道場主今月の一言

見るためだけの目は、世界にたいして盲目となる。」
ガンジー(インド独立指導者)

銀座俳句道場 道場試合第61回決着!!  

4月の兼題は 「春の夢」、あと2題は自由でした

 またもやの遅延お許しを。
 いささか息切れしつつ、このような時の何よりの栄養剤は、よき句との出会いです。
 皆様の元気な句に力を戴きながら、頑張りましょう。         (谷子)

    伸びやかで結構です。
    「旅人の木」という不思議な木。その花。「春の夢」という
   難しい兼題を上手にクリア。
   耕運機は普通は一人乗りであろうが、この耕運機は大型のものか。
  それとも媼というべき小柄な婦人が一人で運転をしている様か。
  いずれにしても、老いても矍鑠の感。「春の田へ」の「へ」が喜びを
  伝えます。
 

【入 選】

 頬杖に春の夢かな観世音      よし子 
    たおやかで、美しい一句です。

快速の窓やぼわっと夕桜           方江
一瞬にして過ぎた夕桜の色。「ぼわっ」が、
快速の速さを伝える。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

今月の作品
春の夢また新しき力湧く            方江
 遊歩道いのち愉しく芽吹く音

 春の夢 ここで栞を はさみたし        花子
 燕飛ぶ 急ぎ軒下 片づけし
つばくらめ 表札いまだ 父が主
   〈つばくらめ表札いまだ父の名で〉 

  こだまして谷川岳の春の夢                   瞳夢
公園の木馬濡らしぬ花の雨

 ナス台地ピカソ描けり春の夢          薫子
花に酔ひ人に酔ひたるカフェテラス
春北斗幾何模様なる石畳
    美しい一句。

 赤子抱く 腕より覚め 春の夢          あゆ
黄砂降る日よ彼の大地 旅する子 
 うっすらと 花いろ 峽の花ぐもり
     「花」が重なるのが少々きになります。

そのままにそっとしてをけ春の夢     門次郎
日本橋さくら通りのさくら餅
     この「さくら」の重ねは、意図してのもの。
 川の音花にうかれて腰痛し

 教科書の違うページや春の夢        山野いぶき
   つい、うとうとと、でしょうか
 春の朝障子に映る樹々の枝
 
  故郷で イタドリ摘むと メールの字     河彦
   〈虎杖を摘んでいますとメール来る〉
ベランダに サクランボの実 二つ三つ
 シャガ咲いて ベランダに弾む 妻の声
   三句共、よき空気が伝わります。

来年も二人で来ようよ春の夢           正己
 碑の陰に飢餓を知るや木瓜の花
   何の碑なのか、飢餓に倒れた者のか、一揆のか、戦争被害か、
   いずれにしてももう少し焦点を絞ることです。

 廃校に尚矍鑠と老柳
     「老柳」に、「尚矍鑠」は書き過ぎ。

在りし日の友に出会ひし春の夢          満子
 咲き満ちて桜吹雪となりにけり
囀りの止みし刹那の黙深し
 
 野遊びやごはんだよと呼ばれるまで            龍子
春うらら嬰の片言オノマトペ
春の夢叩いて鳴らす古ラヂヲ

こでまりや社の付属幼稚園            水の部屋
たおやかな安房の山並畦を塗る

 忘れもの取りに行きたし春の夢            あきのり
 初つばめ青き空より生るるかな
    青をバックに、初燕の飛翔。よき一句。
日に酔ひて風にゆられて八重桜

春の夢独り芝居のおかしさよ               二穂
    この「独り芝居」、自身の、と読むほうが一句の味があり。
朝五時の区民農園かきつばた
 朝まだき路地に集まる孕猫

  いや失敬おどる埴輪や春の夢           萬坊
韓からの漂へしもの春渚
    「漂へしもの」――「漂へるもの」
見送りのホームの無言朝つばめ
深吉野の庵にゐしが春の夢                         章司
われもまた空に吸はれて揚雲雀
   高く高くの感、よく伝わります。
啄木忌母を背負ふことなかりけり

