道場主今月の一言

よき友人を得る唯一の方法は、まず自分が人のよき友人になることである」
ラルフ・ワルド・エマーソン  
( アメリカの詩人・思想家 )
 

銀座俳句道場 道場試合第76回決着!!  

7月の兼題は 「夏の雨」、他、自由でした

          この嬰児も今夏二歳を迎えました。

  猛暑というも愚か…な感じの日々が続いています。
 遅くなって申し訳けありません。
  先日、松山での 「俳句甲子園」に審査委員で参りました。
 一昨年に続き、二回目。炎暑の商店街の大きな通路(もちろん
 アーケードではありますが)での予選審査、夜遅くまでの選句や
 協議…。まことにスタミナを要求されるハードな二日間ですが、
 熱中症にもならず、無事帰還しました。
  高校生の純な、生意気な、幼い瑞々しさに触れて、行をした後の
 ようです。
  いましばらくの暑さ、がんばりましょう!!(谷子)

   大阪市西成区にある天下茶屋。秀吉(天下様)の休憩した処というのが、名の由来という。歌舞伎好きだと「大願成就殿下茶屋聚」がすぐ浮かぶ。何かしら夏の雨の明るさの時空渾然の中、「鉄鍋」に強い存在感がある。
 
    9・11のグランド・ゼロ。すでに復興の槌音が晩夏の強い日差しのなかに響く。 読者の胸に、あの抉れた空間に響く音が共鳴する。
    「夏の匂ひの男来る」であろうと想定して頂いた。教会という静寂の(宗派によっては賑やかなところもあるが)空間に、夏の匂いを纏った男が一人。日焼けした海の男か、アロハシャツの男か。それは読者の自由な想像に任せら
れる。
 

【入 選】

お囃子や赤い満月昇りたり       山野いぶき

 京都祇園祭りか。そう想定すると、あの緩やかな囃子のリズムと京の蒸し風呂のような暑さがこの一句から漂ってこよう。そう想わせるのは「赤い満月」の力。ただし、「赤き満月」としたいところである。

石垣の崩れしぐすく海紅豆          紫薇

 「ぐすく=城」。琉球では、城や砦を言う。城址に咲く海豆紅(かいこうず)の紅の色。デイゴの花とも言われるこの花の紅さは、琉球、沖縄の人の血の色とも思える。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 雨傘の日傘となりし女坂        薫子
梅雨の底何もせぬ日の時刻む

 緑雨来てテネシー河の鎮もれり     内藤吐詩朗
 浴衣着てアメリカ人も浪速つ子
   この二句は観光俳句になってます。

 夏の雨ワイン色した傘が行く            竹雄
  「しょうがない」もとより禁句原爆忌
   本当に「しょうがない」大臣です!
閣僚のどこか締まらぬクールビズ
    ついニンマリ。困惑したようなのはまだ愛嬌があります。
    僕ちゃん決まってるでしょ!タイプが並んでるとかえって
    気持ちが悪い。


 欅の幹くろぐろ濡らす夏の雨            満子
緑陰の風に流るるトランペット
誇るがに凌霄の花絡みをり
    今年は殊のほか長いようです。

夏の雨 鉦は追善供養かな                     花子
    何かしらゆかしい方の供養の感あり。
とびきりの風もおまけや 梅雨晴間
 夏めくや ガラスの器 主となりて

サッカーの子らにきらきら夏の雨          あゆ
夕虹や明日は晴るる海の町      
ハリヤハリヤ那智の火祭豪雨突く
    元気な句が揃いました。

京のみち上ル下ルや夏の雨                方江
虹描く一本足りぬ色鉛筆
 夏の星象の声する閉門後
     「星」があるので「閉門後」は一考を要します。

夏の雨まだ降り止まぬ参院選            二穂
冷え冷えと素麺腹に滑り落つ
      さぞやの暑さ、さぞやの涼感。
桃熟れぬ老いて小農忙しく

 銀(しろ)き河わたる小舟も見ゆるらむ       河彦
      このルビはあまり感心しません。
三味の音がかすかに届く夏の雨
 朝顔の 宅配便を 待つ女 
    河彦さんは、粋で、ドラマのある句がお好きですね。この朝顔、
    入谷から届くのでしょうか。

