道場主今月の一言

凡人は小欲なり、聖人は大欲なり。」
二宮尊徳

銀座俳句道場 道場試合第57回決着!!  

12月の兼題は 「年惜しむ」、「鰤(ぶり)」、「ストーブ」 で した。

 寒中お見舞い
十二月からの北国の凄まじい雪と寒さ、案じております。
北九州も雪が横殴りに降ったり、久々に身に応える寒さが続きました。
「日本が崩れる」という声が大きくなっていく中、少しでもよきこと多いいちねんであるように祈っております。
皆様のご多祥とご清吟を。         (谷子)

  無念の思いのように暖炉は赤く燃えています。
 
  先生と考えると、一句がしっかりと景を伝えてきます。
  鰤」で「鰤起し」というのは少し外れる感じはしますが、一句の力は確かです。
 

【入 選】

 玄海の鰤にみなぎる威勢かな      京羅坊

不漁つづく鰤の沖見る漢かな      あゆ
ゴム長の男の提げ来寒の鰤       龍子
週果てぬことことと煮る鰤大根     美沙
大鰤や競り声高き牟婁の市       正己

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

椎茸の煮つまり工合年惜しむ           景子
 嵐音ストーブもゴウゴウと
 空暗く泡立つ潮よぶりおこし
    「鰤起し」は漢字で。「空暗く」は「闇深く」というように、「空」「潮」を避けましょう。

 叶ひしも叶はざりしも年惜しむ          洋光
鰤贈る慣ひや娘嫁がせて
弁当箱薪ストーブに温めし日

 見つけたり鰤のかんづめ清水港          竹雄
若き日の矢のごとく去り年惜しむ
 ストーブの灯油値上がり薪となる

 寒鰤や釣りそこねたるわかしかも          傘汀
    下五
ふぶきても晴れても? ストーブ列車かな
 替え上着仕立ておろして年惜しむ

海鳴りの 音まぼろしか 鰤の膳           花子
 鰤煮付け 箸ためらいし 老漁師
ストーブに 繰り言語る 独りの夜

 ぶり大根骨まで喰べてとママが置き          有楽
唄いたき歌一つあり年惜しむ
    何の歌でしょう。
暖爐消し消燈ラッパ聴くしじま

句碑の文字大方読めず年惜しむ                     龍子
    出来れば下五の季語は再考を。   
 行商婦荷物を下ろし駅舎の炉
    〈駅舎の炉荷を下ろしたる行商婦〉

 年惜しむ北西風の吹き荒れる         山野いぶき
仲直りしたくて鰤大根を煮る
 ストーブの前で鼾をかいている
 
 小春日やこの悲しみをいかにせむ     ?
赤と黄の木の葉拾って帰りたり
 制服の下にセーター着てゆけり

 僧の背と愛の一文字年惜しむ         門次郎   
 「僧の背」は「愛」と書いている僧の背中
ストーブの村より届く便りかな
地下鉄や仕入れの籠に寒の鰤

耕さる土塊の湯気年惜しむ            吐詩朗
蕎麦椀の大き鰤の身妻の味
 眉張って民話を語り暖炉燃ゆ
    「語り」「燃ゆ」と動詞を繰り返さず、〈眉張って民話を語る暖炉かな〉と。

護摩の火のいよよ盛りて年惜しむ        水の部屋
暖炉燃ゆほろほろ溶けて角砂糖

 長生きを請け負はれても年惜む             とみゐ
    「ても」は「困る」などに続きます。どうも落ち着かない「ても」ですね。
 鰤食ひつ雑魚の人生回想す
燃え盛る隣の組のストーブや

 採血の針刺す痛み年惜しむ                         章司
    中七までと「年惜しむ」はどうもぴったりしません。
 おつもりの徳利ふせたり鰤起し
     〈おつもりの盃をふせたり鰤起し〉

 それぞれの 想いを秘めて 年惜しむ           河彦
還暦に 想いあれこれ 年惜しむ
    おめでとうございます。よき六十代を。
年惜しむ よきことありし 年なりと

