道場主今月の一言

勇気を失うな。くちびるに歌を持て。心に太陽を持て。」
ツェーザル・フライシュレン (ドイツの詩人・作家)
 

銀座俳句道場 道場試合第74回決着!!  

5月の兼題は 「母の日」、他、自由でした

 結構「母の日」で書いています。後半二句は、「母の日」なのか
  「花南天」なのか、季語を二重使いしたことで、(「母の日」からの
  焦点を少しずらして、自分と母親との歳月の長さを加えたかったのです。
  さて、今回は「母の日」にちなんで、いささか甘い選句となりました。 (谷子)

   宮城まり子さんの「ねむの木学園」は、この春美術館を開設。
   心洗われる作品が並んでいるとのこと。母なる「宮城まり子」
   と純真な絵をかく子等への美しい賛歌になりました。
   下五は六音になっても「絵をかく子等」と。
    ※ この美術館の設計者の藤森氏は、自宅をたんぽぽで覆って、
   春になると黄色い家になるとかで、私は大好きな建築家です。
 
    夫からのプレゼントでしょうか。多くは語らずとも
    静かな満ち足りた思いが伝わります。
    「手毬花」が、静かな家に一人居ての無聊の様と
    上手く重なりました。
 

【入 選】

母の日や祖母より継ぎし越後の皿  弘子

 この祖母は母方の祖母でしょう、と思わせ、祖母から母へ、
 そして自身に伝わる越後の血の濃さ、(美しさと我慢強さ)
 を読者に伝えてきます。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

  母の日の母描く子らに母の筆            内藤吐詩朗
     いささか「母」の乱発になりました。
 おばしまに投網沈子の音はねる
ほととぎす峡の深空の高架橋

母の日や姑を偲びて悔い少し              あゆ
 荷を解けばカーネーションの黄色かな  
車窓いま入日に染まる麦の秋 

 母の日や「お母さん」と呼ぶ妻がいて          竹雄
   作者(夫)が、「お母さん」と呼ぶ、ということでしょうか?
 盗撮のエスカレーター風薫る
   「盗撮のエスカレーター」というのは、女性のスカートの下を
   盗み撮りするということですか?

新緑のまぶしかりけりブライダル

母の日や祝い祝われ一日果つ                瞳夢
   「我が老母」も健在、自身も祝われて…の意。めでたき景。
 一言に笑みて頷く朝五
    

声援の渦巻く社草相撲
    「相撲」は季語としては「秋」ですが…。

母の日に合わせて届く江戸の菓子              正巳
緋毛氈座りて待てば柏餅
牡丹や長谷の旅籠に着にけり
    「着きにけり」と。

 ナイフとフォーク器用に使ひし母の日に         意久子
仏間まであけ放たれて卯月かな
紅さして朝のお勤め花菖蒲

母の日や小鳥大樹に群がりて               薫子
サンダルの凹凸足裏に夏近し。
囀りを聞きつつ駅に近き道。

母の日のママだいすきのカードかな            満子
小海線新樹の中を走りけり
再会の乾杯うれし初夏の宵 

 母の日やマニキュア赤く足の爪              天花
   足のマニキュア?は「ペディキュア」といいます。
   若いママでしょうか。

さつき咲く見晴台に鳥瞰図
小満やパレットに作る木々の色

母の日やははの大きな座り胼胝             二穂
    中七の「はは」は、やはり「母」と。
黄菖蒲の頭巾を開くごとひらく
 南天の輝く星や明易し 

嬰児の眼澄み切る薔薇五月                  さかもとひろし
 過去未来突き抜け飛べり黒揚羽
振り向かず葉桜の下で別れ来る
   〈葉桜の下で別れて振り向かず〉です。

母の日に野菜を送ってもらいけり            山野いぶき
  @実家の母上から、と思われますが、もしかすると、A子供さんからの
  プレゼントへのリクエストかとも。いささか不分明。
  もし@ならば〈母の日の野菜母より届きけり〉でしょうか。
  Aならばこのままで。

青葉風定期試験の真っ最中
暗闇に青葉の香り満ちており

母の日や薄れし記憶辿りゐて                  のぼる
夕風にぼうたん崩れつくしけり   

つばめ来る一直線に離宮道                 竜子
電子辞書の発音聞きて明易し

母の日や その墓遠く ただ祈る             河彦
猫二匹 箱根青葉の 坂道に
 言の葉の 飛び交う店に 風通る
   賑やかな店内でしょうか。「言の葉」とはいささか雅び過ぎましょう。

 生きざまの 悪しきばかりの 落し文             姥懐
   「ばかりの」の「の」が、一句を崩しています。
芍薬の 褒めればはらり 崩れけり
緑陰や 時にまぶしき 女子高生

母の日の母夭逝の母のこと                  章司
 母の日やことしもシンビジューム咲き

母の日や金婚式の妻と居て                  紫微
 一番茶沙汰無き沙汰を運び来ぬ
   「沙汰無き沙汰」というのは、一年に一度位の…との思いでしょうが、
   いささか無理があります。 

 登り窯出せし壺や七変化
   〈七変化登り窯より出せし壷〉でしょうか。

母の日や母の写経の文字なぞる                 みどり
風止みて路地の夕焼け亡母立つ
書き終えし請求書の上蟻走る


 大菩薩の嶺に拾へり夏の風邪                  弘子
 キュルキュルとノブ廻る音子猫生る
   中七までと下五がどうも上手く繋がりません。

母に日は昔の映画の中にいる                  方江
    「母の日は」?
 刻過ぎる早さに惑い今年竹
   「今年竹」というと、刻に先んじているように思われますが…。
 希望者は体験できる新茶もみ

 手を入れし年経る家に風薫る                  美原子
 母の日やサッシに替えし重たき戸
     「サッシに替えし」だけで「重たき」は削れます。
母の日に鯛置きて帰りし子
    句材よし。
   〈母の日の鯛一匹を置きゆく子〉と。

母の日や孫三人の母の顔                萬坊
 しばし手を水に遊ばせ山清水
  〈しばし手を遊ばせてをり山清水〉でしょうか。
 差す清水くるくる砂の炎めく

春惜しむ影と砂浜行きゆきて              あゆ
海に何探すクレーン陽炎へり
 落慶の甍を竜天に登る
  〈竜天に登るや落慶の大甍〉

母の日や夕焼空に飛行機雲               悠々
   夕焼の空に伸びる飛行機雲の白さは、天上に存す母上への思い。

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