道場主今月の一言

太陽が輝くかぎり、希望もまた輝く」
シラー

銀座俳句道場 道場試合第67回決着!!  

10月の兼題は 「秋の川」、あと2題は自由でした

 先回は、余りに遅れて申し訳ないことでした。
 十一月は、山口での国民文化祭、文学の森の
 授賞式出席・会議・句会での上京、熊本での
 「草枕」俳句大会と、土曜日曜はほとんど旅
 先なので、今の内に、と急ぎ選句しました。
 「秋の川」は難しかったのではとは、出題の
 道場主の言葉でしたが、瞳夢さんの句など、
 出色の一句でした。
 北九州もさすがに朝夕はぐんと冷え始めました。
 ご自愛下さい。     (谷子)

 面白い一句でした。悠久の流れと一羽の鳥の営為。
 何か、この景の奥を感じさせるものがあります。
 こちらの方が」輝きがありますが、「枯れ枝に」の芭蕉の一句をふいに思いました。
 
  ぶどうを搾った後の滓に差す薄日には、山国の秋冷が感じられます。
  美しい一句でした
  「豊の秋」というと、つい目出度く豊かなものを書きたくなるものですが、
   鋏をもたげたざりがにを取り合わせたことで、生き生きとした一句になりました。
 
 

【入 選】

ギター弾くために来ている秋の川      方江

 明るい一句。水の部屋氏=しっかりとした一句です。

信州の山の重なり掛大根      水の部屋

鯖雲やピカソの絵皿骨一尾       薫子

 鯖雲を取り合わせたところが妙でしょうか

秋の川遥かに汽車の渡りゆく    山野いぶき

 秋川の彼方を走る汽車。素材の異なる平行線で書かれているので、拡がりのある句となりました。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

秋の川水切りの石弾ませて          のぼる
 小屋掛けの準備に忙し菊花展

秋の川 岸辺の色を 欲しがりぬ       花子
   がんばった表現でした。
今年米 大事な赤子 抱くように
 病状を 幼子洩らし そぞろ寒
   自身の病状でしょうか、切ない一句ですが、「洩らし」が、大人び過ぎています。

ふるさとや居場所もなくて草の墓        瞳夢
 千万の流れて紅葉堰となる

  スパイクの跡にこぼれし草の花                 方江
遠眺めして秋風を送りけり

  迷求の姿うつして秋の川           竹雄
碑の中に見つけし秋の声
    故人の声を聞く思い
  降るごとに気温を下げて初冬くる

母許の指の長き子庭花火                   龍子
   「母許」こういう遣い方はどうでしょうか。
     〈母に似て指の長き子庭花火〉ですっきりとなりましょう。

 原発の事故隠蔽し秋の川
 矍鑠と梯子の天辺松手入れ

きのう舟競ひし島や秋の川    あゆ
名月を荒波に上げ熊野灘    
からたちにまだ生々し鵙の贄 
   三句共、しっかり書けています。

秋の川二筋光る北の古都            洋光
 ゆく秋や弊衣破帽の町なりし
秋うらら卒寿米寿の父と母

蔦紅葉デッサン館のハーブテイ        水の部屋
 裸婦像の遠きまなざし秋の川

 秋の川ファックスはき出す訃報かな        萬坊
   いささか上五と中七以降がずれています。
 横長の封筒甘し夜長かな
   「横長の封筒」は面白い発見、「夜長」も結構。ただ「甘し」が…。
   舐めた?みたいな感じになります。舐めたのかもしれませんが、
   それならそれで、もう少し美しく。

毬栗を蹴るふるさとの様変り

 秋川や雑穀米てふ握り飯             天花
文化の日箱階段の黒光り
   これはこれで結構ですが、「箱階段の黒光り」はしばしば使われます。
   箱階段は皆黒光り…のようで。

秋の炉や木偶のピエロの薄埃
   結構です

秋江に帰船の明かりやや揺れて          薫子 
影引きて猫の歩みし路地の秋

奥志賀や霧の底には秋の川         二穂
  カラ松の黄金の中に消える道
暖炉燃え合評会のつづきおり

秋の川木の葉の影を底に曳き                   章司
投網打つひかり微塵や秋の川
 魚跳ねて魚の数増ゆ秋の川

頂戴の小菊 佛間に 二週間           意久子
 母の留守 子等と夕食 なべ囲み

 思ひ出を手繰りて渡る秋の川           満子
葡萄紅葉再会期して別れけり            
ハロウィンの南瓜に童話めくホテル
   結構です。

秋の川山賑わひの只中を           紫微
照紅葉活け篝火と名づけたり
秋の夜の常より長き湯浴みかな

 秋の雨心和らぐ絵画展             山野いぶき
駅前の柿の木ふるさとはいかに
   素直な心が捉えた一句です。

雲浮かべ日を光らして秋の川        あきのり
   「日を光らして」をもう一工夫。「光ちりばめ」とかに。
 いわし雲大地うねるがごとくなり

日のしぶきあげて水鳥着水す

老犬に添寝して見る夜半の月           よし子
自分史を語る老女や赤のまま
   赤のまま、ぴったりと落ち着きました。
秋の川雲もいっしょに流れ行く

 層雲に見え隠れする秋の川            美原子
 バス停で人を待ちつつ日向ぼこ

石投げの子の瞳澄秋の川             有楽
   「澄む」でしょうか。
 渡舟ゆく雲のせて川の秋
   〈渡舟ゆく雲をのせたる川の秋〉
 落つる日の早さに消えり秋の川

 決断はすばやく秋の川白し            だりあ
   頑張った一句ですが、「決断はすばやく」に対して、以下がその強さを支えきれていません。
そつけなくまわり苅田となつてをり
青かりん燃やしたきもの多かりき
   「燃やしたきもの」に対して、赤を持ってこなかったことは、
    お手柄でした。


 闘蟋の籠吹き抜ける秋の風            さかもとひろし
   多分「蟋蟀」?
天高し遥かに想うパルテノン
震災癒えし神戸の海に秋の色

 鯉ひかるゆずれぬ想い秋の川            みどり
   三つの要素が、繋がらずにバラバラに書かれています。
   〈ゆずれぬ想い鯉の跳ねたる秋の川〉だと、もう少しすっきりしましょう。

夕暮れに赤のまま摘み母恋し
 川べりの水引草やいのちもえ

 落日や嵩増しにけり秋の川             弘子
微笑みは秋思の涯か観世音
   結構です。静かな微笑が思われます。
母の忌や秋の日差しを賜りぬ

 黄金波 棄て田に怒涛 泡立草          姥懐
舌の荒れ 隣家の無花果 喰いし頃
   少しリズムがごつごつしていますが。 
 生命継ぐ 遡る鰭あり 秋の川

 秋深くいじめ深刻右左               悠々 

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