ひとり聴くグレゴリオ聖歌年惜しむ            美沙
 樹の匂い立ててふるさとのストーブ
    〈樹の匂い立てふるさとのストーブは〉

鰤大根自作の陶の藍深む          薫子 
ひとり夜のストーブ赤し第九聞く
    「ひとり夜」というのはどうも馴染みません。
    〈第九聞くストーブ赤きひとりの夜〉

臥せし身に受けし情けや年惜しむ

 年惜しむ家の電飾時刻み                 あゆ
   電飾が時を刻む?
   〈時刻むデジタル時計年惜しむ〉でしょうか。
古ストーブ青き火の褪せぬ思い出 
   〈青き火の思い出褪せず古ストーブ〉

思い出のセーターを着て岬まで              京羅坊
  風雪の三日月に年惜しみけり

秒針のキラリと光り年惜しむ                             瞳夢 
鰤雑煮 備前の母をしのびけり
 分校のストーブ囲む笑い声

故郷の兄を見舞いて年惜しむ                            正己
 ストーブの薬缶の蓋やリズミカル

行年や独り酌む茶の朝の卓                             意久子
五代目の孫の誕生ぶりの鍋
昼の鐘アルミ弁当ストーブに
    三句共に、よく揃っています。

息子より帰省のしらせ鰤さばく                 よしこ
    母心が伝わります。
メサイアに涙わきたり年惜しむ
教会に達磨ストーブ六十年

好きな道好きに歩いて年惜しむ                方江
鰤を焼く片側はまだ海の色
    結構です。ただ龍之介の「目刺に残る海の色」がありますが。
 ストーブやお粥ふっくら炊きあがり 

年惜しむ厨の椅子に文庫本                  天花
 ポケットの大き前掛け鰤を焼く
ストーブ赤し嫁ぎし子とのメールかな  

 今幾度この日迎ふや年惜しむ                 紫微
寒鰤や凡々として傘寿なり
     結構です。「凡々」と言いつつ、「寒鰤」がなかなかの人生を伝えます。
ストーブにアルミ弁当母の味

  ともかくも ガラス拭き終え 鰤大根           霞倭文
  孫かもと 外地の子より 年惜しむ
    重たいないようなのかと推察されます。「年惜しむ」がいささか支えきれません。
  ストーブとカフェに包まれ 六本木

能登路来て旅半ばなる鰤起し                のぼる
地酒一升下げて友来る暖炉の火
    よき夜の始まり。
 黒豆のふっくらと炊け年惜しむ 

さてさてと昔話やストーブ燃ゆ              あきのり
何もかも白に閉じ込め鰤起こし
  物売りの声の途切れて年惜しむ

年惜しむ大売り出しの旗に風                萬坊
 目は憂へ砲弾一列鰤の糶(せり)
子離れの事などしばしストーブ燃ゆ

 長老の忌明けも済みて年惜しむ               姥懐
寒鰤の 二人分だけ 厚く買う
  ストーブの 火痩せさせて ウォームビズ

 ストーブや星の数ほどの愛を                だりあ
ストーブやムーミン柄の弁当箱
    可愛い一句です。

星空や下界も輝りて年惜しむ                老松
  鰤とどく砥石に水をふくませり
  寄り合ひのストーブ囲む瀬戸茶碗

連なりて銀座を歩き年惜しむ                みどり
  築地市寒鰤跳ねて憂さ払い

 ストーブに癖字の便りおどりける              弘子
鰤旨し泣きごと聞くも上の空
    凄く美味なる鰤なのですね。
笠地蔵聴きし杏よ年惜しむ
    「杏」は固有名詞でしょう。
    〈笠地蔵聴きいて寝落つ雪催〉などと。季語がぴったりしません。


 暖炉燃す薪の暖好し時思う               さかもとひろし
 壁暖炉鮮か書屋へ向かう君
    面白い句材なのですが、「書屋へ向かう」と書くと、「壁暖炉」から視点が外れてしまいます。 
 二人称小説読みつ年惜しむ
    「二人称の小説」より「一人称の小説」の方が面白いのですが。

駆け足で去り行く年を惜しみけり              満子
  手掴みでぶりの照り焼き食みし子よ
  木造の校舎にストーブ遥かなり
    「に」再考

  国家の罠など書読みし年惜しむ               悠々                             

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