道場主今月の一言

とにかく具体的に動いてごらん
具体的に動けば 具体的な答が出るから」
相田みつを(詩人・書家)

銀座俳句道場 道場試合第55回決着!!  

10月の兼題は 「秋高し」、「コスモス」、「ぶどう」 で した。

 ずいぶんと遅れてひたすら平伏!
十、十一月は全ての土曜日曜が俳句関係の出事でふさがっています。
福岡県は昨年の国民文化祭、続いてねんりんピックを今年開催。
これもなかなかタイヘンな行事でした。
今月初めから、パソコンに向かっては中断…が続き、申し訳ないことでした。
急に冷え込んでいます。お大切に。          (谷子)

  一見楽しそうに見え、でもコワイ一句です。
 
  ビル屋上からの秋の景の伸びやかさ。
  葡萄の原産はペルシャ・コーカサス地方と言われる。その思いがペルシャの壷を引き寄せる。
 

【入 選】

 爽ビー靴ま白き一歩天高し   あゆ

歩き始めた幼子。「ま白き一歩」の措辞が、一句を命となっている。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

秋高し市町村合併初選挙                 京羅坊
 コスモスや黒姫山のこころざし
 ロザリオのずしりと重しぶどうかな

 天高し 馬肥えていく 牧の日々             花子
秋高し 地下通路より 出てみれば
 Uターン 「葡萄の里」は 大繁盛
    花子さんの作は、何かしら「おかしみ」があっていいですね。
    作り出したのではなく、無添加のおかしみ、だからでしょう。

戞戞と岬の野馬秋高し?                  傘汀
コスモスや亡き人ばかり思ひめる
   「思ひめる」思っているようだ、の意でしょうか。
一つづつ皮むいてみる黒葡萄??

秋高し飛行機雲のはるか先                方江
 コスモスにひとふれもして夕散歩
 ぶどう棚宝石よりも輝けリ??

競ひ立つ剣岳(つるぎ)立山秋高し            洋光
    元気!な一句。
コスモスに囲まれてゐる幼稚園
 幸せはぶどうの国に生れしこと

 コスモスは薄紅が好き揺るるもよし            景子
 野ぶどうは密に熟す道の辺に
    〈野ぶどうの密かに熟れて道の辺や〉とするか、「野」「道」がしつこいので、
    〈夕暮れや野葡萄ひそかに熟れている〉とされるか。

秋高し洗濯物の翩翻と

秋高し 黄昏時の銃の音                 瞳夢
コスモスの上をタンカー遅々と行く
    〈コスモスの上タンカーの遅々と航く〉でしょうか。
 野ぶどうの濃斑点見ゆ里の山

金鴟尾のかがやく烏城天高し              吐詩朗
喉すぐる種なしぶどう吉備の里
 コスモスや托鉢僧の朝の駅
    「托鉢僧の」の「の」を再考してください。

秋高しチームの士気も弥高し               とみゐ
 コスモスや白髪より数減りにけり
 食事済む骨とぶどうの皮残り

 銀皿に映えし葡萄の古代色                薫子
コスモスや古寺に猫の戯れし
    「猫の」の「の」を削りましょう。?
三山を望む故郷秋高し

 秋高し久しく聞かぬ下駄の音               門次郎
コスモスや電車混雑青梅行き
    〈青梅行き電車混雑秋さくら〉でしょうか。
 抱上げて手の触れさせし葡萄かな
    「手を」と。

コスモスの風のいろいろ少女駆く              あゆ   
 透きとほる光りくるみてマスカット

秋高し飛翔の如く三冠馬                 竹雄
    誠にスゴかったですね。
 コスモスの揺らぎ奏でる調べかな
 豊かなる乳房の如きぶどうかな

秋高し 猫の目線に 膝折りて              もとこ
 ぴぃひょろろ 筋雲巻雲 秋たかし
    秋の高い空が見えて悪くはないのですが、筋雲巻雲はどうも秋の季感が濃いですね。
揺れている心は見えず あきざくら