 春の夢俳画の講座を申し込む              天花
    この夢は、眠ってみる夢ではなく、希望の方でしょう。
 薄氷や六十路に墨の香こそばゆし
    中七以降結構。季語を色々変えてみてください。
鯉のぼり絵筆に残す水加減

母の声たしかに聞きし春の夢              洋光
きな臭き春に生まれて七十年  
春宵の町に刻告ぐ鳩時計

俳句手帖ひらきしままの春の夢             意久子             

春の夢あしかはいつも空を見る             だりあ
 春愁や十七種類の香辛料
   「春愁や」では、十七種類もあってはネー、となります。
    例えば〈若葉風十七種類の香辛料〉とすると、もっと元気で、
    十七種類の香辛料のそれぞれの存在感を伝えてきましょう。

納税課の窓をはみだす楠若葉


 春の夢ダンス習ひし日の疎く             のぼる
    一寸面白い句ですが、「春の夢」でなくこういう場合は
   もっと現在、今を感じさせる季語の方が、中七以降の
   (「疎く」より「杳く」と)想いが際立ちましょう。

 日の丸を掲ぐホテルや五月祭
 つばくらめ苗木交換賑いて

クローバーの鉢買う街や金曜日             美沙
赤きクレーン空に残してみどりの日
   いささか「赤」「みどり」の対比が強すぎます。
 春の夢ラジオのシャンソン遠く聞き

  花人の 舞鶴公園 野宿人           さかもとひろし
花から葉へ 一大変身桜坂
   花から葉へのエネルギー感あり。
花人のモネの絵と会う美術館

花冷えや二番札所の釈迦如来           よし子
梵字塔遍路の杖の立ててあり

春の夢求め続くる八十路かな                     紫微
アラスカの勿忘草を忘れ得ず
 厳かに尉面の舞ふ涅槃西風

鶯の下手に付き合う宅配屋             霞倭文 
   楽しい一句。
 オペラ見る姉の背丸み春日傘
   「春日傘」では、外でのオペラ公演になります。
春の夢うつつ還暦過ぎは良し  
   「うつつ」の働きが、今ひとつです。
   
 恋魂のしのびきたりて春夢醒め           有楽
    どうも音感が今ひとつです。
 いづこより来し花びらや裏木戸も
    上五中七、しばしば使われるフレーズです。
 自民党本部揺れおり春嵐
    いささか川柳の領域ですが。

 和服着てスニーカーはいてる春の夢         美原子
     どうしてこんな夢を?何となく解るようではありますが…。
 絶縁の友と再会春の雷
鋳鉄の彫刻に点す春光
     〈春光のあまねし鋳鉄の○○像〉の様に。

 芭蕉布に紗つづれとす春の夢            老松
    「芭蕉布に」の「に」を再考。
 春の朝 耕人の鍬 たかだかと
    「耕人」も「耕し」も春の季語です。
    〈高々と高々と鍬春の朝〉でよろしいかと。

姪来ると 朗報らしき 春の風

 盗人を追うは吉との春の夢             みどり
     ホー、そうなんだ、そんな夢みてみよう、などと思いました。
靴ひもを結ぶ手の先母子草
くらがりの公園に濃くリラにほふ

観音の腰豊かなり春の夢               弘子
 春冷えやブルカの眼たぢろがず
    「春冷えや」――「春の冷え」
春愁や黙して渋谷交差点

眼前の人追い越せぬ春の夢              竹雄
 吉野山一目千本花の雨
    いささか吉野山の宣伝のようで…。
霾やアジアは一つ吾が家にも

 春の夢伯夷叔斉いまいずこ              悠々
 「伯夷」は兄、「叔斉」は弟。殷の処士。周の武王に諫言。
   周の天下統一後は、その粟を食らうことを恥じて餓死の道を
   選んだという。政界も経済界も…、伯夷叔斉今は夢の又夢。


 風光る利根の河口の滔滔と            のぼる
花菜畑尺八を吹く男ゐて
    明るくて味わいのある句です。
 山霧の駆け下りてくる春の湖
    (3月の兼題です。私のミスでおくれませんでした) 

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