道場主今月の一言

歓喜は無常にして短く、快活は定着して恒久なり。」
スウィフト(英作家)
 

銀座俳句道場 道場試合第69回決着!!  

12月の兼題は 「寒風」、他、自由でした

 寒中お見舞い申し上げます。
 暖冬とはいえ、ご自愛の御清吟を。    (谷子)

 「ジャグラー」は奇術師などと訳されるが、街中でなど様々なものを使って、パフォーマンスを見せる。様々な技を見せる左右の手が、ひらひらと小春日の空に舞って明るい一句。
 
  林檎形の蝋燭。真っ赤な蝋燭。クリスマスを待つ蝋燭であろうか。「十二月」が、一句を膨らませた。
  真青な空の下で、花梨の実が大きくなる。青空を夢見つつよき香りを蓄えてゆく。
 

【入 選】

寒風や海に一番近い橋            方江

寒風を行く失ふは何もなし          弘子
寒風やわれも葉つぱのフレディも       章司
冬の鵙少年の眉細きこと           よしこ

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

寒風にすくむガラスと鉄の街          洋光
 ドイツ語の歌声親しき十二月
   多分「第九」でしょうか。「親しき」か「親し」か。
深き默己をさらす枯木山

 寒風や釘打つ音の響きけり           正巳  
   「や」「けり」。〈寒風に〉と。
 東屋に人影絶えて冬木立
塩鮭に味噌汁だけの朝餉かな
   いっそ美味そうです。

寒風裡登校の子らつらなりて                    瞳夢
夫逝きし日はめくるめく降誕祭
   「めくるめく」が、切なさを更にえぐって、心を打つ一句です。
靖国の木々を鎮めて時雨去ぬ

枇杷の花島人の影どこもなし                  方江
 風の鳴る日に洗われて赤蕪
   「風」「日」の重なりは一考を要します。もう一寸の推敲でよい一句になりましょう。

寒風や市場原理のいじめかな          竹雄
 捨てがたき日記がわりの古暦
冬晴やジャンボ機小さく輝きて
   ジャンボ機の高さが伝わります。

寒風に向って登る兎跳び            あゆ
   石段でしょうか。元気な白息が見えそうです。
思ひ羽を立てて一羽や潟の鴛   
終電車ひたすら何を編む毛糸

 落葉して鴉の鳴き声すきとほる                 龍子
叱られし少年落葉を蹴りにけり
   少年の姿が見えるように書けています。
寒風や嘶き立ちし競走馬

 縦列の走者寒風裂きて行く           花子
   「縦列」が、一寸勢いを削りました。
 手の届く夢も果たさず十二月
独り居の茶の間の主は掘炬燵
   
 寒風や こけて老いたる 頬被り                 姥懐
   「転んだ」のか「頬がこけた」のか?
諍ひの 後の黙裂く 寒鴉
ひょっとこの 顔して水洟 ?みにけり

寒風の箱根路駆くる漢かな                    紫微
 格子戸に江戸の風情や花八手
     〈格子戸に江戸の名残や花八手〉
極月の市場を過ぐる中国語

ふろふきに 柚子味噌乗せて 故郷なり            河彦
    これぞ「故郷」。下五の充足感。
 闇に白し 侘び助にしばし 足を止め  
    いささか全部書いてしまった、の感。
 寒風に 帰りの橋の 長きこと 

寒風に逆らう犬も飼い主も           山野いぶき
 白障子シャンソン響く夕べかな

 寒風や犬の遠吠突き刺さる            薫子
引き返しできぬ道なり三島の忌
    こう書かれると、「三島由紀夫」の直線の晩年が、無慙さと共に生々しく伝わります。
 残り香のタオル湿れる冬至明け「残り香の湿る」と。


一陽来復豪農の煙出し              水の部屋
   伸びやかな田園風景が広がります。
 北風吹くや葉蘭の色のきはまれり
青木の実この年なれば急がざる

寒風や店番してるオウム居て            天花
駅師走黒酢バーてふ屋台かな
   面白い一句です。健康志向の屋台でしょうか。
 数え日のステンドグラスに日の斑かな

寒風に曝されてゐる心かな             だりあ
兄弟の欲し銀杏落葉を転べば
   〈銀杏落葉に又も転(まろ)びて兄弟欲し〉

寒風や朝の化粧の眉をひく                       意久子
サヨナラの背に「かぜなどひかぬよう」と
    最後の「と」は削りましょう。
孫ピンクわたし紫揃いのガウン
    幸せ!の一句ですね。

冬薔薇術後七年祝す赤                        さかもとひろし
 木枯らしに鴎外読んでる石見人
 枯れ菊や薩摩に多き無縁仏
   「薩摩」が納得させる固有名詞かどうか…。

 寒風に逆らいて行く恵方道                    みどり
   この場合は〈恵方道風に逆らい逆らいて〉で、「寒風」の感は伝わるでしょう。
日向ぽこ呼べば返事の声高く
 あるがまま花散りしまま年暮るる

木枯や攫はれ逝きし従妹どち                    弘子
落葉して天支えをり老銀杏

心まで寒し国会前の風             有楽
   寒々と感じさせる「国家」ですねー。
外堀の松柏毅然クリスマス
    日本の「クリスマス」!
 どの国も暗雲往き来年暮れる

 北風や病棟窓の影走る             萬坊
    〈北風や病窓に翳走りたる〉
身の幅の距離を保ちて寒の鯉


寒風の尻出して飲む屋台かな       明法
泣きしあとてれて隠して年忘れ
    二句ともに楽しい句です。情が伝わります。

 幼児( おさなご)の手を赤くして霜淡し

寒風や胸から覗くぬいぐるみ          満子
    頬を赤くしながらも、寒風から守るように、胸元にぬいぐるみを入れた幼子。愛らしいですね。
乳母車木の実を拾う母子かな
    多分、乳母車の中には嬰児が眠っているでしょう。お姉ちゃんかお兄ちゃんか、上の子との静かな大事な一刻。
 枯れ枝にふくら雀の集ひけり


昼の月ただ寒風の蒼い空         二穂
 金色の水面に鴨はシルエット
   〈群鴨の影や水面の金色に〉
 山茶花や日差し豊かに降りそそぐ

 龍の玉ひょいと跳び越ゆ華甲年          よしこ
   〈華甲なりひょいと飛び越す龍の玉〉と。
 顔キッと上げ北風の中歩む
   「キッと」が些か問題。〈頤を強く掲げて北風(きた)の中〉

 寒風の町宅配のせわしかり           のぼる
 北風に喪服姿の遺族佇ち
   〈北風や喪服姿の遺族達〉「北風」で、外の景と解りますので、「佇ち」は削りましょう。
 列なして来る波頭北風の浜
   〈北風(きた)の浜列なして来る波頭〉の方が、語調が強くなります。

寒風や約束の地は橋むかう                   章司
寒風やくわつと剥きたる仁王の眼

 有馬記念その勝ち歌やどよめけり                悠々

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