コスモスの野に風の声もういいかい              美沙
    〈もういいかいコスモスの野に風の声〉
実のなきことば葡萄は掌に重し

あかんぼの手にひとつぶのぶだうかな            章司
 コスモスは道の左右に下校の子
    〈下校の子道の左右の秋桜〉
秋高や湖心に白き釣りの舟

木道を一列に行く天高し                   水の部屋
張り板より銘仙剥がすあきざくら
    懐かしい景色。

学舎は兵舎そのまま秋桜                  意久子
 ぶどう狩り試飲は女房亭主ウロウロ
 天高し箸食卓にしずしずと

古伊万里に葡萄一房佳き日かな               よし子
天高し溢れて馬の水飲場
井戸ひとつ残す旧家や秋桜 

 こすもすの大地揺すりし気配あり             あきのり
隆起せし地層は海へ秋高し
 葡萄食ぶモナリザの笑み浮かべつつ

飛行士の 帰還報告 秋高し           姥懐
 カタカナ語 いわぬ外つ人 秋桜
 野ぶどうの ガードレールを 荒ぶれり
    「の」「を」「荒ぶれり」の関わりをもう少しきちんと。
  
 滝つ瀬に沿い嫋やかに秋桜                  満子
     「秋桜」は第一義的に「嫋やか」なので、読者の想像に任せても大丈夫です。
     〈滝つ瀬に沿いて靡けり秋桜〉とすれば、滝つ瀬の流れが見えてきましょう。

 仰ぎ見る棚のぶどうは如何に採る

豊作の家庭菜園空高し                    天花
 六双の屏風コスモス競うかな
絵手紙の切手逆さま黒葡萄
     小さな逆さに張られた切手が、心に引っかかっている作者の感覚が伝わります。
     「黒葡萄」で、この一句が完成かどうか、もう一押し考えましょう。


 秋高し返り櫻花の空に溶く                  さかもとひろし
    「返り花」は季語ですから、この句では「秋高し」は削った方がよろしいです。
    〈青空に溶けゆくごとし返り花〉

ぶどう狩り天狗に似し人混じりおり
 秋高し月を釣るには高すぎし

秋高やどのかて飯もうれしけり                老松
    「秋高」と言う使い方は余り眼にしません。「秋高し」でよいのではないでしょうか。
    「かて飯」は「糅飯」混ぜご飯。又、「うれしかり」です。「嬉しかりけり」の略ですから。

背信の虚しぶどうを1ツづつ
    「一つづつ」と書きましょう。
秋桜ホテルのバーの大壺に

 逆縁のかなしみ深く天高し                  みどり
コスモスよともえ五十で逝きました
    「ともえ」さんが、どのような方かは知らずとも、哀しみが測惻と伝わります。
 友の通夜葡萄かぐわしひと無言

天高し眼優しき三冠馬                     弘子
 節槫だつ手はやさしかり葡萄剥ぐ
コスモスの何祈るかに右左

子の頬のいつもつやつや葡萄食む                           龍子
地下鉄の地上に出てて秋桜
組体操すっくと立ちて天高し
    すっきりとよき句が揃っています。

コスモスや佐久に旅した母に逢う               霞倭文
    生前の母が旅した佐久。そこを訪ねた作者は咲くコスモスの花の美しさ、たおやかさに
    元気な母の笑顔を重ねたのでしょう。

 息子より合わせたい人秋高し
    息子さんから「会わせたい人が」と言われたのでしょうか。「わせたい人」とカッコがつくと
    解りやすいでしょう。

 店先の大小葡萄選びかね  

秋高し深海にビルそそり立つ                 萬坊
 コスモスの揺れしとこまで乳母車
    〈コスモスの揺れとこまで乳母車〉「とこまで」は少し口調が幼い感じがしますが。
 日は西に川悠々と葡萄棚
    〈日が落ちる方へ川ゆく葡萄棚〉

 秋高し胸のリボンの大きかる                 だりあ
葡萄食ふみんな小鳥の口のやう
コスモスの風思ひ出のつぎつぎと

 紺碧の湖(うみ)段々と秋高し                              紫微
    「段々と」が「次第に」なのでしょうが、「秋高し」に掛かると、上手く繋がり難い感じがします。
秋桜群れて盛りを過ぎにけり
 熟るるまで待ちかねぎしぶどうかな

秋高し犬はリードを引っ張れり             山野いぶき
食べかけの葡萄一房卓の上
コスモスや休学の子の戻りたり
     明るくあたたかな句が揃っています。

天高し山並凛と甲斐の国               のぼる
一叢のコスモス残す坊の庭
 葡萄盛るガラスに透けて濃紫

耕運機持てる友あり秋高し           悠々                     
    小説家の佐木隆三氏は、門司港の小山(風師山)で畑を借りて作業をされています。
    真 っ赤な可愛い耕運機は「織姫」と名付けられていました。七夕に配達された由。

                            

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