二穂
   一年後の体調の回復が思われます。「臥す」でしょうか。
 猛暑来ており藤の狂い咲き
蜩の声に鎮もる三宝寺

八月や軍はとくに否と言ふ       章司
   「軍」=いくさと読みつつ、「軍隊」を思わせます。
 炎天や切絵のやうに蟇乾び
くいな橋駅出づ京の炎天下
 
炎天や暮れて春日の万灯篭       正巳
   本来、「万灯篭」が季語なのですが、近年のような気候だと、
   この句捨てられませんね。暮れても暑さがまつわりついて
   くるようです。

 一葉二葉落ちして暮れにけり
   「暮れにけり」の前に、三音が入るかと。
 棚経の僧に団扇の病婦かな
   「病婦」というの、どうにかしたいところです。情景はよく分かりますので。

  己が巣を断ち切る爪や女郎蜘蛛      あゆ
見送りの父を小さく青田中

 供花溢る、ひめゆり塔の炎気かな     薫子
   〈ひめゆりの塔の灼けいて供花溢る〉
    「、」「。」は俳句の場合、なるべく避けてください。

黒南風や吉良邸あとのなまこ塀
 汗拭う力士の街の手形像
   「手形像」というの、分かるようで、分からない。
   「手形の碑」でしょうか。


くすのきの幹支へをる油蝉        のぼる
帆柱に鳴くひぐらしや船だまり

 松枯れやビーナスまがひの蔦衣      姥懐
風知草風の来た径帰り径

 炎天や野球少年腕組んで         天花
小袋にのど飴少し赤とんぼ
 
 蝉のむくろ アスファルト上に 干からびて  河彦
 阿波踊り 指の先まで 酔いしれて
風くるま くるくる赤く 恐山
   恐山では一年中「風車」回っているようですが…。

 嵐の中来て爽やかに語りをり       竜子
夏惜しむハンマー投げの叫びかな
   出来れば「夏惜しむ」といういささか緩い季語ではなく、
   「炎帝に」などと強いものを持ってくることで、思わず発するような
   一気の掛け声の強さが出てくるかと…。

炎天や斎場に行く一両車
   「一車輌」ではないかと。

炎天の文豪軍医の旧居に立つ     さかもとひろし
   森鴎外の旧居。「炎天」がよく働いています。
 炎天下田んぼの鳴子大威張り
 炎天の清水流れを速めおり

猫じゃらしざわざわ揺れて八月尽    よしこ
黒猫と気ままな暮らし夢二の忌

 炎天下はや鋤き畝の土白く       萬坊
朝顔や大きな群青ぶつかりて
ほつほつと土の香残す夕立かな
   ほつほつと穿たれた夕立の雨の跡が見えるようです。

炎天に鼻の欠けたるスフィンクス    紫薇
   〈炎天や〉でしょう。
一枚の選挙ポスター晩夏光
 学びたる街に鶴折る原爆忌

緑雨来てテネシー河の鎮もれり     吐詩朗
 浴衣着てアメリカ人も浪速っ子

 炎天の表参道ひつじ雲        山野いぶき
 大雨が止んだ後には虫の声
窓細め最後の西瓜を食べており
   「窓細め」を再考してみてください。中七以降は結構ですから。

 炎天に足音焼けて歯痛止む      みどり
文字かすむ酷暑にずれし老眼鏡
 ハーブ摘みガラス花瓶に風を待つ
   「ハーブ活け」でしょうか。

 炎天や蔭なき道を歩初む       弘子
ケロイドの記憶目深な夏帽子

炎天に残りわずかの里程標      美原子
 羽痛め飛べぬ夏蝶 三日生き
 夕闇の半夏生に見送られ
   リズムが少し乱れています。
   〈見送られいる夕闇の半夏生〉


炎天に行くところなしシネマ館   悠々
   「行くところなし」と言いつつも、何と
   旺盛な知識欲と行動力でしょうか!脱帽。   

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