   
 夏の雨尚悠々と錦鯉                正巳
    中七を再考。
 叢に首を振りふり百合の花
合歓の花飛び石踏みて飛鳥川 

 夏の雨眺めるメガネウインドウ                      意久子
     <夏の雨シニアグラスを選おり>
 今日の散歩廻りみちして白木槿
 五月雨や十四偕の赤ワイン
     <夏の雨十四階のワインバー>

夏の雨人影の無き貯木場                       のぼる
 デパ地下へ寄りて試飲の冷し酒   
海開き赤帽の児ら一列に

 水たまりたちまち消えし夏の雨                     美原子
鷺草の先におわすや九品仏
 スイカの絵二つに破きスイカ割り
     この状況、一寸??です。スイカ割りにみたてたのかどうか。
     それともイベントの風景なのか。


 朝立ちも昼立ちもあり夏の雨                     有楽
酷暑消す雨なら多少さざ降りも
夜中だけ降ってくれよと夏の旅

 投票日怒りの涙か夏の雨                        みどり
      たしかにこのような感じでした。
 夏の雨校庭の像降り洗う
      「雨」に「降り」は必要なし。 
 うつ向けるフクシャの花美迷いに
      下五がよく解りません。

 夏の雨巨木駆け下る樹幹流                       弘子
      言葉だけが力んでいます。
 こめかみに滴る汗や座禅堂
少女の尾のこす女教師青ぶどう

捨船や累ヶ淵の夏の風                           章司
     一寸おどろおどろしいですが。
 ひらい神数ならぬ身のこの一票
     「上五」季語でしょうか?
炎天や泥にトビハゼ泥の色
     
 茂り中源平戦の谷深し                           竜子
夏の雨ホーメ(ム?)隔てて別れをり
 蝉時雨朝練の子と行く投票日
      <朝練の子と行く投票蝉時雨>
 天と地を黒に描き上げ夏の雨                       明法
ひとつぼつ(ずつ?)咲くは淋しき山の百合
 ほとほとに泣かれ抱き上げ夏の月
     「ほとほと」は「困った、あきれた」に付く副詞ですから、「泣かれ」には付きません。
     「ほとほと」の中に「本当に」という「に」も入っているので、「に」も必要ありません。
   なかなか思いの籠った、「夏の月」の季語もよく働いた一句ですが…。

   
 夏の雨視力検査の灯の動く                        天花
     内景(視力検査)と外景(雨)で、一句が分裂します。
せみしぐれ向かい合わせに湯治宿
     <せみしぐれ向かい合わせの湯治宿>
青みどろ長靴干さる作業小屋

少年の靴ペタペタと夏の雨                          姥懐
 失言を悔ひ鎮めけり半夏雨
     <失言の悔ひ鎮めけり…>
 早世の母の乳房や青林檎

 夏の雨傘一本拝借す                            山野いぶき
 夕立の中で車を凹ませり

夏雨や合宿の漢みな裸                            萬坊
     夏雨・裸、共に季語ですが、なかなか勢いの籠った一句です。
 風鈴の壁にひらひら鳴りにけり
     「壁」は削りましょう。「風鈴の影」ならば、そのように書いてください。
そうめんや瓶の帆船風受けて
     中七以降結構です。「そうめんや」でなければ、もう少しお洒落な感じの一句になりましょう。

湯の街の細き坂道夏の雨                           紫微
 烏瓜薄命の花闇に咲く
     中七、言いすぎです。

 どの家にも日の射しなが夏の雨                         よし子
     中七変換ミスでしょうか?
少年の口笛たかく夏休み

老いしひとのみ奪い去る夏のなゐ                         悠々
    中越地震、重ねてのことで、心が痛みます。「老いしひとのみ」ではないにしても、
    高齢者への打撃は強く響きましょう。

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