道場主今月の一言

道の道とすべきは常の道にあらず。名の名とすべきは常の名にあらず。」
老子(『老子道徳教』)

銀座俳句道場 道場試合第62回決着!!  

5月の兼題は 「青田」、あと2題は自由でした

   梅雨入り前から、関東地方は大雨が続きました。
   北九州は梅雨入りした翌日から「梅雨晴れ間」でしたが、
   そろそろ本格化しそうです。
   明日より、又会議などで上京、大阪を回って、四日程
   留守にしますが、梅雨晴れ間を縫って動けるかどうか、
   6月の旅は景色が美しいのですが、荷が増えます。
   各地、ご自愛ください。        (谷子)

  オノマトペが上手く働いて、燕来る頃の空気感が元気に伝わります。
 
  「火星」に水があるらしい、ということによる楽しさ。
  「金魚玉」がその火星のイメージにやわらかく重なっている。
  中野重治という思想堅固且つ柔らかな感性の詩人の生家は
 

【入 選】

 夏兆す雫のごとき耳飾         薫子

「雫のごとき耳飾」というフレーズはよくありますが、
「夏兆す」と相俟って、涼やかに揺れる感触を伝えます。

傘と傘 行き交う橋や 菖蒲園     花子

 雨の菖蒲園の風情がゆったりと書き留められています。

椎の花 里にもうなき 坊主山     あゆ

「坊主山」と親しまれていた山の姿、その頃の幸せな時間が、
「ない」と書いているのに読者に想像させてくれます。

風渡る八丈島の青田かな        竹雄

 悲哀の歴史を負う八丈島の眼前の豊かな青田の景色。
 八丈島のきらきらした初夏の明るさ。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

越後路や山もやさしき青田風         薫子     
灯台につづく坂道黒日傘

青田風 農に生きたる 父想う        花子
母の日や 納屋に眠りし 背負い籠
   俳句をやり始めると、このように、胸中をかすめたり、胸にしまったままにしてしまうことも、残しておくことが出来ます。ご両親へのよき供花かと。

見晴かす ひとめぼれてふ 青田かな       あゆ
    
         ニンフ め 
母の日や「妖精の瞳」てふ 花が来し  
   「妖精の瞳」 は紫陽花の鉢植ですが、変った花弁で、秋まで咲き、最後はグリーンボールに変化とのことですが---さて?
   贈ってくださったお子様に、この一句をお届けください。その時のお母様の笑顔を感じてくださるでしょう。                    
  
電柱のカラス見ている袋掛け        竹雄
歩を合わせ呉れし友逝く走り梅雨
   三句とも結構でした。

神の座を連ねて越の青田かな          洋光
   「神の座」がもう少し伝達性を持てば…。
初夏のワイシャツ糊をよく利かせ
師の句会果てて帰るさ虹二重

葉の裏を返して寄せる青田風           正己
   〈葉の裏を返しては寄せ青田風〉とすると、動きが生まれましょう。
 ベランダに三つ並べて茄子の苗
    茄子の花は千に一つの無駄もない、という言葉を信じて、ベランダで作ったことが
    ありますが、見事失敗。有角家の茄子が見事に実を結びますように!

 老木に重たき程の棕櫚の花

 驀進の青田振り分くバイク音     瞳夢
   〈青田振り分く驀進のバイク音〉と
 彳亍の曾孫の揺れる庭若葉
   「揺れる」がもうひとつ…。 曾孫ちゃんの句を沢山作ってあげてください。
少年の草笛高し久留里城

青田風一両電車山に入る             方江
頂に雪遊ばせて山笑う
 夏柑 の明るさだけの空家かな
   〈夏柑のただに明るき空家かな〉

コーラスの声運び来る青田風           のぼる
ぼうたんに寄りて離れず車椅子
 白牡丹うなだれて咲く昨夜の雨
   昨夜の雨の重みが想像されればよいので、
   〈白牡丹にまだ残りたる昨夜の雨〉

