道場主今月の一言

君が考えること、語ること、すること、
その3つが調和しているとき、そのときこそ幸福はきみのものだ。」
マハトマ・ガンジー

銀座俳句道場 道場試合第68回決着!!  

11月の兼題は 「冬の日」、あと2題は自由でした

 めでたくご迎春のこととお喜び申し上げます。
 他はめでたくても、「俳句道場」選句遅延は…というお声が聞こえそうで、身を縮めております。
 12月10日、今年の1月で九十二歳を迎える母が、自宅玄関で転倒。去年は初夏にも三回程の転倒がありましたが、幸いに顔反面青痣で済んだのですが、今回は尾蹄骨をはじめ全身打撲。幸いに骨折はありませんでしたが、入院という仕儀。以後、自身の時間が持てず、お許し願います。ようやく車椅子へ移る訓練にこぎつけました。
以上の次第、伏してお許しの程。     (谷子)

 面白い書き方です。電車そのものが、車両をひと揺すりしたようで、まるで外国アニメの感あり。
 
  こういう発見は、俳句ならでは…。
  閑散とした売家。庭先を出入りし日向ぼっこをする猫。「枇杷の花」が、静けさを増します。
 

【入 選】

煮こごりや姪の面影母に似て       薫子

 今は亡きその母なる姉妹の俤、そして自身の母、姪には祖母なる人の俤。

冬の日やブイに記して役所印       水の部屋

 寒々とした冬日差。大きく明快な役所印がありありと。

文化の日液晶テレビ選びをり      のぼる

 「文化」とは…の思いが過ったことでしょう。

水仙の芽がぽこぽこと出で来たり     山野いぶき

 「ぽこぽこ」が驚きと喜びを伝えます。

冬の日の時計正しゅう掛け直す        意久子

 結構です。「正しゅう」が誠に上手く働きました。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

冬の日やあの若き日は戻らない          竹雄  
 産土の迎えてうれし七・五・三
   「産土の」でしょうか、「産土や」でしょうか。ここらを考えてみて下さい。
リストラとなりて息子の神無月
   辛いなー。「神無月」が哀切です。よき次のお仕事がありますよう。

 病窓を斜めに入りて冬日かな           正巳
   〈病窓や冬日斜めに入りきたる〉
山茶花や小雨に白き薄明かり
踏みかねて暫し佇む柿落ち葉
  
聖堂の静寂に祈る冬日かな               瞳夢
 晩秋の機体を染める夕日かな
虫の声草に埋もれし流人塚(八丈島にて)

薪を割る 老いの背中に 冬日差す        花子
 自販機の ホット目立ちて 冬に入る
   私は、夏こそ(冷房の中で)ホットを自販機に、と願っています。
冬耕や 隅に鍬打つ 父の影
   悪くありませんが、「冬耕」「鍬打つ」の重なりが少々気になります。
   〈冬耕や隅打ちつづく父の影〉


 授業中うつらうつらの冬日かな          山野いぶき
 冬の日の雑巾掛けはキュキュキュッキュ

冬日燃ゆ五彩の羽の木彫り鳥           薫子
おでん屋の皿にはみ出す結び昆布

身に入むや敦盛の鎧いと小さし              龍子
小春日や母の残せし裁ち鋏
 冬の日や眼力正しき仁王像
   「正しき」が最も適切かどうか。

昇降機に点字をさぐる日の短          水の部屋
朝刊の残りはわづか駅小春

押入れのあけば折れ射る冬日かな          萬坊
   こういう日常の中の発見は大切にしてください。
 枯菊の枝で枯菊寄せにけり

 冬の日や母の抽斗開けてみる             だりあ          
   〈霧の夜の父の抽斗開けてみる  谷子〉の先行句あり。
   「父」と「母」では異なりますが、やはり、類想感あり。

水底の口の四角や冬の鯉
   結構です。
包装紙きちんと畳み枇杷の花

雨雲を透きくる冬日一葉忌                  章司
冬の日のモスコーに聴く喪のラジオ
 霜の寺金平糖のやうな花
   なかなか面白いのですが、「金平糖」が花八手のことか、それとも…といささか不明確。

冬の日や花束届く楽屋裏                      天花
採りたての冬菜の甘しちぎれ雲
   「ちぎれ雲」を持ってきたところ、結構です。
 教会の赤き煉瓦や冬帽子

 (東京・神楽坂)
冬の日や大名墓地の荒れしまま                   のぼる
 竜巻の走り抜けたる神の留守

デッサンの影深まりぬ冬ひと日                    方江
 冬日差し背にうけ友と句作かな
冬紅葉貼りつく舗道楽しめり

寝そべって冬日に当てる足の裏                   洋光
   何だか健康になりそうです。
 色形まこと外連のなき零余子?

有磯海しぐれて能登を隠しけり

くしゃみして 目覚めて一人 旅の宿                河彦
 花筐(はながたみ) 紅葉の気配 小面に
   美しいものを並べ過ぎました。?
八海山を 正面に見て 蕎麦を食う 

ひらじろ
平城に隠し矢間や冬日射              あゆ
迷ひ入りどこか懐かし柞径    
 「ははそ」の音の懐かしさ。 
 
小春日を背中に負うて母が来る             よし子
 冬日さす障子に音の生まれけり
   「音の生まれけり」がどういう状況を指すのかがいささか不明。
投句終へ大根干す手のよく伸びる
   〈選句終え大根干す手のよく伸びる〉が今の私の思い。

冬日うけストリートミュージシャンふたり        二穂
   結構です。
山茶花や庇を直す老大工
三の酉駅前小路の混み合いて

冬の日や安心しきって猫眠る              満子
ふる里に向かふ飛行機天高し
   幸せな高揚感がよく伝わります。
秋深む反り美しき阿弥陀堂

武蔵野の一ト本ごとの冬日かな             紫微
黄葉散る大学都市の日照雨かな
水脈分けて続く艦船秋高し
   何だかマーチが聞こえそうです。

冬陽差す車の下にあの子猫               有楽
冬日和工事クレーンの威張る空
   「威張る」はもう一歩。
陽の恵み売っております吊し柿

 
 巖頭に花一輪の冬日かな                 あきのり
 青空へ絵の具散らして銀杏黄葉
 

戦中は甘藷主食の日もありて                意久子

 明眸の紺のマフラー過去の人                さかもとひろし
黄ショールに気分をのせて外出す
桟橋に赤きマフラー神戸港
  
 冬の日の雲は動かず友狂う                  みどり
頼るもの何ひとつなし冬日向
裸木の瘤があなたの顔に似て
  抉るような哀しみが伝わります。

ガラス拭く冬日に顔を晒しつつ                 弘子
 久闊を叙すをみなたち冬薔薇
理由もなくこみあげる怒り胡桃割る
   「理由もなく」が少し弱いです。

「電撃」発見冬日暖かし                      悠々

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