道場主今月の一言

志ある者は事ついになる」
( 「後漢書」

銀座俳句道場 道場試合第54回決着!!  

月の兼題は 「秋めく」、「秋風」、「秋の声」 で した。

 北九州は、ようやく朝夕長袖になりました。
 今年は、関東地方への台風が多いようです。
 各地、よき秋となりますように。             (谷子)

  白い護摩木に記す子の名。ひたすらに子の平安を願う無償の親心が静かに輝く。
 
  美しき足裏が秋風の中で印象的。
  「子連れ二匹の・陶の猫」への転換が妙。
  ぽつんぽつんと弾かれるビートルズの曲。
  秋の気配を更に引き寄せるようだ。
 

【入 選】

 爽籟や赤きペン買ふ競馬場     水の部屋

 秋風や弁慶堂も古びたり     洋光

秋の声遺影の君の皓歯かな     美沙
斑鳩の寺の小径や秋の声      正己 
秋風や出動と灯の消防署     あきのり

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

沈思黙考猫の眼ほそく秋めきぬ           萬坊
 真新し地蔵ののぼり秋の風
     「幟」と
 竹の実の被さむばかり秋の声   
     被さむ  ?

観光船 乗る人二人 秋の声            美原子
海岸に空(から)のクズかご秋の風

 剰へ秋めく瀬音の高さかな             傘汀
秋風や友はむかしの友ならず
   「秋風」が切ないですね。
夕さりのさざめきさへも秋の声

秋風や星上山は神の山                京羅坊
秋めくや母の補聴器調整す
    よき一句です。ここでは「秋風や」の方がよろしいかと。
オカリナを吹く少年や秋の声
    オカリナという音と声という語がいささか重複の感。

 格子戸の空すつきりと秋めきぬ           吐詩朗
白壁の街にたゆたふ秋の風
     「たゆたふ」という表現で万全かどうか。
縁側の風やはらかや秋の声

秋めく日突如時めく選挙あり            とみゐ
     面白い一句ですが、上五は「秋めくや」でしょう。「めく」の重複をもう一工夫。
○秋風や実家に揃ふ三姉妹
     なにやらドラマを感じさせます。
 ワンオンや嬉し恥かし秋の声

秋めくや抗ひがたき旅ごころ             洋光
みちのくの高舘に聞く秋の声

秋めくや 昨日と違ふ どことなく          花子
 拳より 先にノックす 秋の風
    拳というより、「我より先に」。「ノックす」はもう一工夫。
 築五十 東んつまに 秋の声
    中七は?

秋めける会話となりぬ セーヌ河岸          有楽
    なかなかお洒落な一句です。
船泊 オンフルールの秋の風
マストには ささやく秋の声がして
    海外詠、雰囲気十分です。

バス停に吹かれてひとり秋の風            瞳夢
 秋の声テニスシューズの白躍る
空港の秋めく那覇の舞いや美し          
    少しモタモタとします。「や・美し」を削ってみることもお勧めします。
    解るのですが、「那覇の舞」でよいかどうか。琉舞とは言いますが。

                   
窓の秋麻酔で眠る人思ふ              もとこ
秋風や汀の石の濡れる色
    「濡れし」でしょう。
 開け放つ窓に今宵は秋の風 

秋めくや小魚透ける水の彩              あゆ
山晴れて今朝の繰り戸の風は秋   
吊橋へ向う山より秋の声
    爽やかに揃いました。

会いにゆく髪さやさやと秋の風           美沙

病窓に見上げる空も秋めきて            正己
    くれぐれお大切に。
石地蔵草に隠れて秋の風

 語るかに奏でる自然秋めきて             竹雄
 秋風や年相応に長き袖
Eメール送る投句へ秋の声
    Eメールで送る投句や秋の風

秋めくや壁のピエロに目鼻なく            薫子
    飛機翼ひかり放てり秋の風              

秋めきて庫裡の奥より酢の匂ひ            龍子
    この一句も結構でした。
廃校の跡地そのまま秋の声

橋の灯のつぎつぎ灯る秋の声             水の部屋
 町川に小魚跳ねて秋めきぬ

観音の胴しなやかに秋の声              だりあ
いづこより理髪の匂ひ秋の風
 狛犬の口へと秋風のそろり      
    狛犬の口へと通う秋の風
    
 秋めいて 猫のぬくもり 目覚め時            河彦
 秋風を 窓より入れて 酒を酌む
坂道を 登り切ったり 秋の風

秋めく日 空も貴方も遠くなり              霞倭文 
 秋風やヒールに服は黒で決め
 還暦と秋めく庭で祝杯を

昼の灯の灯る教室秋の風                 天花
笑み給ふ白鳳仏や秋の声

 秋めくや嗤ひ合ひたり失語症               弘子
浄瑠璃の主従の定め秋の風
貧乏籤おほらかに引き秋の声

覚めやらぬ町を歩けば秋めきて             みどり
目を病みて人疎む日や秋の風
 父のごと母のごと聞こゆ秋の声
    思いはわかるのですが…
    
 養魚池の真鯉の群や秋の風              さぁもとひろし
嫁ぎゆき主なき部屋に秋の風
    嫁ぎゆき主なき部屋や秋の風
 秋風はコーヒーの香旅立ちぬ
    面白い発想ですが、「旅半ば」とした方がもっとすっきりとするでしょう。

秋風に出だしのことば探しをり              よしこ
ゑ手紙に思はぬ滲み秋のこゑ
    滲み、いいですね。

テーブルに萩ちゃわんひとつ秋めきて            意久子
    秋めくや卓に一つの萩茶碗
 秋風をのせ今年米届けらる 
    風の香をまとい届きし今年米
終戦の焼け野ヶ原や秋の声

 秋めくや会いたき人の数多し                方江
曲り家の屋根の草吹く秋の風
    結構です。
満されていつも淋しき秋の声  

秋めいてメール打つ手も軽やかに        山野いぶき  
 秋風を散歩の犬も感じ取る
エアコンは止めて聞くべし秋の声
                     
 満目の城址に秋の風立ちぬ                満子
秋めくやプールサイドの白き椅子
秋声や磔像潜む窟奥
    二句共に結構です。

秋めくや 妻の寝息に 寝(い)ねかねて           姥懐
からからと ボトルの風車 秋の風
 姉見舞ふ 長引く電話 秋の声 

秋めくやベンチは昨夜の雨に濡れ             のぼる
秋の風骨董市をはしごして
黒猫のよぎる庭先秋の声
    よき句が揃いました。

 秋めくや八十路迎ふる朝の風              紫微
長城の尖頂に聞く秋の風
烏兎怱怱老い追ふ如く秋の声
    益々のご健勝をお祈り致します。

秋声や柱時計は軋み打ち                あきのり
 水底も空色深め秋めけり
 秋めいて 先月号より 手を付けよ           老松
    先月号は、暑さの中で未読だった、ということでしょうか?
    「未読の書いささか積みて秋めくや」とでも。

 木橋に もたれて秋の声を聞く
    「木の橋に凭れておりぬ秋の声」でも。
 爽籟や 屋外場なり ロ短調

夕されば連山の翳秋の声                章司
木曾谷をたどり奥へと秋の声
 秋風やこころの重荷受けとめむ      

護憲党またも伸ばせず秋の声                悠々


 

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