明日香路の石積みあげし青田かな         二穂
かきつばた保育園児の散歩みち
 つる薔薇の咲き乱れたる古き家

青田風巻機山の肩に雲              水の部屋
薫風や毘沙門天の落語会
梅青しポルシェの見ゆる長屋門
    
万屋の前にバス停青田風             天花
夏来たる袋小路に子らの声
 幼子と指きりげんまん夏は来ぬ

麦秋や家蔵残る須磨古道                      龍子
ビルとビル繋ぐ青田でありにけり
枇杷熟るる漸く取れし手のギブス     
   なによりでした。

 いい事の無き日の続く青田かな        門次郎
   〈よきことのなき日続きぬ青田風〉
 泣止まぬ子に驚きの祭りなる
 あれやこれ母や牡丹に疲れけり
   〈あれこれの牡丹に母の疲れけり〉

 青い田が都市計画のように見え             有楽
   面白い発想です。
   〈都市計画の如並びたる青田かな〉

 シャネルビル マロニエの花咲き初めり
リンデンの並木通りの薄暑かな

 母の日に伏してなを母に世話やかせ           美原子
   〈母の日の母に看取られいたるかな〉
人の居ぬ洗い張り屋の藤の棚
   〈藤の花(もしくは藤の雨)洗張屋に人気なく〉
   〈人気なき洗張屋や藤の雨〉などと。

 風薫る母にもらいし着物とく
   〈若葉風母にもらいし着物解く〉

緑陰のバス停にただ老女居り              霞倭文
メトロから常磐線へ青田見ゆ
    〈メトロから常磐線へ青田風〉の方が、原句よりも「へ」のところで「切れ」がつよくなるかと。
 孫会いに産院急ぐ緑雨なか 
    〈孫に会いに産院へ急く緑雨中〉

小学校うらの青田の稲荷さま             意久子
青田風おかっぱあたまの疎開の子

 師の色紙「青田のごしく」眺めおり           みどり
             
一輪の昼顔ゆれる事故現場
天仰ぐ雄しべ一本つつじ散る

縁側の茶請けはこうこ青田風              弘子
牡丹剪るその一瞬や息を止め
 走り梅雨返事を出せぬ青ポスト

 青田の中青春鮮やか記憶箱              坂元宏志
枝に朽ちて尚薔薇の形雲疾し
   「雲疾し」が少し強すぎて、朽ちながらまだ形を保つ薔薇の印象が薄くなります。
 梅の実の青さも青し虹の空
   「青梅」「虹」季語です。
   〈梅の実の青さも青し雨後の空〉

 菖蒲野や山姥駆ける気配あり              よしこ
 少年のまなこ澄みたる青田風

 俎板をきらうや鰹 佳き御沙汰             老松
 青空を青年遍路 青田波
    「青」がいささか重なり過ぎます。
 四匹め 猫の引越し 藤寝椅子
    何処から何処へ?籐寝椅子へ、でしょうか?

 満々と水張る青田鷺三羽                           紫微
    「青田」では水が主役ではありません。「水田」「植田」なら水が満々とみえますが。
短夜や六十年の裏話
籠枕古武士の如き祖父なりき

歓声の 匂ふ球場 青田風                        姥 懐
 峡四五戸 憲法記念日 反旗めく
    何が「反旗めく」のかを。峡の四五戸が…でしょうか?
錆深き 老舗のシャッター 春の雨

小海線の 車窓に青田 連なりて            河彦
  みどり風 二人の部屋で 受け止めて
郷愁を 食べるルビーの ゆすら梅

 青田あり猪苗代湖の茫洋と               萬坊
駅長の小さな畑豆の花
   懐かしさの篭った一句です。

青田には青田の匂ひ母もどる              章司
なつかしきこの青田風父の家

 ふんはりと朝の気のせて青田かな           あきのり
   頬赤く歩める吾子に青田風あい
ひと雨の間を入れての日永かな

車窓には青田車内ではケータイ          山野いぶき
荷を解くおかえりなさいと春の月
ぶらんこのいまだかすかに揺れており                          

青田すぐそこに広がる館かな           満子
 薫風や白詰草の首飾り
  「薫風」「白詰草」ともに季語です。
    〈そよ風や白詰草の首飾り〉

余花に会ふ信濃の奥の山の道

反戦の並べしブーツ緑濃し            悠々
   戦死した兵士のブーツを並べた景は、強いメッセージを発しました。
                            

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